日陰の小道

心はもう無重力状態

2018年 冬アニメ感想を殴り書く

TV視聴アニメ感想をブログに書き始めてからこれで一年と思うと感慨深いような気もする。今期も豊作だった。いやもう春アニメが終わりそうだけど……。

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冬が終わると……春がきたー!

ゆるキャン△

女子高生たちの緩やかまったり、素敵なキャンプライフ。ジャンル的には日常ものの分類だとは思うのだが、題材が題材だけに当然ガンガン出かけるし、部室で毎回駄弁るシーンが入る感じの作品とはちょっと違う味わい。非常にアクティブにレジャーを楽しんでゆく、日々における小さな非日常の連続という風な作品だ。
キャンプといえば通常は夏だろうがこのアニメは全編通して季節は冬、寒い時期のアウトドアならではの厚着ファッションも結構新鮮で可愛らしい。服装以外にもキャンプ用の小道具の描写なんかも素人目ながら細かくやってるなあと感心したし、題材ならではの背景の自然描写も非常に美しくお見事。
また大塚明夫氏ナレーションのキャンプの解説だったり小ネタの披露も遊び心があって楽しく、存分にキャンプという娯楽の喜びを見事に描いた作品だったと思う。アニメのヒットを受けキャンプに行きたがるオタクも散見したが、しかし実際冬のキャンプは厳しいそうで、そうゆるくとはいかないのかな……? などと思わされたり。

キャンプ描写と並んでこのアニメで特筆すべきは人間関係の描写の上手さだ。ソロキャンプが趣味の女子高生である志摩リンと、彼女との出会いからキャンプに興味を持ち始めた各務原なでしこ。二人の交流と進展を軸に、繊細に描かれたキャラクターたちの距離感と感情描写はかなり面白い。1話での出会いを気に仲を深めていく彼女たちだが、人懐っこいながらも押し付けはしないなでしこと、ソロが好きだがしかしまんざらでもなさそうなリンの、微妙で柔らかな関係が実に微笑ましい。さらに他にもなでしこの所属する野外活動サークル(略して野クル)のメンバーだったり、リンの友人の斉藤も絡んできたり……と少しずつ広がっていき、それぞれに構築されてゆく関係性もまた良いのだ。
またそうした人々の距離感の演出において、このアニメはスマホというアイテムを非常に効果的に使っていたなあと感心する。メールやラインの演出を組み込んでくるアニメも最近では珍しくはないが、この作品においてはソロキャンプ時になでしことリンで連絡を取り合ってゆるい繋がりとして見せてみたり、なでしこスマホを野クル部長の千明が使いリンと接近させてみたり……と様々な場面で活用していたのが印象深い。ゆるキャン△』の「ゆる」は「ゆるい人間関係のゆる」でもあるのかもしれない。

そうしたゆるい付き合いを繰り返し、最終的にアニメはキャラクター全員が集合したクリスマスキャンプというクライマックスを迎える。頑ななソロ派だった志摩リンはみんなとする一味違ったキャンプの楽しみ方を1クールで学び、めでたしめでたし……というわけである。
しかしゆるキャン△のいいところは、これは決してソロの否定ではないということ。ソロにはソロの良さがある、と最後にリンに影響されたなでしこがソロキャンプのデビューを果たすのだ。いつものようにリンにスマホで連絡するなでしこだが、同じくキャンプに来たリンから送られてきたのは自分と同じ風景で……という所でアニメは終了する。ソロと複数の両方のスタイルを良しとしつつ、二人の気の合う様子を見せつけられてさすがの自分も完全に屈服。個人のスタイルの尊重を貫き最後の最後まで美しく終わる、安定安心高品質の良き美少女キャンプアニメであった。

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別々の場所から夜景を報告しつつ、「綺麗だね」という気持ちで繋がり合うリンとなでしこの姿があまりにも美しい演出で描かれた5話。見事な演出力を見せつけられた全12話であった。

