日陰の小道

心はもう無重力状態

『ガールズ ラジオ デイズ(ガルラジ)』という異世界ラジオめいた奇妙なキャラクターラジオコンテンツを君は聞いたか

インターネットの海を漂っていて『ガルラジ』というものを知って、聞いて、多分ハマった。ので多くに聞かれて欲しいと思い、この記事を書いている。
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garuradi.jp

ガルラジとは?

高速道路のNEXCO中日本ドワンゴが手を組んでスタートしたこの企画。全国各地のサービス5箇所から、それぞれの地元の女の子たちがインターネットラジオを配信していくという設定のもと、毎週金曜日に更新されている。愛知県・岡崎、静岡県富士川山梨県・双葉、石川県・徳光、三重県・御在所の各サービスエリアの名を冠したチームが、それぞれの特色を出しつつラジオ番組を放送中だ。
百聞は一見に……もとい一聴(?)にしかず。とりあえずそれぞれのチームの第一回放送を貼っていくので好きな声優さん目当てででも聞いてみてはどうだろうか。質感の暴力とでもいうべき作品がそこにある。

出演:本渡楓、瀬戸ひかり、野村麻衣子 /チーム岡崎「こちらオカジョ放送部」第1回
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出演:春野杏、新田ひより、山北早紀/ チーム富士川「RADIO FUJIKAWA STATION」第1回
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出演:柴田芽衣篠原侑赤尾ひかる /チーム双葉「たまささsistersのごきげんラジオ」 第1回
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出演:長縄まりあ/チーム徳光「みるみるはっぴー×2れいでぃお」 第1回
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出演:小澤亜李佳村はるか松田利冴/チーム御在所「ラジオ カグラヤ怪奇探偵団 」第1回
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ちなみに私の一押しは三姉妹(双子の姉2人と妹)でお送りする双葉チームだ。かくいう私も篠原侑さんと赤尾ひかるさんの名前に釣られてはじめにこれを聞き、今では柴田芽衣さん演じる玉笹彩美が一番好きになってしまった。
いや自分の好みは良いとして、家族ということもあってか言い合うことも多いチーム(ほぼ双子が)なのだがそれが随一の「ドラマっぽくないわちゃわちゃとしたテンポ感」に繋がっており非常に楽しい。凸凹コンビ良くない? 良いよね?しっかりものの妹を加えて3人でなんやかんや上手くまとまっているのも良い。更に双子が方や大学生、方やアイドルを目指す(だけ)のニートってすごい設定じゃないですか? この3人が一緒にラジオしているだけでいろいろバックのストーリーを想像してしまうというか……いや私の好みの話に結局なっているが……。





……聞いた?聞いて気に入った方はアプリを落としてじゃんじゃん放送を聞いてみたりつぶやきを見てみたり小説を読んでみたり存分に楽しんでいただきたい。私も慌てて楽しんでいる。
一方で聞いていない方やよくわからんわという方に、自分の感じ方で恐縮だがどんな人にガルラジがおすすめできそうか考えたものをお伝えしていきたい。対象なきプッシュは何者にも勧めていないのと同義だからな、オレだってダメだと思う!と、いうことで……

ガルラジを気にいる素養がある人間は、これだ!

  • 声優さんのラジオや演技が好きな人
  • 少女の自己確立や自己表現といったストーリーが好きな人
  • 現実世界が仮想存在によって拡張されたかのような不思議体験が好きな人


これから順番に解説していくぞ。

声優がキャラクターを演じつつラジオ形式のボイスドラマを放送する、独特の演出の『ガルラジ』

ガルラジは声優がキャラクターを演じつつトークを繰り広げてゆくボイスドラマである。そしてドラマであるにもかかわらず、感覚としてはあまりにもラジオのように受け止めてしまう質感があるのだ。
自分は初めてガルラジに触れようとして双葉チームの第一回を聞いた。動画の説明には当然声優さんの名前があり、その上でキャラクター名の紹介画像やそのお話が出てくるわけで「あっなるほど、これはキャラクターを演じているんだな」ということがすぐにわかる。しかし、その演出や演技の方向性が、なんというか、『ボイスドラマ然』としていないものなのだ。


まず喋りがわちゃわちゃしている。メインで話している後ろで頻繁に別の声が聞こえたり、同時に複数人が話すタイミングがあったりする。また話している最中に思わず笑ってしまっていたり、時には言葉を噛んだりもする。こうしたことは通常の演技の場では当然NGな事柄である。そもそも、語りのテンポが通常のボイスドラマとしては早めなのではないかと思う。
人間が他人に向けて言葉を発する際、うまく言えないがアナウンスとトークの時ってちょっと違う話し方になっていると思う。アナウンスは相手に「正確に」伝えることが肝なので、適切な速度と流暢な滑舌が求められる。素人の感覚で恐縮なのだが、演技というものも大げさな緩急や強弱の装飾はつけつつも、しかし基本的には「正確に言葉を発する」という点ではアナウンスに準じている行為なのでは、と思う。一方でトークってちょっと違って、そこまで高い正確さが求められているわけではないので、もっと自由なテンポで話す。台本で一字一句まで指定されるものでなかったりするだろうし、語り手自身の脳の動きがもっとダイレクトに乗ってくる。だからそこの出力との齟齬で崩れた話し方になったりするし、そもそも失敗して噛んだりもする。


