日陰の小道

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【ブルアカ】聖園ミカというどうしようもない人の話をしたい(エデン条約編 第4章 中編までの雑感)

エデン条約編第四章中編が公開されましたね!!!
第三章が終わった時は「いや~めちゃくちゃいい終わり方だった、エデン条約編最高!」みたいなテンションで、完全に終わったものとして記事とかも書いてたんですけど、急に第4章が出てきたのでなんかそうも言っていられなくなってきました。
流石に終わってからじっくり感想とか書こうと思ってたんですけど、あまりにもインパクトが強かったので、せっかくですし一旦思ったことを書きなぐっていこうと思います。


みんなもう第四章中編読んだよね?(当然ですが、この記事は第四章の内容をモリモリ含みます!)


とにかく聖園ミカがヤバすぎる!

ミカは俺が守護(まも)る……という面持ちで中編を迎えたプレイヤー先生のの前に現れたのは魔女と化した聖園ミカ。


異常(ヤバ)すぎるだろ…………。

ゲヘナ風紀委員会や正義実現委員会とも激戦を繰り広げたアリウススクワッドの面々が、1人欠けてかつ手負いとは言え、DIOの能力がわかってないから夜のエジプトを逃げ惑うことになるジョースター一行」みたいになると思っていませんでした。格が違いすぎるだろ。もうどういう戦い方してるのか全然わかんないもんな。銃撃されてもほぼノーダメだし柱ぶっ壊してきたらどうしたらいいんだよ。


それにしても、完全に正気を失ったかと思っていましたがミカは思いの外冷静です。あくまでも狙いはアリウススクワッドへの復讐で、横についてる先生は極力(あくまで極力)傷つけないように襲いかかってきています。先生がアリウス側についていることにも案外冷静な反応。これは……意外と対話、いけるんやないか!?



強情すぎる!!!!


思えば一度やると決めたら突っ走る女です。なんでこいついつも異常に意思だけは堅いんだよ!


かと思えばやはり居場所がないことを嘆く姿は、友達好きのただの子供の姿です。こんな泣きゲーの悲劇のヒロインと怪獣みたいな災害ポジを反復横とびするキャラいるんだ。とはいえか弱さと混沌さが両立した生徒というのは、やはりブルアカらしい子どもの描き方だとも感じます。
このように様々な一面を見せる彼女の姿は、その折り合いのつかない心中を表しているようでもあります。

激情と秩序の狭間で

気がついたら災害チックなポジションになってしまったミカ。何をやろうとしても上手く行かず、ある意味では物語上で損な役回りになってしまっている生徒でもあります。
そんなミカのこれまでの行動について振り返ってみましょう。


1.ゲヘナ憎しでアリウスと手を組む。ティーパーティで邪魔なセイアを無力化(殺害したと思いこんでいる)

2.引き続き反ゲヘナとして活動。ナギサの主導する「エデン条約」の締結を阻止すべく暗躍、シャーレの先生を呼び出す。

3.ティーパーティ現トップのナギサを襲撃。アリウスと共にトリニティの実権を握ろうと画策。

もともと、彼女を動かしていたのはゲヘナへの憎しみのようです。トリニティの穏健派を抑え込んでゲヘナとの対立を激化させるのが当初のミカの目的でした。そのためにアリウスと手を組むことになりますが、アリウスに関しては友好的な態度を見せることもあります。
後の一件でもナギサまで手に掛けようという意志はなく、セイアの件に関してはかなり悔やんでいたようです。


4.先生率いる補習授業部他に敗退。セイアの無事を聞かされ、投降する。

ここでセイアの無事を聞かされたところで嘘のように大人しくなります。彼女にとってティーパーティのメンバーが大きい存在であることが伺えます。
ここまで反ゲヘナで一貫した行動をとっていましたが、これはセイアを手に掛けたと思い込んだことによって、後戻りができなくなったと感じていた理由もあるようです。