剣王朝

時は春秋戦国時代、圧倒的国力を持ち天下に覇を唱える秦に対抗し、やがて剣王朝を築く丁寧という青年と仲間たちの物語……だったらしい。本当に自信がないがこんな感じのあらすじを見かけるのできっとそうだったんだろう。
1話から容赦なく丁寧の村の人々が女子供含めて殺戮される容赦の無さに驚きつつ、説明もなくガンガン進んでいく展開に容赦なく視聴者も殺戮されてゆく。登場人物も説明がなくガンガン増えることもあるのでそこの把握だけでも大変だし、慣れない中国名も相まって余計に名前を覚えるのが苦手な自分には厳しかった。更に専門用語もガンガン出てくる。肉菩提とか仏教系の言葉なんだろうか……教養がない人間には厳しく……こういうの中国史や中国の文化が根付いている中国の方々だったらちゃんとわかるもんなんだろうか……。

全容が把握できていないクソ雑魚視聴者なので断片的な語りをする。
宿敵とのバトルでまさか村の人々を悼んだ時の仏像アタック(木彫りっぽいが人体に見事に刺さって致命傷を負わせる)で決着をつけるとは恐れ入る、最大の印象に残る名シーン。
前半で出てきた商のお嬢様、結構好きだったんだが後半影も形もなく一体どうなったんだ。
剣の勝負で毎回謎オーラで謎な風に戦っていくの面白い、とりあえず宙に浮くのは基本。
難解なこの作品において非常にわかりやすくエンタメをする下野紘が暴れまくるNEXT剣王朝(次回予告、NEXTってなんだ古代中国だぞ)は救いであり福音。
最終回、終わる気配がなくどう終わるのかドキドキしていたら普通に次回に続くように罠にはめられた丁寧の顔のアップで終了して同じ顔になってしまった、結局武術大会開催前みたいな話で終わったんだが。
あまりにわかりにくいせいか公式Twitterの解説を見て毎回そういう話だったんだ……と多少の理解をする。
一番の不満点は人気の高い裏番組にぶつけた挙げ句このアニメが配信もしないから追うしか選択肢がなく、実況民も集まりが悪いし僕もキリングバイツが満足に見れない。放送局さん、アニメ被りは本当になんとかなりませんか。
総じて僕には早すぎた作品。追ったことを後悔は全くしていないが、完全に敗北しかしていないので、ぜひどなたか解説して下さい。よろしくおねがいします。

f:id:cemetrygates1919:20180325030355p:plainこれで終わられた僕の気持ちにもなってほしい。時間差でNEXT剣王朝投げてくる公式垢くんすき。


スロウスタート

高校浪人少女、一ノ瀬花名のスロウなしかし着実なスタート。オーソドックスなきらら日常系という趣ながらもこの作品が異彩を放つのがこの浪人設定である。高校受験をおたふく風邪で受けることができずに浪人してしまった花名の高校入学からスタートするアニメだが、なんといっても花名の世渡りの微妙で絶妙な下手さ加減の描写がかなり上手い。ちょっとしたことで不安になってしまい、ちょっと自分に自信がなく、人の目もちょっと気にしがちで。1話時点では会話シーンで花名だけ妙に無言が続いたりとうまく混ざれていない感じのする彼女だったが、そんな彼女が周囲の暖かな人々と触れ少しずつ打ち解けてゆく。感動的なアニメだ。

スロウスタートという作品のいいところは花名のリスタートを応援しつつも、その過去自体を否定することはないというところだ。本来なら同学年でなかったクラスメイトの面々だったり、同じく浪人生の万年さんとわかちあうことができたりと、浪人していたからこその人間関係がそこにはある。そしてそういうことは最終的に花名自身に対する肯定であって、一年間を棒に振ってしまったと絶望する彼女を優しく包んでいくのだ。
浪人設定が設定だけのものではなく、描写やストーリーにも結構組み込まれているのがやっぱりこの作品の特色だなと思う。それ故に浪人体験とかがあったりすると、良くも悪くも刺さりやすくなるらしい。「正直キツい」といった意見もちょいちょい見かけたりもしたのだが、そうした人生で何かしらの挫折をしたような人こそスロウスタートを見てほしい。このネット社会、どれだけ自分が辛くてももっと大変な人は何処にでもいるし、そうした相対化された世界においては、大抵の人間の「不幸」というのは「普通」に置き換えられてしまう。花名に関してもそうで、高校浪人で一年を棒に振ったぐらいはなんてことはない、と大人の理屈では思われてしまうものである。しかし世界の狭い思春期少女にとって、それは世界から置き去りにされたかの如し絶望があるだろうし、だからこそ泣きながら家に引きこもろうとするほどのショックだったのだ。だからこそ、"自分だけの"不幸や絶望を抱えている人間こそ一ノ瀬花名という少女に共感ができるだろうし、そんな彼女の歩みと幸福を誰よりも応援できると僕は思う。スロウスタートは全ての普通に不幸な人間に対する賛歌なのだ。

