日陰の小道

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【エビスト】二次元コンテンツの極限みたいなライブと、”王の中の王”を見てしまった (2020/02/22 8beatStory♪ 2_wEi 2nd LIVE Final Past 2 Present, Stand for the Future. 感想ほか)

8beatStory♪(以下エビスト)、最近密かにストーリーを追う程度なのだが触れていたアイドルアプリリズムゲームであり、そのライブに参加してきた。
このブログでエビストに関して記すのは初なので、コンテンツに触れていった流れや所感なんかもついでにここで残しておこうと思う。(そんなにしないと思うけど流れでちょっとネタバレを避けられないかも)
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タイトル画面の2_wEi。悪そうな顔。

エビストに触れて

①2_wEiライブ初参戦

実を言うとブログでは特に触れていなかったが、エビストのライブに参加したのはこれが初めてではない。某コンテンツとイベ被りをしているという妙なところから改めてその存在を認識したエビストなのだが、それなりにコンテンツに狂っているオタクの方をもともと認識していたのでじゃあまあ試しに触れてみようかなということで2_wEi 1st Albam『Throne of Despair』を(前日に)購入し、昨年神田で開かれた2_wEi 2nd LIVEの夜の部に当日券で参加した。
『Throne of Despair』の感想としては、普段あまり聞かないジャンルだな~というのがまずあった。あまり聞かないので詳しくないのだが、ラップとシンセが投入された疾走感・攻撃的なメタルサウンドというとジャンルとしてはニューメタルとかエモとかそういうような感じになるのだろうか。曲としての「歩き方」みたいなものを身につけるのはもうちょっと後なのだが、その時の印象としては「ライバルユニットらしい強そうなカラーで統一されていて良いな」といった感じだったような気がする。
さてそうして参加したライブ、これが劇場型とでも言うべき演出のステージで、全く演者としての顔が登場しないライブだったのだ。終始MCまでもキャラクターとして演じる強固なフィクション演出。会場アナウンスも電子音混じりで演出の一貫、後は強面の警備員さんが登場する(会場がめちゃ盛り上がっててビビった)ところから全てがアンドロイドユニット『2_wEi』のライブとして徹底されていた。当然パフォーマンスも素晴らしく「アツいライブだったね~」と気持ちよく会場を後にした。そう、その時は「いいライブ」その程度の感想だったのだ。なぜかというとこの時のわたしは本当に何も理解っておらず、会場スクリーンでのストーリーパートでのアルミさんのフワフワ感に面食らう始末。こいつ本当になんもわかってなかったな……。
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ギャップがすごい。

②8/pLanet!!との遭遇

兎にも角にもいいライブだったし、どちらが先かはよく覚えていないのだがこの頃アプリをインストールした。ここで本来のコンテンツの主人公である8/pLanet!!(以下ハニプラ)と出会うことになる。彼女たちは行ってみればかなり王道なアイドルソング中心で、わたしにとってのアイドルイメージから言っても親しみやすいものでもあった。完全に余談だが、アプリの主人公たる「先生」がめちゃくちゃ目立っており「壁が間違えて喋っちゃった!」みたいな扱いと化してきていたリステップ先生と比較してあまりにも真っ当な主人公をやれていて涙を流していた。
さて、肝心のシナリオはライブのクリア回数に伴って開放される仕様。地味に結構苦労するのだが、最初レベルをある程度上げてその後はひたすらEasyで回数を稼いでいた。この頃にベストアルバムの『8』やミニアルバムの『Toybox』シリーズなんかを聞いてハニプラの曲にも触れていた。『君はレモネード』『Shiny』『Sugar Sugar Bee』といったキュートでポップな曲がかなり好みで、しばらくこのあたりを聞きまくっていた時期がある。
シナリオはというと、初期は設定の開示に徹しているな程度の印象だったのだけれど、3章のあたりからぐんぐん面白くなっていった。聞くところによると初期シナリオからどこかのタイミングで見直しが入り、当時何章かのものが序盤に圧縮されたりといったことがあったらしい。3〜7章あたりの主人公たる「先生」と生徒であるハニプラのメンバーが交流し、絆を深めながら個々の悩みを解決していくストーリーは、そこまで派手さはないもののとても沁みるものであった。その中でも「これからもよろしく」ソングであるところの『BLUE MOON』が軸となった7章は特に良くて、ユニットの物語であるが故のメンバー間の微妙な距離が活かされた、非常に感動的なお話であった。
ここで驚いたのが、エビストのストーリーはボリューム的にはそれほどないし、演出面でも結構簡素だったこと。Live2Dで動くキャラクターたちは可愛らしいデザインと動きで愛着が湧きやすいが、一枚絵ドーンみたいな方式で盛り上げることはしないし、シナリオも地の文がほぼ存在せずに会話形式に徹しているシンプルなもの。アプリの動作が軽いのも相まってかなりサクサク読めてしまうのだが、しかし内容としては濃く、8人というそこそこの人数のユニットを上手く動かしているなという印象があった。あと章をクリアして貰えるSRがストーリー内容を反映したもので非常にドラマチックな絵柄なのが嬉しい。

