久々に好き勝手に日常アニメを語っていくこの記事、今回はわりと最近の2017年春に放送した『フレームアームズ・ガール』を語っていきたい。ぱっと見であざとい美少女ものと侮ることなかれ、ロボットという存在を通じて人のあり方を浮き彫りにしたSFチックな面白さもあるのだ。もちろんシンプルにキャッキャウフフな日常アニメとしても安定感があるのだが。ということで、まずは簡単な内容の紹介を。
フレームアームズ・ガールはプラモデルが元の商品。現実と同様、人間とのこのサイズ差も魅力の一つだ。
- 小さなロボット少女との交流と愉快な毎日
- 日常とバトルの中で描かれた「"感情"の物語」
- ロボットと人間、違うところと違わないところ
- 伝播してゆく感情と、変わってゆく世界
- プラモデルのアニメとしてのフレームアームズガール
- 好きなエピソード 第8話 『決起集会 / 秋に呼ばれて…』
- 超勝手に似たものを感じる音楽アルバム紹介『Here's Where The Strings Come In / Superchunk』
- ということで
小さなロボット少女との交流と愉快な毎日
ラブラブな両親は仕事の都合で遠方に出ており、平凡ながらものんびりとした一人暮らしライフを満喫していた女子高生、『源内あお』。
そんな彼女のもとに突然小型の自立少女ロボット"フレームアームズ・ガール(FAガール)"の『轟雷』が届く。
実はこの轟雷、同型機の中で唯一起動に成功した個体であり、彼女との戦闘データを記録すべく個性豊かなFAガール達があおの家に押しかけてくることとなる。そしてそんな中で一般女子高生のあおとのふれあいの中で、生まれたての轟雷は感情というものを知っていくのであった……。
といった感じで進んでゆくアニメ『フレームアームズ・ガール』、基本的にはあおとFAガールたちの日々をコメディタッチに描く、ゆるふわ日常モノアニメだ。常識人枠でツンデレなスティレット、天才肌なワガママっ子バーゼラルド、ドSで鬼畜なマテリア姉妹、直情型ニンジャの迅雷、分析はお手の物な無表情系アーキテクト、バトル大好き戦闘狂のフレズヴェルク……とキャラクターも実に個性的な面々が集まる。
作品では他の日常系と同じように、四季の描写も取り入れており、夏祭り・紅葉・鍋・クリスマス……というふうに移り変わる四季の中で過ごす彼女らの姿が描かれる。
こうした一年という時間の経過の中で、FAガールたちに振り回されながらも楽しげな表情を見せるあおと、バトルのためといいつつもそんなイベントをまんざらでもなく満喫するFAガールたち。この奇妙な同居生活がなんとも愛おしい。
各エピソードは2話構成。前述のFAガールズたちはストーリーが進むごとに順番に登場し、その個性で作品に様々なカラーを加えていた。作中では時にレースをしてみたり、時に夢の話だったり、時にはFAガールの生まれ故郷であるファクトリーアドバンス社の社内解説(というていのプラモ製造解説)をしてみたりと展開もバリエーションに富んだものが繰り出され、退屈せずに視聴することができる。
更にこうした展開に加え、轟雷のデータを収集するためのバトルシーンが各話に挟まれるのも良きスパイスになっていた。
教育番組みたいなノリでプラモ製造の解説をしていたのはかなりやりたい放題感があった……。
このように日常モノとしての側面が強い『フレームアームズ・ガール』だが、このアニメの魅力はそうした刹那的なものだけではない。これら日常パートとバトルパートの積み重ねから、このアニメのテーマでもある「"感情"の物語」を見事に描ききってくれていたというのはこのアニメを語るにおいて外せない点だ。
日常とバトルの中で描かれた「"感情"の物語」
アニメの13話のストーリーの中で、キャラクターの成長の軌跡が日常パートとバトルパート、それぞれの相乗効果で上手く組み上がっていたと思う。日々のあれこれに対するあおの瑞々しい反応や、またバトルを通じてのFAガールたちとのふれあいや生まれた絆を通して、轟雷は少しずつ感情というものを理解してゆく。少しずつプラモデルの腕が上がっていったあおや、バトルにおいて仲間とのコンビネーションを見事に披露する轟雷の姿などには着実な進歩を感じることができた。
こうして轟雷が知った感情は「楽しい」だったり「懐かしい」だったりとプラスのものあれば、「怒り」や「不安」といったマイナスのものだったりもする。感情というものは良いも悪いも表裏一体のもの、といったようなことは作中でマテリア姉妹も語っていたが、ブレのない正確無比さこそが美徳である機械という存在にとって、不安定な感情というものは必要なものなのだろうか? という疑問もこのアニメは問いかけてくる。
