日陰の小道

土地 Tap:Green を加える。

2017年夏期アニメの感想を殴り書く

もうすっかり涼しくなり、アニメシーズンも次クール放送の作品が開始して世間は秋模様と言った雰囲気。
しかし俺の夏は夏アニメを終了させるまで終われないぞ……! ということでこちらの感想を書き記す。
春期を引きずって夏期が疎かになってしまった反省も込めたりしつつ、本数は少なめ……。

仮面ライダーエグゼイド

アニメでも夏期でもない気がするが終わりがクール中だったのでこちらで。
いや、一年ものライダーは初めて見たがめちゃくちゃ面白かった。評判いいのは聞いてるけど長いしな〜とか40話ぐらいの段階で言ってたのだが4日で追いついてしまうぐらいは面白かった。
毎回強い引きで先への興味を引き出しつつ、勢いだけにならずテーマの回収や伏線もきっちりと潰してくるハイセンスさ。特に30話以降あたりからは今まで積み上げてきたいくつかの物語に決着をつける展開が多かったこともあり、「今回が今までのエグゼイドで一番面白い」「過去最高だった前話を超える出来のエピソード」「ここ40話で一番の出来栄え」と毎回ボジョレーヌーボー状態だった。ヤバい。
このライダーは、「医療」と「ゲーム」という二つのテーマが題材。話を聞いているだけでは、この一見まるで異なる素材でどう物語を作るのだろう? と疑問だったが、相反するからこそ医療の扱う「命の重さ」というメッセージがより際立っていたと思う。またその「命」の解釈について"データの存在もまた命であった"、と未来的な答えを出してきたのはゲームという題材ならではのゴールだろうという感じで面白い。作品の最終的な終わり方が「命を守る戦いはこれからも続いていく」という風だったのも、デリケートな問題を扱いながらも現実の患者やドクターを蔑ろにせずに、かつ希望を感じられるエンディングで上手いなーと感服。両方のテーマにきっちり向き合い、作品としての答えを出すことにも臆さず見事に締めてくれたのはかなりの好感触だ。
これらテーマの両立は作劇面においてもいいバランス感を生み出していたと思う。エグゼイドは医療機関の監修も受けており、医療ドラマとしても手術などの描写が光る作品で、題材ならではのシリアスなストーリーが展開された。そんな中でレトロゲームがモチーフとなったチープでポップなライダーたちの雰囲気は息抜き感があり、暗いカラーに傾きすぎることを抑えていた印象がある。
各エピソードの出来もそうだが、とにかくエグゼイドはキャラクターの立て方と魅せ方が上手かったなぁという印象がある。それぞれのメインキャラクターにはきっちりと見せ場を作っていたし、人々が織りなすドラマの構築が実に巧み。命という存在を巡った医者とプログラマーの対立の物語だったり、過去の因縁に縛られた二人の男のすれ違いの物語だったり……緻密に構築された人間模様から、無駄のない展開を見せてくれたなぁという感じ。
大筋のストーリー的には社長親子と戦ってる局面が大半だし、ほとんどは撤退して終わるので(そのあたりはこういう長期もの特撮ドラマでヌルいと突っ込みを入れるのは無粋なのかな? などとも思いつつ)下手すると緊張感が削がれたりしてしまいそうなものだが、前述の人間ドラマを転がしつつ、新フォームや新戦術も交えて全然退屈しなかった。
子供に向けてのメッセージ性と、娯楽作品としてのエンターテイメントをどちらもやりきり、高レベルにまとまった作品であった。あんまり良かったので思わずゲーマドライバー(変身ベルト)も買ってしまったぐらい。ヒーローに憧れるのはキッズの嗜みだからな。俺だってヒーローになりたいんだ。

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仮面ライダーエグゼイドがどれだけ信頼感のある大天才作品だったかという話は、最終回でこの絵を主題歌とともに持ってきてくれたこいう事だけで十二分に示せるのでは。常に「これが見たかった」という展開を持ってきてくれて、本当に気持ちのよい作品だった。