花名ちゃんの話ばかりになってしまったが、他のキャラクターも良かったと思う。瓶詰妖精からのスターシステムで参戦した明るいオタク少女の百地たまてに、生き方も体型もマイペースでスロウな人生を体現するかのような千石冠。あとこのアニメを語るにあたって避けて通れない(??)のが十倉栄衣子というキャラクター。教師と女生徒の禁断の百合をこのスロウスタート内で行う感じは「暴れる」以外の言葉が思いつかない暴れっぷりで、その逸脱した空気感は賛否あれどしかし確実な作品としての強烈なフックであった。世話好きでクラスの女子を片っ端から「攻略」していると語られる彼女はしかし一定の距離をまた保とうとし、しかし唯一ままならないのが榎並先生との関係……とまあ彼女も生きづらい生き方をしているなあと思ってしまうようなキャラクターである。そんな栄衣子は持ち前のコミュ力で花名の学校生活を大いに手助けしてくれていて、花名と話す時の彼女は禁断の愛ぶちまける感じのキャラとは裏腹に(?)やさしい友人という風なんだよな。十倉栄衣子一体何なんなんだ。スロウスタートのキャラクターは本当に奥が深い。

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「遠回りして、よかったでしょ?」なんだよな……。

ポプテピピック

どびっきりのクソアニメ、と自称する今期の人気作。いやクソアニメって名称はデリケートだからやめなされ、などと思いつつ……クソアニメ論はこの感想欄で語るにはデリケートかつ繊細な話になり難しすぎるので特には語らないが。

クソはクソでも内容がクソというよりは良くも悪くもクソ真面目のクソだったかなあという感想。
再放送や声優変更のギミックは初回で驚かせることだけにとどまらず、天丼ネタでもあり多少の前後の変化もつけたりという工夫がなされて居たとは思うが、しかし12話全部をそのスタイルで貫いてしまうのは少々退屈だったようにも。大御所声優の力も付与した細かいパロディネタとか、後半でコメンタリーを突っ込んでくるとか、ところどころ光る所はあったと思うのだが個人的にはもうちょっと自由に弾けたギャグを見せて欲しかったなあとは思ってしまう。
フランス語パート・フェルト・砂絵・絵本、などなど変化球は多くあったものの、そこまでの驚きを持っては見られず最終的にパターン化に嵌ってしまったということは否めない。クソアニメなるものを自称しているので、そこまで尖った作風でなくてもそれでいいではないかと言われればそれはそうかもしれないが……。

酷評っぽい感じになったけど半分ぐらいは人気作への妬みであり、ところどころくすりとはしたしいいアニメ……というかバラエティ的作風……だったがどうしようもない作品でもないのでは、とは思う。良くも悪くもゆるっと見るのに適してはいるというか、一定の話題を作ることに関する手法はちゃんとしているなというか(やっぱり斜に構えた発言だな)
ボブネミミッミなどのAC部パートは結構好き。最初は声優変更がないので退屈では……と思っていたが、原作のネタをうまくアレンジして独特の映像作品を見せてくれたな、という感じだし結構ところどころ笑った。ヘルシェイク矢野も面白い芸だったし。
総じて話題作ではあったけれど、まあ良くも悪くも飛び抜けたアニメではないかな……というところ。あと曲は大体好き。

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ヘルシェイク矢野は結構スゴい。

citrus

今期のコミック百合姫からの刺客。純情ギャルの藍原柚子と、親の再婚によって彼女の義妹となった生徒会長の藍原芽衣、禁断のラブストーリーが繰り広げられる。この作品、個人的な感想だと「繊細な心理描写」というよりも「パワーのあるパンチの効いた展開」というものを突っ込んでくるのに長けている印象で、まあそれも大抵芽衣さんのほうが1話から始まってキスから始まるような積極的なアプローチを仕掛けてくるからである。また恋敵となるキャラクターも、柚子に異様な執着を見せる小悪魔的策士だったり、友人の立場から柚子を牽制して芽衣への恋を成就させようと画策する双子(主に妹)だったりと力強いメンバーが揃う。展開も「芽衣の婚約相手だった男がクズだった」とか「芽衣の祖父が倒れたのを助ける柚子」など、ちょっと両者の接近の道筋が都合が良すぎないかな……とちょっと思う箇所もありつつ、「偶然知り合った子が実は修学旅行のホテルまで同じ場所で恋敵」までされると作品の持ち味にまで昇華された心地がする。さながら百合バトルの様相を呈したこの作品の中で果たして純情ギャルは生き残ることができるのか!? でも一番面倒くさいのは柚子さんも話すように芽衣さんなんだよな。