この決着として用いられたのが終盤のフレズヴェルクとの対決だ。FAガールに余計な感情は不必要、という思想の元で育成されてきたフレズヴェルクは、最終局面で無理な調整によりナノマシンが暴走し、ただ勝利を求める戦闘マシーンと化してしまう。これに対して仲間たちの装備と思いを胸に立ち向かう轟雷は対照的な存在であり、この轟雷VSフレズヴェルクのバトルはロボットにおける感情の是非という価値観の対立という構図であった。中盤から続いたフレズとの因縁の対決という展開に、テーマの決着を絡めてくる構成が美しい。
皆の期待と武装を背負い、轟雷はフレズに対峙する。合わさった想いの力はけして無意味ではないのだ。
終盤で揺さぶりをかけてくる展開は、そこに至るまでの日常パートが晴れやかで楽しげなものだったからこそより活きるものでもある。無意味なようでもけしてそうではない、そんな日々の素晴らしさが終盤で改めて映える構成であった。
様々な経験を積み重ねてきた轟雷。こうした経験を無意味と一蹴するフレズにあおは「意味なくなんてない」と反論する。EDにおいて毎話変化するパートをここで活用してくるのが、積み上げた日々の重さを感じさせる演出でうまい。
ロボットと人間、違うところと違わないところ
感情を持ったロボットというものは、人にとってどのような存在なのだろうか。アニメでは、あおとFAガールの轟雷たちは「ロボット」と「人」という垣根を超えて対等な友人・家族的な関係を築いていった。
この点に関しては鍋のエピソードが印象的だった。この話では全員であれこれと古今東西の鍋トークをするものの、しかしFAガールたちはものを食べることができず、結局のところ鍋を食すのはあお1人という妙な構図になってしまう。しかしそれでも彼女たち皆にとってこれは楽しい時間であり、そういった楽しさの感情は身体的な差を超えてゆく。あおとFAガール、違っているからこその関係というものが築かれているのが良い。
エピソード内で、自らの心の不完全さを不安がる轟雷に対してあおが「必要だから欠けていることもある」と話すシーンも心に残った。このセリフは、EDテーマ曲『FULLSCRATCH LOVE』において「わたしたちはきっと一つ あなたを満たすパーツ」などと心の触れ合いとプラモデルのパーツをはめ込むことを重ね合わせていることも思い出させる。ただ鍋を食べるだけの話から、プラモデルという要素にも触れつつキャラクターの関係性・アニメのテーマを描いていく手腕は見事。
またアニメではFAガール……というか物質に宿る魂、そうした神秘的なものも仄めかされていた。
6話においてポルターガイスト現象で暴れるニッパーが出てきた時はその突拍子もない展開に大笑いしてしまったが、しかしその後の8話であおの幼少時の思い出の人形が動き出す展開を見てみると、ニッパーのシーンも単なるギャグパートではなく意味を持ったものに思えてくる。
そして更に9話後半では実際に人間の姿とサイズになったFAガールたちが登場した。これ自体は夢の話だったが、皆で同じ夢をみていたというのはなんともロマン溢れる話だ。
ニッパーの亡霊……ではなく精霊としてまさかの登場をしたニパ子さん。万物には精霊が宿るのだ……。
アニメ中では主にCGが使われているFAガールだが、前述の学校回以外でも時よりアニメ絵になることがある。演出面でのサプライズでもあるだろうが、より人へと近づいたことを示しているようにも感じられる。
ところで学校回ではあおが「空を飛んだらいい」と人間のスティ子とバーゼに提案し怪訝な顔をされる一幕があった。あおにとっての二人は当然のようにFAガールとしての姿で、そしてそれでも対等な友人なのだということに感動を覚える。
OPも後半からアニメパートが増え、サビのバーゼもより美麗に。
感情を獲得していく流れで、前述したようにマイナスの感情もまた知った轟雷。終盤であおを心配するあまり暴走する轟雷の姿は、おおよそ合理的なロボットからはかけ離れた姿であった。このことは「あおの名字を自分にも欲しがる」という極めて非合理的な行動が見られたことにも顕著に現れている。名字を貰うということは、そのひとの家族になるということ。「成長」した轟雷は、大きさや材質こそ違えど人間と変わらないような存在になったのだ。こういうことを言うのは人間目線でおこがましいのかもしれないが、でもそれはきっと素敵なことだし、とてもロマンがあることじゃないかなと思う。
伝播してゆく感情と、変わってゆく世界
出会いによって変化したのは轟雷だけではない。他のFAガールの面々も、当初はバトルのためとやってきただけだったが、気がつくと仲間意識のようなものが芽生えているようになった。