ひなろじ ~from Luck & Logic~

少女たちの出会いが織りなす成長と希望のロマンチックアニメーション、『ひなろじ ~from Luck & Logic~』を見てみんなもダリアの花の花言葉~~って感じになっていこうな、よろしく頼むぜ!
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例のごとく個別感想は後ほど……

cemetrygates1919.hatenablog.com
書きました。思ったより長くなった気がする。

プリンセス・プリンシパル

スチームパンク百合スパイアクション!と意外性のある組み合わせを繰り出してきた作品。時系列をシャッフルしキャラ情報を小出しにしてくる戦略も面白かったし、大人に翻弄され裏世界で懸命に生きる少女たちの姿が魅力的に描かれていたと思う。特に核となるアンジェとプリンセスの描写には力が入っており、「国を分断する壁」だとか「嘘をつくスパイという職業」などとそういった舞台設定も活かし、互いに依存し想い合っているのにすれ違ってしまう、そんな微妙なバランスの元で成り立った二人の関係が情感たっぷりに表現されていた。スパイチームの方も性格も経歴もバラバラな5人が任務などを通じて少しずつ歩み寄っていくのがとても微笑ましい。
ただその反面美少女部活チックな路線にちょっと寄りすぎたのではという気持ちも。スパイが跋扈する裏の最前線などの壮大な設定を掲げながらもチーム方面のミクロな描写に留まり小ぢんまりとしてしまったのは残念。スパイアクションとしてもパワーカードのCボールやベアトリスで解決する局面が多く、駆け引きの面白さがあまり感じられなかったし、スチームパンク要素も描写が薄めで便利アイテムの供給係ぐらいの印象になってしまったのは否めない。百合的な関係性は十二分に楽しめたのだが、他の魅力的な要素が中途半端になってしまったと感じるのが惜しいし、最終回にしてもやや投げた感があるのは否めない。もうちょっと緩い目線で見たら良かったのかもしれないが、ダークな雰囲気を見事に打ち出した1話と、謀略渦巻く政争ストーリーを感じさせた2話が掴みとしてあまりに強かったためハードルが爆上がりしてしまったのかもしれない。キャラクターや雰囲気は一級だっただけにもう一歩しっかりと自分も受け止めることができればよかったのだが、残念。

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ちなみに大変ベタで申し訳ないのだが、僕が好きなドロベアは「6話、車の上で会話するドロベア」なのでよろしくお願いします。

異世界はスマートフォンとともに。

不慮の事故で命を落としてしまった主人公が神様パワーで異世界で復活、と王道の異世界召喚の展開からスタートする今作。ついでに得た魔法スキルで発生した問題をその場で瞬間解決していく流れは、(設定通り)チートでパラメーター等をカンストさせゲームをスピード攻略するかの如しシュールさがあった。特に序盤の圧倒的にドラマを排除した作劇には少々面食らったぞ……。
元々自らの生死にすら大して執着を見せず、その力の強さも相まって空虚な雰囲気を感じさせていた冬夜だったが、ヒロインたちや周囲の人々との交流によって少しずつ年頃の男子っぽい姿(ぶっちゃけエロ方面での感情の発露がやたらと多めだった印象)も見せるようになってきたように思う。そう考えるとアニメのひとまずのクライマックスとして、強敵ではなくヒロインたちとの関係の一応の決着を持ってきたのは必然性があるような気も。話が進むに連れ作中のドラマの排除も多少マイルドになって、わかりやすい山場が毎話登場するようになってきていたかなという印象があるが、それも彼の心境の変化を反映していたのかもしれない。
……などとイセスマのあり方を考えてもやっぱり、宝玉アポーズやとりあえずスリップでのほほんとストーリーを進めていくのには笑ってしまうが。そういう不思議なノリとか、あとスライム屋敷の話とかフランチェスカとの邂逅とかのバカバカしいノリはなんだかんだ結構好きなんだよな。でもキャラクターの魅力とか、ストーリーの面白さを感じ取れたかというと個人的にはうーん……。終盤が王道のお気楽ハーレムものっぽい作りになっただけに、キャラクターの魅力を感じることができればもっと楽しめたなという感じはする。あと凄く気になっているのだけど、英語が古代語だったのって伏線だったりするの?

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バブルボム、『衝撃の泡沫』って言い回しが好きすぎるので、何かに使っていきたい。