そんなエビストだが、8章以降からますます牙を剥いてくる。もともと「完成度が高いアンドロイドの音楽」に対して「心のこもった人間の音楽を守りたい」とライブバトルで戦うのがハニプラというグループの行動原理だったのだが、これだけを見ると人間と機械という両者に対してあまりにも「ベタ」な話だなぁという印象もあった。シナリオ班もそのあたりは織り込み済みだったようで、このあたりから「心を持ったアンドロイド」をライバルとして明確に登場させ、作品内外に揺さぶりをかけてくる。もともとハニプラの中にも素性を隠して参加しているアンドロイドの『メイ』が存在したので、そこに関しては驚きではないし、またこうしたテーマに置いてこの展開がくるのもけして珍しいことでもないだろう。
しかし、ここで登場した『空乃かなで』というアンドロイドの対戦キャラクターとの顛末を、実に丁寧な筆致でドラマチックに描かれてしまうとこれはもう参ってしまう。このあたりから、「人間の音楽のために戦おう」という素朴な姿勢は段々と雲行きが怪しくなってゆき、11・12章でいよいよセンターの『桜木ひなた』がクローズアップされた話では理想としての「音楽を楽しむ」ことと現実の「音楽で相手を打ち負かす」ギャップにひなたは追い詰められてしまう。このエピソードがこれまた意地が悪いほど出来が良く、善良なキャラクターしか出てこないし彼女たちは全員その場で言えば悪くない選択をしている……と思えるにも関わらずに絡め取られていくように事態はどんどんと悪い方向へ向かっていってしまう。ここの前半で描かれるのはまさに「緻密に構築された素晴らしき悲劇」とでも言うべきシナリオで、これまた参ってしまった。これを受けた後半も実に良くて、ほんの少しの狂いから噛み合わなくなってしまった歯車を、一つ一つはめ直すように過去を振り返り、これまでの歩みを何よりの説得力として改めてチームとしての姿を取り戻す。この頃になるとシナリオを読んでいるだけでも完全に『8/pLanet!!』というチームが……好き!! という顔つきになってしまった。仕方がないと思う。
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そうしてハニプラのことを知っていきながら、2020年1月26日のリクエストライブに参加してきた。これは昨年に開催予定だったものの不運にも大型の台風と重なってしまい、この日に改めて開催となったライブ。延期になっていなければ私はここにいなかったであろう……と思うと不思議でもある。イベ被りから本格的に興味を持つ、というような妙な切り口だったので当然なのだが、その被りによって同日開催の5thの方は見られなくて残念……前述のストーリーを踏まえたライブが披露されたとなると、さぞかし感動的だったのだろうと想像できる。
リクエストライブは投票にて決まった曲を順番に披露するもので、演出としてはシンプルだったがベスト10番組を見ているかのような雰囲気はそれはそれでテンションが上がる。先に見た2_wEiは完全に「キャラクターのライブ」だったのだが、こちらは普通にキャスト陣が和気あいあいとMCをしており、オーソドックスな声優二次元ライブという感じであった。個人的に印象的だったのが「キャストの変更で担当となった自分にこの曲が務まるか緊張した」といったようなお話が結構出ていたこと。私としてはハニプラのライブに参加するのは初めてだったのだけれど、本当にここまでいろんな歩みがあったのだなあと感じ、何も知らないにも関わらずなんだか勝手に胸が熱くなってしまった。人に歴史あり、コンテンツに歴史あり。このライブでは大好きな『Sugar Sugar Bee』を聞けたりして嬉しかったな。振り付けがあまりにも可愛らしくて、かわいい~~~~!!となってしまった(吉井彩実さんからバトンを受け継いだ天野聡美さんがちょうどここでキャスト変更を踏まえての気持ちを語っていたのが印象的だった)
このライブで1位を飾ったのは『サクラ涙』というバラード。切なくメロディアスな曲調と、8人揃うステージに文脈とかまだ何もわからないのだけれどちょっと泣いてしまった。5thの方でも歌われたらしい。
ちなみに席はかなり後ろの方で、リクエストの衣装が色分けもそこまでなかったので正直演者さんの判別がほぼつかなかったのは大きな反省点だった。次行く前に円盤とかで予習しておこうかと思う、反省を生かしてちゃんとプレミアムのほうを握ったので……。

