日陰の小道

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ちょっと激しい社会派癒やし系アニメ『PUI PUI モルカー』がすごい作品かもしれない

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18世紀に自動車が開発されてから、車は物資の輸送に人々の移動にと、人類の文明の発展に欠かせない発明として活躍してきました。現在の世界でも自動車産業はトップクラスの業界規模を誇り、レジャーや運搬など様々な需要によって巨大な幹線道路が自動車で埋め尽くされる光景は決して珍しいものではありません。




一方で鉄の塊が高速で移動する自動車というものの危険性もまた、わたしたちの生活のそばで常につきまとって来ました。交通事故の死傷者数は死因のトップではないにしろ現在でも無視できない数字として存在しています。
現代に生きる人々は老若男女問わず常に交通ルールを叩き込まれつつ、ときに賛否の論争を巻き起こしつつも自動車との共生をしています。
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世界的に有名なロックバンドRadioheadのボーカルであるThom Yorkは自動車嫌いとして知られる有名人の1人です。彼は自身の手掛けた作品においてもしばしば自動車を非難しており、『Airbag』にて車の危険性を前提に「エアーバッグがあったから命が助かった」と皮肉たっぷりに歌ったり、また『Killer Cars』といったあまりにも直球なタイトル曲を発表しています。
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自動車というものの抱える光と闇。もはや車なくしては生活がままならない現代の人々にとってはその双方と付き合っていくしかありません。
そんな中で人々の想像力は常に現実より一歩先に車を進化させ、空飛ぶ車にしゃべる車、自動操縦してくれる車……などなど様々な「未来のクルマ」というものを生み出してきました。中でも自動操縦車は現代においては決して夢物語の乗り物というわけではなく、「特定条件下における自動運転」という範囲で実用化一歩手前というところまで来ています。
もしかすると技術を発達させるものこそ「人々の夢」であり、だからこそ私たちはいろんな「夢のクルマ」を思い描くのかもしれませんね。


2021年、わたしたちの世界にまた一つ新たな「夢のクルマ」が誕生しました。時に自ら考え、とっても可愛らしく、もこもこのキュートな車が活躍するお話。それこそが『PUI PUI モルカー』なのです。

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舞台はモルモットが車になった世界。
癒し系の車“モルカー”。くりっくりな目と大きな丸いお尻、トコトコ走る短い手足。常にとぼけた顔で走り回るモルカー。渋滞しても、前のモルモットのお尻を眺めているだけで癒されるし、ちょっとしたトラブルがあってもモフモフして可愛いから許せてしまう?!
クルマならではの様々なシチュエーションを中心に、癒しあり、友情あり、冒険あり、ハチャメチャアクションもありのモルだくさんアニメーション!
(公式イントロダクションより引用)


きんだーてれび」内にて、1月5日から毎週火曜朝7:30~で放送中のショートアニメ『PUI PUI モルカー』ですが、約一週間の間の見逃し配信を行っています。 朝が苦手な夜行性のみなさんも安心ですね。
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"モルカー"は車とモルモットが合体したかのような生き物です。声も実際のモルモットが当てているらしく、またタイヤの回転ではなくのしのしとタイヤを動かして歩くようなスタイルで移動しており、特徴的には車というよりもモルモットにずっと近いと言えるかもしれませんね。
一方でこの"モルカー"には実際の車のように人間が乗っています。民間の車だけではなく、救急車やパトカーといった車も全てモルカーなこの世界。まさに「わたしたちの世界の車がモルモットになっちゃった!」という感じのとても不思議な雰囲気です。一体モルカーはこの世界においてどういう経緯で生み出されたのか、あるいは元々存在していたのでしょうか? この独特の世界観にはとても惹かれてしまいますね。


モルカーの中にはシートベルトやハンドルが存在しているため、どうも実際人間が運転しているようです。一面ピンクの車内が非常にかわいらしいですね。1話でもモルカーが冒頭で転がっていますが、実際の車ならば大惨事になりそうなところモルカーは全身モコモコなのでちゃんとシートベルトをしていれば心配ありません。モルカーだとしたらエアーバッグなんて搭載していなくても、常に安全なのかもしれませんね。操縦の不備で交通事故があっても安心……まさにモルカーはそんな安全性を実現した「夢の乗り物」と言えるかもしれません。


しかしその一方でモルカー自身が判断して動くときだってあります。第1話では渋滞に巻き込まれてしまうモルカーのお話でしたが、救急車モルカーの涙ながらの様子を見て奮起したモルカーのポテトは、なんと運転手のお姉さんの操縦を無視して救急車モルカーを渋滞モルカー列の上へと持ち上げます!

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キャラクター紹介にもすでに「運転手の操縦を時々無視する」って書かれていますね……(公式サイトより)


渋滞に完全にしびれをきらしたモルカーたち。渋滞モルカー列を形成しているモルカーは次々と救急車を追ってモルカーの上へと移動! 勢いでそのまま爆走するモルカー軍団に踏みつけられて、大音量で音楽を聞いていた迷惑モルカーをぶっとばします! そこへ急遽登場したパトカーモルカーによって信号無視をしていた迷惑モルカーのドライバーは逮捕されてしまいます!
渋滞を自ら解決していく、そんなモルカーこそやはり人類の夢なのかもしれまんね。めでたしめでたし。
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『PUI PUI モルカー』1話より







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……いやモルカー世界治安悪くないですか?










しかし、かわいいモルカーに癒やされたとしてもここで忘れてはいけないのが、モルカーはやはり車であるということです。すなわち、モルカー世界のモルカートラブルはわたしたちの世界の車トラブルを反映したものなのですね。渋滞はもちろん、音楽を聞いたりスマホをいじったりの不注意運転、そうした問題はわたしたちの世界においてもやはり存在しています。『PUI PUI モルカー』という作品はそうした車の持つリアルさから決して逃げずに、かわいらしいモルカーを描くと同時にわたしたち視聴者に問題提起をしているのかもしれませんね。
監督のインタビューでも、そうした現代の車社会に対する複雑な想いが語られています。

渋滞や割り込み、煽り運転など、イライラする車の出来事が数多く存在する世の中。
「もしも車がモルモットだったら…」
癒し系の車「モルカー」ならそんなストレス社会を打破することができるのではないかと思いました。モルモットはくりっくりな目と大きな丸いお尻、トコトコ走る短い手足、常にとぼけた顔。
渋滞しても、前のモルモットのお尻を眺めているだけで癒されますし、ちょっとしたトラブルがあってもモフモフして可愛いから許せてしまう?!
(公式サイトより引用)

だからこそ、モルカーがトラブルを扱うとしたら車にちなんだものであるはずなのです。次に悪いやつが出てくるとしたら、やはり交通ルールを守らないような人を反映した存在になるでしょうね。




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"TVアニメ「PUI PUIモルカー」第2話 銀行強盗をつかまえろ! 予告"








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……やっぱりモルカー世界治安悪くないですか!?