百合恋愛バトルめいたものをやると同時に、柚子と芽衣の関係というのは疑似とはいえ姉妹の恋愛が許されるのかという視点を噛ませつつ、そして「恋人」と同時に「家族」になってゆく流れが丁寧に描かれており良かったと思う。特に中盤で芽衣(と柚子の義理の)父親が登場した際、父と上手く向き合うことのできない芽衣を後押しする、柚子のひたむきさが彼女を救う流れが美しい。こういった題材を取扱ながらも、ドロドロさせすぎずに最後まで気持ちよく楽しく見ることができ良かった。

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父を追い駆ける二人と羽ばたく鳥。この関係性の完成形が見えた6話がやっぱり結構好き。

三ツ星カラーズ

平和な上野の平和を守る、そんな使命を帯びた3人の少女カラーズちゃんたちの物語。ジャンル分けというものをするとどうしても偏った視点が発生してしまい、作品を捉えること自体には不適切であると言う点を踏まえて言いたいことを言うために敢えてやるのだが、いわゆる日常系ジャンルというものに、今期『ゆるキャン△』だとか『スロウスタート』より最も当てはまる作品がこれではなかろうか。というのも、日常系の魅力の一つとして「舞台」というのは重要であると思っていて、そこに感じる箱庭感というか、この現実と接点がありつつも何処か違うまた別の「世界」がきっちり構築されていたというか、そういう所に僕は魅力を感じるんだよな。そういう意味でこの『三ツ星カラーズ』という作品は、"あの上野"が好きになる作品であったのだ。きっちりと舞台が設定された作品なので、現実の上野を再現した背景もうまく機能していた。

無論こうしたアニメにおいて重要なキャラクターとそれに伴う関係の描写も良い。結衣・さっちゃん・琴葉三者三様のメインキャラクターなのだが、気弱なリーダー・お調子者・クールなゲーマーといった一見したキャラクター像から進んでいくにつれて微妙に違うものが見えてくるのもおもしろい。
ギャップのおもしろさが一番現れたのはやっぱり6話の『弱点さがし会ぎ』("議"がひらがななのが徹底していてよい)だろうか。それぞれの弱点を探していく遊びをしていた3人だったが、琴葉の順番になったときにさっちゃんが突然ややためらいだす。一方で気にする素振りのない結衣が「琴葉ってゲーム下手だよね」と言い放ち、自覚のない琴葉はショックで放心する……というエピソード。意外と火力の高い結衣だったり、案外抜けている琴葉であったり、そして一番直情っぽいさっちゃんが案外周囲を気遣っているんだなあとわかるとても好きな話だった。
4話のなつまつりも良かった。普段は結構結衣に対して辛辣なさっちゃんと琴葉だが、夏祭りではもっぱら踊りを踊る結衣にばかり興味を向けているのが微笑ましい。この回は一人学校が違う結衣だけの交友関係がちょっと現れたりもして、作中世界が広がりつつも3人の距離感というものもまた感じられるようで非常に好きなエピソードである。