アクションヒロイン チアフルーツ

アクションヒロインチアフルーツはご当地ユニットである。ふるさとヒロイン特例法案に乗り遅れた陽菜野を元気にするため、今日も笑顔で戦うのだ!(オープニングより)こんな風に、寂れた陽菜野市の町おこしを目指してご当地ヒーローショーを立ち上げた少女たちの奮闘が描かれた。ストーリーはまさに王道といった感じで、トップヒーローの模倣から始まり、オリジナルヒーローの模索、チームメンバー集め、トップとの距離を目の当たりにした挫折……といったものを経て自分たちならではのスタイルのヒーローショーを確立していく流れが美しかった。物語とショーの展開をシンクロさせてくるのもよくて、そうした手法も活かしてキャラクターの掘り下げをきっちりやってくれたので、土台をガッチリと固めながら見ていくことができた。それぞれのキャラクターのチーム的な役割が分かれているので、メンバーの加入でショーの完成度や豪華さが上がっていくのもわかりやすく高揚感がある。この相乗効果が上手くハマり、彼女たちの成長をより感動的なものとして受け止めることができたと思う。
ストーリーだけ追うと結構真面目なんだが、本編のノリはギャグやパロディネタを満載したわりとゆるい仕上がり。各話タイトルを見ただけで「あっこういうアニメか」とわかりやすいと思う。10話で『あの日見たマナの名前を私たちはまだよく知らない』がアウトで『さよなら絶望戦士』がオッケーな基準がわりと謎だぞ! 特撮の古今東西のネタを結構拾ってきてるようで、今放送中のキュウレンジャーネタを両方に出演しているM・A・Oさんのキャラに言わせるあたりフットワークの軽さに驚く。僕は軟弱なオタクなので、あまり把握できなかったのは残念……。そんな雰囲気なので作中でやや強引な場面もあった気もするがそれもまたご愛嬌、肩肘張らずに見られて熱くて泣ける、良いアニメだった。

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最終回で今までの布石もたっぷりと活かした大団円でとても良かった。全員がステージに上ったのもOP再現を感じさせて胸が熱くなる。ますますチーム一丸となった彼女たちの希望にあふれるエンディング。

バトルガール・ハイスクール

ソーシャルゲーム原作のアニメ化で、『イロウス』という外敵に立ち向かう女子高生たちの戦いの物語。アニメではある程度時系列が進んだ後の話のようで、イロウスから一旦地球を奪還した後の日常と新たな戦いが描かれており、「バトルガール・ハイスクール」というその名前の通り、戦う戦士と女子高生としての両立した姿が見られた。日々の楽しさはそのままそれを守るための戦う理由ともなる。緩くなりすぎず、凄惨にもなりすぎずな雰囲気のバランスも良かったと思う。全体を見ると日常パートに寄ることが多めでバトルは結構薄めだったのだが、強敵が登場した7話などここぞという所では力の入ったバトルシーンを楽しむこともできた。
このアニメ登場キャラクターがとにかく多くて、関係も既に構築されているので原作ファンでないとなかなか把握には困るほどの数。しかしそこで転入生のミサキを投入する事で、彼女の視点から他のキャラクターを知っていけるようにしたのは僕のようなアニメ新規層にも優しい作り。作品としてもキャラクターの個別回をやりつつも、ミサキが少しずつ打ち解けて行く様子を一本の軸としてストーリーに組み込んでいるので、わかりやすく安心して楽しめたなと思う。かなり後半に至るまでキャラクターの名前がきっちり表示される親切設計にはちょっと笑ってしまったが。前述した通りの日常とバトルの両立から、チームとの絆を深め成長していくミサキの物語として綺麗にまとまった印象だ。

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刺々しかったキャラクターが周囲との交流を経て次第に打ち解けていくのは今クールでもひなろじなどに見られた王道展開だが、やっぱりこういうベタなのが好きだなあと思った作品。

2017年春アニメ総括

今期マイ・ベストアニメ『ひなろじ ~from Luck & Logic~』
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5本しか見ていないのに今期ベストも……という感じは否めないが、ひなろじは本当にいい作品だった。前期のフレームアームズ・ガールが日常モノとして、そのゆるふわな感じとストーリー性を両立させていてやるなあと思ったのだが、ひなろじは更にきっちり一本軸の物語を打ち立てつつも優しげな世界を描いてくれていた。毎クールこんなに個人的ヒット作が出てきて困ってしまう。このクールは『天使の3P!』も見たかったのだが追いつけず……そのうち見ておきたい。

2017年秋アニメに関して

なんとなくアニメって一年単位で見ると秋がラストの季節になって不思議な感覚がある。放送も始まってきているが、今期は男性アイドルものになかなか注目作が。キャッチーさと明快な話作りでつかみがバッチリな『アイドルマスター SideM』と、一方抽象的な表現に終止し説明を排除したかなり尖った作りの『DYNAMIC CHORD』という対照的な二作が出てきて面白い構図だなあと思っている。他雑破業先生シリーズ構成の日常ギャグ『ブレンド・S』や、良い雰囲気で女子同士の関係描写が楽しめそうな『このはな綺譚』あたりも気になる。夏の反動か結構多くの本数を1話段階ではチェックしているので、色々と見ていきたいものである。あと映画に向けて仮面ライダーの視聴もやりたいのだが……結構忙しそうだ。

TVアニメ『ひなろじ~from Luck & Logic~』エンディング&キャラソンミニアルバム

TVアニメ『ひなろじ~from Luck & Logic~』エンディング&キャラソンミニアルバム