5.トリニティ内で監禁。混乱に乗じてパテル派から反ゲヘナの旗印として担ぎ上げられそうになるも、拒絶。


6.引き続き監禁状態。3食ロールケーキを食べさせられる。所属勢力のパテル派からも追放されている。自身の裁判は欠席するつもりだったが、先生に説得される。

7.セイアに謝ろうとするも、心神喪失のセイアから結果的に拒絶。セイアは倒れ、再び意識不明に。

ここでミカは再び自分の罪に直面します。”殺人者”になるかならないかという点はアズサの物語においても重要なボーダーラインでしたが、ミカにとってもそのようです。セイアが再び昏睡状態になってしまったことで、セイアを殺しかけたというミカの罪の蕾は再び花開くことになります。


8.トリニティ生徒たちの「魔女」の呼び声に呼応するかのように、素手で壁を破壊して脱獄。

9.サオリたちスクワッドに復讐すべく、アリウス自治区に侵入。サオリたちと交戦。

セイアがこうなった元凶がサオリたちアリウススクワッドにあると判断し、復讐のためにスクワッドの追撃を開始します。


さて、ミカの今までの言動を追っているとわかるのですが、奇妙な相反する2つの原動力によって彼女が動いていることがわかります。その1つは”感情”です。ゲヘナが憎い、自分の意見に頷かずに小難しいことを話すセイアが嫌い、彼女の行動の起点は自分の感情によるものでした。
彼女の行動は感情的なので、時に気まぐれです。第3章時点で、本来悲願であった「反ゲヘナ派勢力の拡大」の誘いを「気分ではない」と断っていることからも、ここは既に今のミカにとって(もしかすると、かつてのミカにとっても)重要でないことがわかります。


しかしこの原動力だけで、彼女の行動が全て説明できるわけではありません。第4章中編時点での彼女は、ナギサやセイアへの愛情をはっきりと自覚しており、それが今の彼女にとって最も大切なこともわかっています。更に第4章では「もう居場所がない」と普段の態度を崩して泣き崩れているわけですから、実際に現状の彼女が感情的に一番求めていることは「トリニティに帰って元通りになる」であるということは明白です。
無論トリニティへの帰還が彼女にとって難しいので復讐に走っているという側面もあるでしょう。しかしアリウススクワッドへの復讐という目標が、少なくとも第3章終了時点では立ち上がって来ていませんので、これはある時点まではミカの感情にとって重要なことではありませんでした。


ここで、ミカの感情以外の原動力について探ってみたいと思います。
第2章で補習授業部と対峙していた時のことを思い返すと、ミカはどうにも微妙に歯切れが悪いというか、セイアのことを引きずりすぎていて、トリニティ内のクーデターに関してもどれだけの熱意を持っているのか今一つ伝わってきません。彼女が飄々とした姿勢をあまり崩さないことも一因でしょうが、それにしてもセイアの無事を知るや否やぱたりとクーデターを諦めてしまうのは、彼女が感情や情熱以外のもので動いている故でしょう。本来、現状でのクーデターの可否と、すでに表舞台に出てこられないセイアの無事は関係ないのですから。


当然、セイアの無事を知って気が抜けた、という解釈をしてもおかしくないシーンだとは思います。しかしここで再び彼女の言動を振り返ってみると、無視できない要素として「仕方がないからしなければならない」というニュアンスがあります。


彼女のここまでの行動原理の大本に打ち込まれている楔は、やはりセイアを死なせてしまったと思っているところです。目的のためにセイアを亡き者にしてしまったので、それを無駄にしないためにも目的を完遂しなければならない……と、いつの間にか自分で自分を縛ってしまっているが故の行動だったのではないかと思わせます。
”感情”とは異なるもう一つのミカの原動力、いうなればこれは”責任”ではないでしょうか。


再び4章時点の話に戻りますが、同じことはミカがサオリたちに襲いかかるシーンでも見い出せます。再びスクワッドと対峙した場面を振り返ってみましょう。


ミカが話すことは「スクワッドが憎くて復讐したくてしょうがない」ではなく「スクワッドを絶対に許せない」「(スクワッドに)復讐しないとダメ」です。これらは微妙なニュアンスの違い程度ではありますが、しかしやはりここでも彼女を突き動かしているのは妙な”責任感”という気がします。
そしてここで再び絡んでくるのはセイア殺害未遂の一件です。セイアが生存していることが判明してミカもしばらくは落ち着いていましたが、もう一度セイアが倒れたことによって、再びミカはセイアを害した罪に向き合うことになってしまいました。ここまでセイアを傷つけてしまったのは誰のせいか。もちろんミカは自分のことも責めていますが、それ以上にこの事件を引き起こした罪があるのは――そう、サオリ率いるアリウススクワッドです。