またこの作品は、3人の子供の目線が大いに感じられるようになっている。シンプルな目線の低さはもちろん、いろいろな遊びに際して独特の世界の捉え方だったり、言葉の選び方をしたりする。それが「上野の平和を守る」であったり、琴葉の「ゲームクリアー」だったりするのだ。またそうした「子供の目線」は対比された作中に存在する「大人の目線」というもので浮き彫りにされる。そうして形作られた「子供の見える世界」ということを見守ること、作中の大人たちがやるそれは『三ツ星カラーズ』という作品を見つめる視聴者と重なる。子どもたちの遊びは一見するとナンセンスで意味がないようにも感じられるが、その意味のない日常こそが平和の象徴であって、それを眺めることで作中の上野の人々、また我々がどこか救われているのだ。もちろんカラーズたち自身にその意識はないだろうが、「平和を守る」とはそういうことか! と最終話で示されたときにようやく気が付き膝を打った。「ピンピンピンチは突然に来る」んだよな、わかるよ、放送が日曜深夜だったもんな。
そうしたメタっぽいスタイルが最高潮になったのも最終回で、冒頭のビデオカメラで映された上野の人々の姿は、我々の現実世界のモニターを通じて『三ツ星カラーズ』の世界が「そこ」にあることを非常に感じされてくれる演出であった。またBパートにおいて賑やかに画面に舞っていた桜、そんな花びらを「人生うまく行かない就活中のお兄さん」の頭に降らしてあげるカラーズの3人。これこそ三ツ星カラーズの祝福であり、就活中のお兄さんの如し現実世界の苦しさに喘ぐ我々は、三ツ星カラーズの世界を感じることを許されたのだ。そしてちょうど放送時期は3月、現実世界の春の訪れとともにまた、三ツ星カラーズの一年は春に一旦の終わりを告げるのだった。しかしカラーズの日々は終わらない、その証拠に予告もとい『カラーズ反省会』はちゃんと12話でも存在したのだから……。この現実世界をフィクションで彩ること、それがとにかく面白くて、僕はフィクションに親しんでいるというところがある。

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日が昇っている時間だけの3人の集まり、カラーズの日々は永遠に。

からかい上手の高木さん

タイトル通りからかうのがお上手な女子中学生の高木さんと、彼女に反撃しようとしつつも抜けているがゆえにいつも失敗する同級生の西方がゆるくラブコメを繰り広げる。
そうこれ、からかわれたいという微妙なM寄りフェチシチュに特化している風だけど、ジャンル的にはラブコメかなと思うのだよね。ラブコメというスタイルはコメディを主体にしつつ、恋愛の距離感の接近と離反の応酬をやっていくものかなあと思うのだけれど、この二人は完全に組として固定されつつもその恋愛に至るまでのもどかしさをずっと演出しているというか。からかうという形でアプローチを仕掛ける高木さんはしかしからかうという形しか取ることができず、一方の西方はまあ鈍感なので年頃らしくドキドキはしつつもその本心には到達できないという、距離感のゆらぎがあるのだよな。
ただこの作品でいうと後日談でくっつくのがわかってしまっているのが安心する反面物語的なおもしろさはなくなってしまっているようにも思う。ラブコメのおもしろさの一つであると思われる、くっつくかくっつかないかのドキドキ感というのが特にないのは、ちょっと惜しいかもしれない。本作の掲げるフェチ要素は僕の好みにそこまで刺さらない(美少女にからかわれたい願望みたいなものが薄い)ので、そういう意味でも若干合わない作品スタイルだったと言えてしまうかもしれない。

からかうことに関しても、基本的に高木さんが上手な上に、最終的に西方といられればいいので得をすることが多く展開は一方的。とはいえそこで面白いのが高木さんのほうが比較的惚れている方であるため、そう考えると西方くん側にアドバンテージは存在しているというところ。そこが終盤にようやく発揮され、「高木さんと帰りたかった」という西方の何気ない好意が、高木さんには「クリティカル」ヒットしてしまい人知れず赤面するというエピソードが盛り込まれる。貯めに貯めた高木さんの負けをここぞというところで投入し、最後には過去の回想も絡めつつ高木さんからの西方への想いと、二人の現状の関係を再確認するような構成は実に見事だった。3人娘のトークパート(元々はスピンオフ作品らしい)も挟んでいるとは言え、基本的におしゃべり主体で単調になりがちな作風において、繊細な演出で登場人物の心の機微を描き出していたのもアニメ作品として良い仕上がりだったと思う。
これは個人的な目線だけれど赤城博昭監督は僕の大好きな『ひなろじ~from Luck & Logic~』でもこだわりの演出面を魅せてくれたので、また次回作以降の活躍にも大いに期待しております。

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席替えをしても結局隣同士。机の間の距離は変わらないように見えて、しかし着実な歩み寄りが。