そして最終話、轟雷とあおの名字のやりとりをこっそり聞いていたFAガールたち。この時、彼女たちもまた自らにとっての一番のパートナーを探しに旅に出ることを決心する。あおと正式にマスターの契約をした轟雷とは違い、他の面々は一時的に居候をしているだけなのだ。唯一無二の関係に憧れ、それを探しに行くというのはなんとも人間臭い行動である。あおから感情を学んだ轟雷は、今度は他の者に新たな感情を呼び起こす存在へとなっていたのだった。
また、轟雷に感情を伝えたあおにも変化があった。クリスマスの夜にブキ子曰く「子供を喜ばせる母親のような顔」をしていたあお。
一話で轟雷を自らの幼少期の姿と重ねたりもしていたあおだったが、ここまでの交流を経てさりげなく母性のようなものを発揮していたようだ。
風邪の時は両親に甘えていたり、クリスマスは毎年ブキ子と予定を入れていたりと、表面には出さないものの寂しがりやで甘えん坊っぽいところも垣間見せるあおだったが、そんな彼女が「母の顔」をするようになったのは立派な成長を感じさせる。そしてそんな彼女にとってもこの生活はきっと大切で愛おしいものでもあったのだろう。
ままごとのシーンなどもそうだが、両者の関係はどこか親子のそれを思わせるものでもある。あおの母親のような姿を見ると、一見少々身勝手にも見えるあおの両親もまた、あおに深い愛情を注いでいたのだろうということが伺える。誰かの想いは別の誰かに影響を与えて、そうして生まれた思いは世界を巡ってゆく。そこにあるのはロボットも人間もない、ただ感情があるだけなのだ。
機動日が誕生日、と轟雷に(本人は食べられないが)バースデーケーキを買ってきたあお。ロボットの轟雷を人間と同じような友人として接してきたあおだったからこそ、轟雷は女の子らしくなれたのかもしれない。
プラモデルのアニメとしてのフレームアームズガール
このアニメの日常系的魅力、また同時に紡がれてきた物語の魅力を語ってきたわけだが、他に「プラモデル販促アニメ」としての側面があるのも見逃せない。
コトブキヤは原作兼筆頭スポンサーとなり、アニメのCMでもバンバン自社製品をアピールしていた。かつて放送時に販促する品がすでにほぼ無かった武装神姫ファン的には大変羨ましい
作中でもプラモデル話はよく出てくる。FAガール本体こそ既に出来上がった状態だったものの、武装パーツは組み上げていかなくてはならないという設定。細かいパーツを無くてししまったり、踏んづけて破損してしまったりなどとプラモ作成におけるあるあるネタなども。自社製品のコトブキニッパーなんかを宣伝するシーンまで入れてきて、実に商魂たくましい。(まあコンテンツ存続のためにも、是非思いっきり儲けていただきたいものだが!)
ところで、先程話した感情の話、あれをこうしたプラモデルのアニメでやるということには、また別の意味があるような気がしているのだ。アニメにおいて、轟雷はあおの影響によってより人間的な存在へと変化していった。我々の現実世界においては物言わぬプラの塊のFAガールだが、そこに魂を吹き込めるかどうかは我々の感情次第、ということなのではないだろうか。
轟雷とあおの親子のような関係も、モデラーとキットの関係を思わせる気もする。私達が愛を注いで作成し、可愛がることで1/1スケールの彼女たちはきっと応えてくれるし、人の感情や妄想力というのには世界を創り出す力があるのだ。個人的な感じ方にすぎないかもしれないが、FAガールのもうひとつの「親」であるコトブキヤからの「うちの子を可愛がって欲しい」というメッセージのように感じた。
また設定的には同型機を登場させてもよさそうなものだが、カラバリ含めて登場しなかったのは、もちろん新規層へのわかりやすさというところもあるだろうが、けして同じものが完成しないプラモデルという商品ならではなのかな、という気もした。
ラストシーンで、それぞれの「特別」を見つけるため旅立ったFAガールたち。キットのフレームアームズ・ガールと私達もまた、互いにとっての特別になれるなら、それはきっととても素敵なことだ。
アニメ最終話に投入されて視聴者を驚かせたライブパート。バトルでもライブでもいい、武装をしていても服を着ていてもいい、FAガールの様々な可能性が示された。
好きなエピソード 第8話 『決起集会 / 秋に呼ばれて…』
個人的にFA:Gの見方が変わった8話を挙げたい。そこまでは楽しみながらもなんだかストライクにひと味足りないかも? などと思っていたのだが、ここで轟雷とあおの関係の物語性を感じ取ることができ、ああすごくいいなあと感動した美しいエピソードの『秋に呼ばれて…』が好き。前半の『決起集会』も、フレズヴェルグというライバルが登場し、居候のFAガールの面々もちょっとチーム感が出てきたかな? とほっこりできる良いエピソード。ゆるゆるなギャグを連発する感じも、FA:Gアニメの真骨頂感がある。
「GO!GO!轟雷改!」何気にきっちりパーツを組めるようになったあおの成長も見逃せない。
出し物はどれもバカバカしくて最高なのだが、漫才が頭悪すぎて最高なんだな。