ところで、アイドルマスターシンデレラガールズというモバゲーのゲームの内でも、時々アイドル(キャラクター)がラジオをするという体の音声の配信があった。これはカッチリとしたタイプの語りで、路線としては「アナウンス寄り」のものであった。キャラクター同士の掛け合いが存在するものもあるが、そんなに同時にガチャガチャ話したりはしないので、全員の声がしっかりと聞き取れる。仕様としては一緒にゲーム内で配信していた、オーソドックスなボイスドラマと大体同じものである。
ではこのラジオ作品が不自然かと言うと、キャラクターの演技としてはそういうものが普通であるから特に聞いていて違和感があるわけではない。
むしろ、ガルラジがキャラクターものなのにトークっぽい話し方をしているのがおかしいのだ。自然すぎる話し方なのがキャラクターを演じるボイスドラマとしては異色なのだ。


では、ガルラジがこのトークっぽいドラマをどうやって実現しているかというと……それがよくわからない。実際、キャラクターラジオの後ろにくっついている声優ラジオパートを聞いてみると台本が存在するらしい(富士川第一回目など参照)その一方でかなり自由なアドリブが許されていたり、噛んでもそのまま採用されていたりするようである。
集中して聞いてみるとたしかにここは台本っぽい語りだなという箇所もあって、キャラクター同士の会話がきっちりと構築されているなあと感じたりもする。ただ逆に言うと「キャラクターボイスで話しているだけのフリートーク」というわけでもないのに、なぜラジオっぽく聞こえるのだろうか。そういうのって「じゃあ自然なトークっぽくお願いしまーす」みたいなディレクションで実現できるのか? という気がしてしまう。しかし事実として我々のもとにはキャラクターのラジオとしか言えない代物が届けられているので、詳細は自分にはよくわからないが実際可能なのだろう。
声優の凄さかもしれないし、そこまでオーディオドラマの可否を演者に委ねてしまえるのもそれはそれで凄い気がする。何にせよ、ガルラジというコンテンツは非常に独自色の強い声優さんの演技が披露される場なのである。

少女たちの青春ストーリーである『ガルラジ』

「ガールズ ラジオ デイズ」(ガルラジ)は、地方で暮らすごく普通の女の子たちが、
ふとしたきっかけでラジオ番組を自主運営することになる——。
そんな彼女たちの日常と番組制作に悪戦苦闘する姿を描いた青春物語です。
(公式ページイントロダクションより)

なんだかんだで少女のアイデンティティ確立のお話って人気だと思う。放課後のプレアデスとか、ローリング☆ガールズとか、フリップフラッパーズとか、ひなろじ~from Luck & Logic~とか。ここらへんの作品に関しては日本人1億人ぐらいはそろそろ見た頃かなと思うし本題でないので割愛するが、ガルラジもそうしたものに通じるテーマを扱っている……のではないかと思う。まだ動き出したばかりなのではっきりとは言えない。だが、現時点(第二回)で既にお話が動き出しているチームがいる。チーム徳光「みるみるはっぴー×2れいでぃお」である。
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他が3人チームにも関わらず、徳光だけ一人チームなのがまず目を引く。それぞれのチームがそれぞれの個性を発揮しているガルラジではあるが、チーム徳光はこの一点において頭一つ抜けて異質なチームである。
そもそも、他のチームが和気あいあいと郷土愛や地元の良いところを語っているところで「この町がキライ」というカミソリっぷりが異常事態である。あまりにも思春期中学生すぎる!私も北陸はかつて馴染みのある土地なのでよくわかる
そんなチーム徳光の何が現状いいかというと、その物語性の高さである。他のラジオが3人での掛け合いの面白さを一つの武器にしているところ、一方こちらでは手取川海瑠が孤軍奮闘するストーリーが楽しめる。一人だけなので音声のみの媒体でもキャラクターの把握が群を抜いてしやすいし、語りに集中もしやすいということも、触れたばかりの私にはありがたくもあった。
『みるみる』というキャラクターと周辺設定を作り・演じる手取川海瑠という少女は、一体どんな人間なのか。ラジオ放送の中で得られる限られた情報の中でキャラクターの輪郭が少しずつ見えてくる面白さ、というのはガルラジ全体の魅力でもあるとは思うが、その感覚が最もわかりやすく掴めるのがチーム徳光であると思う。
2話で動かしてきたことといい、唯一1人のチームというフックで徳光に興味をもたせ、まんまとその虜にするのが運営の策略だったのでは? とすら思う。そして策略にハマったのが私。今ここでべらべらとしゃべるのは皆様の楽しみを奪い取ってしまうので詳しいことは語れないが、ガルラジに触れてみた皆様、とりあえず徳光は、聞いてみるといいですよ……。