宇宙よりも遠い場所

ED曲「ここから、ここから」「ここから始めよう」っていうのが全てという感触がある、そんなアニメだったと思う。ストーリーの素体だけ見ると女子高生たちが南極に行って帰ってくるという実にシンプルなものになるんだけれど、その過程で毎回着実な進歩を見せ、毎回等身大の「事件」で山場を作ってくる。非常に堅実で巧みなお話づくりで、このクールにおいてもトップクラスの安定感を誇るアニメ。ギャグシーンも結構ふんだんに取り入れてカジュアルな作りなのも含めて、「とりあえず2018年冬作から人に勧めるならコレ」ぐらいの安牌作品と言えそう。

よりもいがそのドラマで何を描いたかと言うと、等身大の女子高生たちの青春と自己形成、という王道のテーマだろうか。特色としてはキャラクターたちがどこかアウトサイダーめいた雰囲気があるというところ。南極で消息を断った母に"会いに"行こうとし奇人扱いされるしらせも、高校を辞めてアルバイトで生計を立てる日向も、多忙なアイドルで友人が作れない結月も皆「普通の女子高生」からははみ出してしまったような人々だ。
作中印象的なシーンで南極に到達したしらせが叫んだ言葉が「ざまあみろ」というものがある。これまで自分を顧みなかった奴らを見返してやろう、ここまでの人生おいて手に入らなかった望みを今一度叶えてやろう、そうした一種復讐劇めいた執念のような気配すら感じる描写があった。南極観測船に乗り込む大人たちもまた南極へのリベンジを目指しているのもそれに拍車をかける。
南極を目指す主人公組で最も南極そのものに強い執着を持っていたしらせ。彼女の「母親との対面」が描かれた11話宇宙よりも遠い場所は実に見事なエピソードであり、そのタイトル『宇宙よりも遠い場所』の意味が多重に紐解かれてゆく美しい物語の終結。一方で母親の死とほんとうの意味で向き合えた彼女にとっては、ここからがはじまりでもあるのだ。

一方そんな中で作中における物語の起点であるキマリは、平凡ながら平凡を嫌う女子高生。このキマリの立ち位置というのが結構おもしろくて、楽しいことを無邪気に探す彼女の姿勢に感化されて女子高生組の南極行きがなんだか転がっていく。よりもいという作品自体が湿っぽくならずに、一夏の青春モノとして駆け抜けられたのも案外キマリの存在が結構大きいのかもしれない。
あと忘れてはいけない重要キャラクターがキマリの親友であるめぐっちゃん。一話からキマリの頼れる身近な友人だっためぐっちゃんなのだが、そんな彼女は実は南極へ向かうキマリを密かに妬んでおり、5話ではそのことを涙ながらに告白する場面も。あたかも「特別」になってゆくキマリと対比され「平凡」に取り残されたかのような彼女だったが、そんな彼女が華麗に逆転するのが最後の最後、なんとキマリと正反対に「北極」に行っていたことが判明するのだ。メッセージでめぐっちゃんが話す「残念だったな」の言葉もいかにも彼女らしく、「お前なんか特別じゃないんだぞ、私だって北極に行ってやったんだ」とでも言うかのような彼女の捻くれたキマリへの愛情と想いの強さが見え隠れするようでとても良い。またこのめぐっちゃんの行動によって、宇宙よりも遠い場所』という作品が「特別な女子高生」の物語ではなく「みんな」の物語になったなあと僕は思うので、彼女をどこまでも称賛したい。作品において「平凡」の代表というポジションにいながらも、その勇気ある一歩を踏み出しためぐっちゃんのように、きっと誰にでも「ここから」というものが目の前にあるはずなのだ。

ヴァイオレット・エヴァーガーデン

兵士として激しい戦場から帰還したヴァイオレット・エヴァーガーデンという少女が、手紙の代筆業を務める『自動手記人形』の仕事を通じ自身の過去と向き合ってゆく。最後の戦いで名付け親でもある愛する上官のギルベルトを亡くした彼女は、当初ヒトらしい感情も乏しく自らを「武器」と名乗りただ亡き上官の命令を今でも待ち望んでいる。ギルベルトの昔なじみだったホッシンズはそんな彼女を不憫に思い、ギルベルトの死を隠しながら彼女の再出発の手助けをするのだった。