③2_wEiのシナリオを読む

ハニプラのストーリーを頑張って開放しているうちに、気がつくとサイドストーリー用のポイントがまあまあ溜まっていた。これはライブクリアで溜まっていくもので、こちらもストーリーを読むためには回数をこなさないといけないためちょっと大変。後から知ったのだがコインで1.5倍チケットとか買えるらしい。便利だぜ。
ハニプラ後半シナリオでちょっと2_wEiは出てきたのだけれど、基本的には一応ヒール役という感じで、流石にその全貌はあまりわからなかった。今回ストーリーを読んでようやくその姿を目の当たりにするぜ……! と思いつつ意気込んで読んだシナリオ、本当に超面白い。コレ本当に4章しか読んでないの? って感じでボリューム的には大したことないはずなのに、こっちのユニットにもこれまた完全にやられてしまった。 
初っ端から生まれてきた意味を否定されるかのようなハードな設定。大きな失意と世界への失望、そして2_wEiを満たしてゆく絶望。研究中のアンドロイド故か、世界との触れ合い方があまりにも不器用な彼女たちは更に過ちを繰り返してしまうわけなのだが、そんな中で小さな小さな希望を必死に掴み、自暴自棄の心中めいた世界を破壊するという衝動から脱し、力強く絶望を歌うユニットとしてこの地に立つのだ。いや過去を受け入れて立ち上がるの超カッコよくないですか? わたしは過去に惹かれる人間なので……。
思った以上にシナリオがブッ刺さり、深夜に軽率に読んだせいでその日の睡眠時間をいつも以上に大幅に削った私だったのだが、ここで改めて以前入手した『Throne of Despair』を聞いてみる。するとどうだろうか、今までなんとなしに聞いてきた歌詞が、2_wEiの歌う絶望の何たるかが、その「意味」が完全に「理解」るではないか! いや今更かよ!! という話ではあるのだが……。
ここからは単純なもので、完全に2_wEi大好きオタクと化して「うお~~~~~Lost in Dataなんだよな……」「何故か愛しくて憎らしい君を許せないのか……」「落ちて堕ちて~地獄へ堕ちて~ってフレーズが好きすぎる、"神"を倒してくれ……」「閉ざしたフリしても恋い焦がれてたMelodyなんて愛おしいんだろう;;」みたいに(?)歌詞のあらゆるフレーズが刺さりまくる期間が続いてしまった。シナリオと楽曲の調和があるコンテンツ、とにかく強い。
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これ、私です。

それから、完全にウキウキしながらあのライブの日聞いたアルバムの発売を今か今かと心待ちにしていたのだが「まあ秋葉原に行ったらとりあえず買えるだろう」みたいな顔していたせいで見事に難民と化してしまった。お渡し会のぶんしか用意してないとは……。やっぱりMotherに逆らったからあんまり流通していないのかな……。一週間ぐらい遅れて無事にAmazonにて入手、ありがとうホリプロ
セカンドアルバムである『Return Zer0;』、本当に開放感に満ちていて驚いてしまった。彼女たちが見上げた青空を感じながら涙を流してしまった。
ということで完全に気持ちも温まっていざ参加したライブの話に移行する。前置きが無駄に長い。