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あと、ストーリー性で個人的に注目しているのが玉笹彩美。アイドルになりたい願望を持ちつつ、迷走と言って差し支えないアプローチを繰り返している彼女だが、しかしラジオの各回では姉妹とのやり取りを経て着実に「最も自分が輝く姿」に向かって進んでいる。一体最終的に彼女はどんなアイドルになるのか、それともなれないのか。目が離せない。

現実拡張コンテンツである『ガルラジ』

さて、こうした物語が先ほどの「ラジオっぽさ」の中で繰り広げられるのがまたうまく噛み合っている。リアリティを感じさせる媒体でキャラクターと直面する我々は、どうしてもそこに人間の質量めいたものも感じ取ってしまうのである。ガルラジの面白さ・物語に夢中になった時に、きっとリスナーは錯覚する、スピーカーの向こうには実際に手取川海瑠や、その他のパーソナリティーが実在しているのではないか? と。私はした。


本作は舞台が日本の実在する土地なので、登場人物の周辺も我々の住む現実世界に即している。一方で登場人物たちはキャラクターなので、実際の我々の住む日本には存在していないのも頭では理解できる。
限りなくこの日本に近くて、限りなく人間っぽいキャラクターが存在している世界。『ガルラジ』の繰り広げられている世界のことを言い表そうとすると、最近影響を受けまくった某アプリゲームの言葉を借りるようになってしまうのだが――それは異世界と呼称するのが個人的には一番しっくりくると思う。そう、『ガルラジ』って異世界で放送しているラジオが何故か我々の世界で受信できてしまっているのだと私は思っているのだ。

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アプリ上ではTwitterでもない独自のつぶやきタイムラインを眺めて、我々の世界とは異なる場所の、しかし同じような時間の流れに共感したりもできる。


スピーカーの向こうにいる彼女たちに質量を感じてしまうのは、ラジオとしてリアリティを感じるからというだけではなく、そもそもそのラジオという媒体が肝でもあるのだと思う。
ラジオのパーソナリティーとリスナーの関係というのは、非常に限定的な繋がりである。我々リスナーがパーソナリティーと同じ時間に共有できるものは「声」しかない。だからこそ、ラジオ上で話すガルラジのキャラクターたちのアプローチは現実の人間のそれと変わらないとも言えるのだ。
現状の技術で、仮想存在を現実に再現し、更にそれを一般的な娯楽として提供するのってまだまだ難しいと思う。どうしたって外見のディティールは現実世界のそれには及ばないし、人間同士のような会話もまだできないだろうし、恐らくどこかで不自然の認定を下し、現実と仮想との間に線引きをしてしまう。ではどうすればそのリアリティを出せるかと言うと、再現できる程度の限定的な事柄で行えばいいというのは一つのアンサーだと思っている。例えば、『拡張少女系トライナリー』というアプリサービスでは、端末内の人物とプレイヤーは基本的にLINEのようなチャットをして交流していた。実際に会話をすることができなくとも、そうした文章のやり取りに限定するならば「質感」の実現が可能なのである。そうして私達は実際チャットをしたりラジオを聞いたりする時に、自然とその先に人間が存在することを補完し認識するように、『ガルラジ』の向こう側にも「人間」の存在をどこか感じてしまうのである。

『ガルラジ』を聞くなら”今”である

『ガルラジ』の情勢は刻一刻と変化している。こうしている間にも次のラジオが配信され、彼女たちの物語はどんどん進んでいってしまう。アプリではつぶやきも定期的に更新され、お正月だったり成人式の話題だったりと、彼女たちと同じ時間を過ごす感触が得られる。そう、ガルラジの持つリアルタイム性を存分に楽しんでその活動を追っていくには、今この瞬間からガルラジの世界にアクセスしなくては間に合わないのである。

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内部の状況はわからないものの、こういう崖っぷちめいたつぶやきもあるとちょっと危機感を覚えてしまう。ガルラジというコンテンツがどういう物語を紡いで結末を迎えるのか、いちリスナーである自分にはわからない。が、できることならこれらチームのことを少しでも長く観測し、この世界に浸っていたいなと思う。そしてこの面白さを様々な人と共有してみたいのが今の自分の気持ちだ。
『ガールズ ラジオ デイズ』という奇妙なコンテンツに、あなたも飲み込まれてみないか?

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