物語は当初一話完結式で、様々な依頼人や同僚とヴァイオレットとの交流が描かれる。その経歴のため「感情」というものがよくわからない彼女は相手の感情を慮ることができない。そこから問題を起こしてしまうこともあるが、それ故に時には相手の本心を手紙へと綴る手助けになったりもする。またヴァイオレットと関わる人々もまたそれぞれの戦争の傷を抱えており、戦後の平和ながらも不安定な世界で、過去と現在が交錯しヴァイオレットという少女の姿が徐々に浮き彫りになってゆくのだ。
この序中盤の各エピソードの構成が奇抜さこそないもののどれも良いお話で、演出に関してもテレビアニメの絵とは思えない緻密さ(正直過剰カロリーなのを含めて良くも悪くもという感想が特に当初はあったが)を誇り、そこからうまくリンクさせヴァイオレットの物語そのものの歯車を少しずつ動かしてゆくのも上手くて、非常に全体的によくまとまったアニメ作品。ヴァイオレットがいよいよ彼女の過去と向き合う展開となった中盤では、7話「」(空欄)に8話タイトルなし、と思い切ったタイトルの作りも見せつつ9話の「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」というエピソードを迎えた。彼女の罪と功績をどちらも見据えてそれでも前を向く、だからこその少女が『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』に成るというこの作品最大の山場は非常に感動的。やはり過去を全てひっくるめて肯定していくというのは、我々にとっても過去というものから逃げようがないからこそ、とても優しいやり方に感じて好きなんだよな。

またその後にギルベルトの死を受け入れ前に進んだヴァイオレットが、大切な人を亡くした人に携わってゆくエピソードに繋いでゆくのも良い構成だった。物語のクライマックスめいたエピソードの「後」を描くというのは、歴史の華々しさの影に隠れる「戦後」というテーマのストーリーをやるにあたって必然性がある行為でもあると思う。解決の後にこそ残る「火傷の痕」というものに苦しんだ人々の作品だからこそ、「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」の後のヴァイオレットの確かな成長に胸が熱くなるのだ。
クライマックスでは、再び戦乱の影がちらつく中で今度は守るために戦うヴァイオレット、というのが過去ひっくるめた肯定として綺麗……ではあるのだけれど、ちょっと派手さを見せようとここまでとは逸脱した雰囲気になったので個人的には賛否ある感じかな。とはいえやはり掛け値なしにいいアニメだったと思う。

f:id:cemetrygates1919:20180620010804p:plain「お客様がお望みならどこでも駆けつけます。自動手記人形サービス、ヴァイオレット・エヴァーガーデンです」

デスマーチからはじまる異世界狂想曲

タイトルではありとあらゆることがデスマーチから始まるこのアニメ、普段デスマーチ要素は意外と見えないが、しかし物語のスタートはデスマーチからちゃんと始まっているのでタイトルに偽りなしである。ゲーム会社でデスマーチ真っ盛りの鈴木 一郎(29)が会社で一眠りして目を覚ますと、そこはまるで自分が作っていたオンラインゲームのような異世界。何故かゲーム画面めいたメニューやステータス表示も完備され、ひょんなことから初心者救済用の大量破壊魔法の流星群で最強の竜神とその軍団を撃破してしまった彼は、意図せず途方もない経験値と敵なしな高レベルを得ながら、HN同様のサトゥーと名乗り異世界観光に乗り出すのであった。

このゲーム設定というのがこの作品のキモで、ところどころで使用スキルが表示されたりするメタっぽい作りがユニーク。戦闘時にはもちろん、ラッキースケベのときに「ポーカーフェイス」を使ってみたり、風俗に行ったらスキル「性技」を獲得したりする(酷い例しか上げていないが……)小ネタ満載で情報量の多い作りは、視聴者を退屈させない。
他のセンスもまた独特。仲直りのときに窓からスタイリッシュに飛び降りて華麗にダンスを繰り広げたり、敵の大ボスが何故か「なのだよ」語尾でキャラ作りしていたり(しかもところどころ忘れる)、獣人族が妙に幼児向けアニメっぽいファンシーなビジュアルだったりする。ところどころで急にメシの解説をやりだすのも最初は面食らったけどセンスが斜め上でニヤけてしまう。不思議な視聴感のあるアニメだった。

また一方でこの異世界には謎が多く、そこを解明していくのがお話の軸のひとつなのかなという感じ。かつてサトゥーが作ったゲームのオブジェクトらしきものが存在していたり、他にも異世界からの転生者が存在していたりと謎が多い。こういったところも興味深かったのだが、1クール内では確信に至ることなく匂わせる程度であった。ひとまずアニメのクライマックスでは無茶な納品を請け負うという何気にデスマ要素で締め。やっぱりなんだか不思議なアニメだったが、でもなんだかんだ面白いんだよな……。

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サトゥーの思案シーンに歌謡アイドル挿入歌ぶっこんできたのもたまげましたね。類まれなセンスでしょう。

OP・ED選

毎回ここらへんの見出しの名前変えたくなってる気がするな。まあいいかしら。

ne! ne! ne!

ne! ne! ne!