2_wEi 2nd LIVE Final の話

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セットリスト

(Prologue -F**K YOU ALL-)

  1. MIЯROR
  2. Jailbreak
  3. Numb
  4. LOVE HATE
  5. Green Cat.
  6. basement
  7. Bite a bit
  8. Lost in data
  9. Pendulum
  10. MMIX
  11. Homeache
  12. Be alive
  13. Silent World(B.A.C)
  14. Pious Bullets(B.A.C)
  15. UNPLUG
  16. Heroic
  17. REGALIA
  18. Heart 2 Heart
  19. Pain - pain

アンコール

  1. Despair
  2. Inheaven
  3. Start the War

感想

圧巻の全曲披露、乱入のB.A.Cも合わせてなんと22曲。このイベント自粛のファッキンな流れの中でアイデンティティたる2が並んだこの日に無事敢行でき本当に良かったなと思う。
今回は生バンド付きということで本当にここも楽しみだったのだが、期待以上の大迫力のサウンドを聞かせてくれて本当に最高だった。半分ぐらいちゃんとステージ見ずに頭を振ったり体を振ったりしてしまった。
前回も結構セカンド収録の曲をやっているのだが、最初の新曲『MIЯROR』から本当にくっきりと「今」の彼女たちの姿が提示された感じがある。お約束のレーザー演出も健在で、柱が組まれた無骨なステージの前で真っ赤な檻を思わせるような『Jailbreak』には今回も興奮した。疾走感のある『Numb』も最高、このあたりから楽しすぎてあんまり詳しいこと覚えてないな(ありがち)
アルミお姉さまの力強いMCをはさみつつ、前回披露されなかった『LOVE HATE』では思わずガッツポーズ。これも最高だったが続いての『Green Cat.』では無事に蝶になって空を飛んでしまったし、次は『basement』……これ完全にアルバムの流れじゃん!『Bite a bit』は生だとイントロの重量感が全然違って気がつくのが遅れるぐらいだった。本当に可愛くてかっこいい最強ソングなのだが、「いいですかぁ?」がものすごく力強くてあ~これがライブのミンちゃんなんだ~と完全に嬉しくなってしまう。「聞こえますかぁ?」はちょっと落ち着いて挑発的だったのも最高。ちなみにこれ以降MCでも味をしめて感があり「いいですかぁ?」が頻発してたのめちゃくちゃ笑顔になっちゃった……(いいよー!って心のなかで言っちゃう)


ここで再びMC。ほわほわモードになったアルミお姉ちゃんが登場してびっくりしてしまった、このパターンもあるのか。「人間の女の子って可愛いんだね~」などと言ってミンちゃんが嫉妬していた。黄色い歓声が印象的。このあたりで「まだ半分も行ってない」「5曲連続でやる」みたいな話が確か入って、軽く戦慄していた。持つのか? 俺の体力……。
『Lost in data』が流れた時にはガッツポーズして体力とか全部どうでもよくなってしまったが。いや名曲すぎる……。『Pendulum』『MMIX』『Homeache』『Be alive』と1st、2nd織り交ぜての披露。こうして聞くと当然発表時期というのは別にあるだろうけれど、それなりに路線変更した感のある楽曲群もうまく混ざり合うものだなと思う。過去も今もひっくるめた2_wEiの姿みたいなものが垣間見えたかもしれない。

B.A.C乱入

スッと歌い終わった2人が下がり、続いてバックバンドの面々も下がっていくと「いよいよ、来るのか?」という緊張感がにわかに高まり、そして満を持してB.A.Cが登場。ワイルドなファッションの2_wEiとは打って変わって聖職者めいた荘厳な衣装に身を包んだ3人。ガラリと変わった空気に息を呑む。
披露された『Silent World』での世界観の構築も圧巻。バンドサウンドで生音の強さをバンバン打ち出していた2_wEiと打ち込みサウンドのB.A.Cと違いがハッキリと出ているのも強烈だ。更にその違いはユニットのスタンスの違いの表現でもあるのが面白い。B.A.C、シナリオを読んだ時にも思ったけれど改めて2_wEiと相反する思想なんだよな。方や個人主義を貫き、過去があるからこそ今があると説き、一人ひとりが立ち上がることこそがあるべき世界のあり方だという毅然としたスタンスである2_wEi。そして方や全体主義的である思想を持ち、優れたものに付き従うことこそが唯一の生存の道であり幸福であると説き、我々に優しく寄り添おうとするB.A.C。曲の強さも相まって完全にもうひとりのボスキャラが登場した感があり、これはまさしく王VS王の戦争である。このあたり大体ゴジラ キング・オブ・モンスターズを見ている時みたいなテンションでめちゃくちゃ興奮してしまった。