あおも轟雷へのメッセージを読み上げる。お金ネタに笑ってしまうが、いろんな思い出を積み重ねていこうというメッセージやトランペット披露もあおの思い出話をする後半の布石になっており、実に綺麗な流れ。
秋の公園で交流するふたり、紅葉の木々が美しい。OP映像を思わせるどんぐり拾いや、二人の親子的関係を暗示するようなおままごとのシーンがあり、結構重要なエピソードに思う。
昔あおが遊んでいた人形のぐり子が登場するちょっと不思議な展開。人形に魂が宿るのは、9話のFAガール人間態エピソードへとつながるものでもある。9話というと、あおのくしゃみも風邪への布石になっているし、この連続性の美しさがフレームアームズガールの良さでもある。
あおの昔話を聞き、タイムカプセルを埋め、新たに「懐かしい」という感情を学んだ轟雷。夕焼けに伸びる影が1日の終りを感じさせ、また新しい「思い出」を積み重ねていくのであろう未来を想う。本当に心温まるエピソードなんだ。そしてこの後にまた漫才を突っ込んでくるのが最高。
超勝手に似たものを感じる音楽アルバム紹介『Here's Where The Strings Come In / Superchunk』
自分が楽しいだけの話だ!楽しいって大事だぞ!感情を伝えてゆけ!
日常系の緩さっていうのはUSオルタナあたりの緩さにも通じるところがあるんじゃないかなみたいなことを勝手に思うんだよな。技巧じゃないところにロマンを求めるというか。ということで今回はSuperchunkの『Here's Where The Strings Come In』を紹介するぜ。

HERE'S WHERE THE STRINGS COME IN
- アーティスト: SUPERCHUNK
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トラック
- Hyper Enough
- Silverleaf And Snowy Tears
- Yeah, It's Beautiful Here Too
- Iron On
- Sunshine State
- Detroit Has A Skyline Too
- Eastern Terminal
- Animated Airplanes Over Germany
- Green Flowers, Blue Fish
- Here's Where The Strings Come In
- Certain Stars
CD解説
なんといっても一発目の『Hyper Enough』の勢いとテンションに圧倒されてしまう。キャッチーで力強いギターサウンドはパワーポップの王道感。少々激しめだけれど、フレームアームズ・ガールのがちゃがちゃした明るい感じとマッチしているのではないかなーと個人的に思う。何よりいいのがSuperchunk、全体的に哀愁が漂ってるというか、ふと覗かせるメロディアスさがなんだか泣けるんだよな。当たり前の裏側に隠れてる優しさが毎日を彩る光で、奇跡の欠片で世界はできてるんだよな。
フレームアームズ・ガール同様ゆるっとしながらもハイレベルに聞きやすくまとまったアルバムで、ポップよりのロックが好きな人には自信を持ってお勧めできそうな1枚。FA:GアニメのOP・EDもかなりロック調だったので、興味が湧いた方は是非入門盤として如何だろうか、という雑な関連付けをしてみたり。
ということで
日常系・SF作品・プラモデル販促と多次元な方向でうまくまとめたなあと思うフレームアームズ・ガール、個人的にも日常アニメで久々に結構ハマった気がする作品なように思う。ネタバレだらけの記事になってしまったので未見の方に薦めるにはアレなのだが、是非。
あと小型ロボット少女モノで言うと武装神姫も驚きと笑いに富んで、いい話もアリの名作なので、フレームアームズ・ガールにハマった人にはこちらも是非見てほしいなあ……。フミカネ氏のデザインということもあり、ファン層も結構被っているのではというこの作品。フレームアームズ・ガールがプラモデルならではの「特別」を描いたなら、武装神姫は量産品であるフィギュアならではのオンリーワンを描いていたと思うので、そこら辺の対比も感じていただければ嬉しい。

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cemetrygates1919.hatenablog.com
実はけもフレが流行ったときにもプッシュした。武装神姫も見て下さい。コトブキヤはプラモ出して。

コトブキヤ フレームアームズ・ガール 轟雷 ノンスケール プラモデル
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