  • STARTails☆
  • アニメ
  • ¥250
スロウスタートOP。ギターリフが光るカッコよさと可愛さを両立した快作。ちょっと意外なギターから王道ストリングスに流れるイントロは今期でも1、2を争う綺麗さだと思う。「うるるぷきぷき」みたいな歌詞センスも良いよね。吸ったら吐きますよね→好きになったら好きになってくれなきゃ寂しいよね の飛躍論理も凄まじいセンス。

Save you Save me

Save you Save me

さて2クールアニメなのでこの感想では触れていない刀使ノ巫女OP。いや刀使ノ巫女、2クール目になってますますアツい、次のクールでもかなり痕をいい意味で残す作品でしょう。ハイテンポなロック調、いかにもアニソンという趣が楽しい一曲。サビの「すべてを薙ぎ払えるような すべてを守り抜けるような」のフレーズは僕含め非常に癖になる人間が頻出と噂の作品を見事に現した名フレーズ。

心のメモリア

心のメモリア

同じく書いていないにもかかわらず刀使ノ巫女ED。これまたしっとり王道アニソンED(曖昧な表現)という感じで心にしみる。頼むからかなひよ平和な世界で10時に待ち合わせをしてくれ……。


わたしのための物語 ~My Uncompleted Story~

わたしのための物語 ~My Uncompleted Story~

  • fhana
  • アニメ
  • ¥250
分割ではないが冬アニメで未だ終了していない作品がある。そう、かの名作メルヘン・メドヘンである。僕はあのアニメ本当に大好きで、例え12月放送予定と言われても本当ならばその時まで冬アニメを精神的に終わらせる気はない。私だけの物語を綴ってゆく作品が美しくないわけがないのだよな。OPもそんな主人公・鍵村葉月の心境が繊細に表現されている。
アニメの感想としては最終回を待つことになるが、原作を買ったのでそれをそのうち記せたらいいかな……と思っている。

スキノスキル

スキノスキル

デスマーチからはじまる異世界狂想曲ED。いやこれ本当にいい曲なんすよ、メロディーメーカー田中秀和氏の強みがこれまた遺憾なく発揮されてる印象な名ポップス。楽しげなリズムと民族風の楽器チョイスもまた独特の魅力を生み出している。WUGの歌唱もいいしポテンシャル高かったグループだったと思うのだけれど、急な解散とはね……。

ミラクルカラーズ☆本日も異常ナシ!

ミラクルカラーズ☆本日も異常ナシ!

基本的に単純なオタクなのでアガるOPが好きになりがちなのだが、このクールはEDが強かったような気がする。日曜の夜の癒やしタイムをこの曲で締める度に、なんとも言えない寂しさが胸を刺すのを今でも覚えている。カラーズちゃんたちには門限があるから夕方になったら解散になってしまうわけで、そんなアニメの終わりにこの曲が非常に沁みるんだよな。夜空に見える一番星、それを3人で見つめる三ツ星なんだよな……などとひたすらエモい気分になってしまうわけである。名曲。おつカラーズ☆

総括

2018年冬 マイ・ベストアニメ 『三ツ星カラーズ
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いや今期は本当に悩ましかったのだが、終わって一番寂しかったこちらのアニメをベストとしたい。奇しくもこれで一年間季節アニメを推し続けたことになる。フレームアームズ・ガールひなろじ~from Luck & Logic~、DYNAMIC CHORD、そして三ツ星カラーズで1年間で実質4年も時を進めてしまった。どれもパワーのあるアニメなので季節アニメ好きは是非チェックしてくれよな。

季節的にはいまは春を通り越してそろそろ夏。いや春アニメ感想は流石にもうちょっと早く上げたいな。季節感を大事にしていこう。