B.A.Cの印象は実際強烈だった。「個性的な3人が集まった魅力的なチーム」などといえば聞こえはいいが、実際は「3通りのどれか絶対人間に刺さるだろという籠絡の技」がある新興宗教の勧誘みたいなものでマジで怖い。実際ボクは思想的にバッチバチの2_wEiのシンパと化していたのでかなり抗うつもりでいたのだが……。
まずアモル様は、非常に清廉なお方である。この世の不平等を憂い、それを救ってくださると言うのだ。我々下々のものの苦しみもよく理解してくださって、ソシャゲのサービスの終了がどれほど苦しいものかまで言及してくださる。オタクをやっているものであれば好きなコンテンツが潰えた経験の1つや2つぐらい当然あるものである。あまつさえ我々のことを同志と呼んでくださり、救済してくださると言うのだからそれはそれは素晴らしい理想を掲げられている指導者であった。
クゥエル様は非常に慈しみ深い方で、一見すると高圧的ながらもその中に非常に愛を感じることができるお方である。言われるとおりにそっと胸に手を当てて目を閉じてみると、説かれるままに何が自身にとっての幸福かということが感覚で理解できるのである。問いかけるように我々を幸福へと導いてくださる姿は聖母のようであった。
ベルたそは天真爛漫で非常に可愛らしい子である。初めて会った我々をすぐに友達と呼ぶ無邪気な姿に張り詰めるような緊張感がふっと緩み、会場でも元気よく返事をする人間が次々に現れていた。こんなに無垢な子の好意を裏切るような背信行為はあってはならないであろうし、もしそうであるならば言われるままに壊されてしまったとしても文句は言えないであろう。
……と、このように(?)実力派声優陣のバッチバチに決まった演技と、そして基本的に演者がなにか発すると肯定してしまうライブの熱狂の中での反射的反応も相まって完全にかなり心が揺らいでしまった。そしてそのライブの熱狂を更に活かす一手、それはさらなる曲の披露。「もう一曲だけ披露する」との言葉とともに始まった『Pious Bullets』は先程以上に攻撃的なサウンドで、完全に説得力を持ってその実力を我々に知らしめるステージだった。「またB.A.Cの音楽が聞きたくなる」という確信めいた自信の言葉に偽りなし。拳銃のリロード音とともに火花が上がる演出まで飛んできてもう絶句してしまう。これにて2_wEiに、そしてハニプラに宣戦布告をするかのような戦いの幕は完全に切って落とされたのである。もう完全に飲み込まれてしまったわけだが、こんなに強烈な体験型アトラクション存在していいのか??? ヤバ……

王の帰還

去りゆくB.A.Cと入れ替わりで再び登場する2_wEi。すっかりB.A.Cの信徒に片足を突っ込んでしまった背信による果てしない罪の意識を感じる……。なにかB.A.Cにも触れるかなと思いきや言葉は必要ないとばかりに繰り出される『UNPLUG』のパワフルな音。最初からハイボルテージなバンドサウンドは人の持つ熱量を改めて思い起こさせる。続く『Heroic』もあまりにも力強く、そして我々に「個」として生きることの強さを奮い立たせてくれるようであった。いやギターかっこよすぎるな。
B.A.Cやアモル様が「平等な指導者」であるならば、2_wEiや虎牙アルミは「群れの王」とでも言うべき気高さがあり、いつだって我々の先に存在するのである。2_wEiは我々に優しく寄り添ってくれはしない。しかし「2_wEiの音楽はお前たちの何かになる」と我々に立ち向かう力を与えてくれる導き手なのだ。
熱狂の中曲が終わり、そして演奏陣が続いておもむろに音色を奏で出す。叙情的なそのサウンドは次第に聞き覚えのあるイントロへと繋がり、いよいよ本日のハイライトと言っても過言ではない『REGALIA』が顕現する。シンガーとしての暴力的なまでのカリスマ力にもはやリズムに乗ることも出来ず、ただただ棒立ちで圧倒されてしまった。そこにはまさしく「王の中の王」の姿が神々しく君臨していたのだ。
最強ソング『Heart 2 Heart』では「人間からもらった曲」とのMCが入る。後で知ったのだがこれはnanoからの詞の提供があった曲であり、そしてそのつながりで対バンをやったこともあったらしい。そんな風に現実のライブがゲーム内のストーリーや楽曲やらにガンガン繋がっていくの本当にエキサイティングですね……。これのCメロで泣かんオタクおる?
ラストは1stアルバム最後の曲であり、そして『Return Zer0;』というタイトルにも繋がりを感じる『Pain - pain』で本編を締める。このあたりでも泣きながらぶち上がってしまった。悲痛な叫びでもあり確かな愛情でもあるみたいな歌詞がとにかくヤバすぎる。オーオーオーってライブで言う曲は名曲なんだよな……。

熱狂冷めやらぬままアンコール。「まだやってない曲がある」「この曲をやるのも最後になるかもしれない、そういうつもりで聞けってことだ」といよいよ原点である『Despair』を披露。いやお前のことを待ってた!! この世界を破壊し尽くしてやろうという衝動の一曲が今この場では全く違う曲へと変貌しているの本当に音楽というものがある種フラットであるからこそ出来る表現だし、「音楽」ということに本当に真摯に向き合ってるコンテンツだと思う。
まだやってない曲があるだろうとばかりに、続いて『Inheaven』いやお前のことをずっと待ってた!!! シンセがよく効いているこの曲は2nd収録の中では1st的なサウンドに近い一曲だと思うのだが、暗闇に向かっていく1stの空気感と比べるとなんて開放的で希望に満ちた曲なのだろうか。完全に最高になってずっとぴょんぴょんしてた。
ラストは『Start the War』お前のことを今日は聞きに来たんやぞ!!! こんなに攻撃的なタイトルで明るいサウンドなことに最初は非常に驚いたけれど、ああ今こうして2_wEiの門出とでも言うべきこの瞬間に聞くとなんてしっくりくるのだろうか。今回のライブではコンテンツとして新たな発表も何もなかったのだが、「未来は何もわからない」とそれすらもメッセージ性に転化することの徹底っぷりよ。「It's time to Start the War」と全員が声を上げ歌うあの瞬間本当に会場がひとつとなっていた感覚がある。ライブ特有の熱狂が最高に高まったあの瞬間、我々は「個」でありながら同時に大きな「群れ」の一員であった。我々一人一人の姿を失わないまま、それぞれがそれぞれにとっての宣戦布告をするその一体感は、まさにB.A.Cの掲げる思想に対する2_wEiからのアンサーでもあった。自由にはこんなにもパワーがあるのだ。
そうしてわたしたちは音楽の中で戦争という名の人生をまた改めて始めたのである。あんなに楽しくて、輝いていて、そしてカッコよかったステージをわたしはこれからずっと忘れないだろう。あの瞬間たまたま手に降りてきただけのなんの変哲もないグリーンのテープは、大切な思い出の品となって引き出しの中に仕舞ってある。


最後に、「アルミとミントは帰ってしまったんですが」と野村麻衣子さんと森下来奈さんがにこやかに登場。続いて田中美海さん、楠木ともりさん、菅沼千紗さんも登場。お三方も非常に愛嬌のある方で、役柄とは大違いでほんわかした。最後に2_wEiのお二人とバンドメンバーの皆さんで「ありがとうございました」との挨拶。こちらこそ、圧巻のパフォーマンスと最高のステージをどうもありがとうございました。エビスト、もしかしてすごいコンテンツ?
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Throne of Despair

Throne of Despair

  • アーティスト:2_wEi
  • 発売日: 2018/11/07
  • メディア: CD
2_wEi「Return Zer0;(リターンゼロ)」

2_wEi「Return Zer0;(リターンゼロ)」

  • アーティスト:2_wEi
  • メディア: CD