まさにこれもミカの”責任感”によって導かれた行動です。このまま裁判を受けるにしろ欠席で退学になるにしろ、ミカの罪はトリニティによって裁かれます。彼女は他のティーパーティのことも案じ、自らが大人しく裁かれることで丸く収めようとしています。
ではサオリは? 全てを引き起こしたまま、セイアを傷つけた張本人がのうのうと暮らしていることがミカには許せません。たとえそこにどんな理由があったとしても、です。それを裁けるのはアリウス自治区へと迅速に追跡が可能かつ戦闘力が異常に高いミカだけです。というか、それを裁くことができるだけの力があったことがミカの不幸だったのかもしれませんが……。


ここで同じくバレンタインイベントで脱獄囚だったワカモと比べてみると、ミカの拗れた心が浮き彫りになるように思います。
ワカモの行動は非常に単純です。バレンタインで脱獄を繰り返した彼女は「先生にチョコを渡したい」という一心で抜け出そうとします。
ワカモは「先生にチョコを絶対に渡す→だから脱獄する」という、至極単純な感情に則った脱獄です。
ワカモは感情を最も是としているので、このことを悪びれもしません。悪びれもしないので牢獄に残ることも当然しないのです。
一方で自分のことを「悪い子」と表現するミカは、自らの罪には向き合おうとし、脱獄も悪いことだと捉えています。ミカ自身もセイアを傷つけた1人であるため、投獄されていることは当然というのが彼女の考えです。現にサオリたちへの復讐に取り憑かれるまで、ミカは徹底的に大人しくしていました(やろうと思えば素手で脱獄できるのに!)
ミカの場合は「サオリへの復讐をしなければならない→だから脱獄をしなくてはならない」という感じではないでしょうか。
「ごめんね~☆」って謝ってるし申し訳ないとは思ってるんだと思います(ほんとか?)


自らの”感情”の赴くままに行動する自由奔放さを持ちつつも、社会の中で自らの”責任”を全うせんとする秩序の人。この2つの価値観が最悪の形で結びついたのが今のミカの現状でしょう。



この両者の結びつき自体は決して悪いものではなく、むしろ考えようによってはヒロイックな行動に繋がったはずです。エデン条約編第3章時点で、ミカが「スクワッドは私が責任を持って裁かなくては!」と変に燃えて、素手で脱獄してスクワッドとヒエロニムスをそのままボコボコにしていたら今頃英雄になっていたかもしれません。彼女の悲劇的なところは、もはや物語においてアリウススクワッドが倒すべき敵ではとっくになくなってしまっているという、タイミングの悪さにあります。そういえば「コヘレトの言葉」にもタイミングに関する教えがありましたね……(3章)


彼女のナギサやセイアに対する愛情だって、ちゃんと上手く発揮できれば間違えなくめちゃくちゃ頼れる先生の味方だったはずです。全部はエデン条約編とかいう話が政治だの権謀だのってゴチャゴチャしてるのが悪いよ~マジ。アビドス対策委員会編のホシノみたいにナギちゃんかセイアちゃんが囚われてたらな~マジでよ~


……



……



……




いやちょうど今セイアちゃん閉じ込められてたわ!!!


ミカがセイアちゃんの危機に気がついて、ベアトリーチェ素手でボコボコにする。

これだわ……ミカの会心の一手。


ということで今後のミカがどうなるかは、このバケモンとタイマンで対決することになってしまったサオリが単独でミカを説得できるかどうかにかかっていると思います。



…………やれんのか!?


ミカとアリウスと”平等”

”責任”に少々関係して、気になるところがミカの”平等”へのこだわりです。これらはやはりどちらかといえば秩序側の価値観です。感情第一で行動するならば、本来”平等”はどうでもいいはずです。


”平等”はこのようなタイミングでなければ「みんな仲良く!」という平和的な姿勢になったでしょうが、全てを失ったと考えているミカとしてはそうではありません。アリウススクワッドも自分と同じく裁かれなくてはならない――ということの根底にあるのは、罪と向き合おうとする"責任感"の現れであると同時に、彼女なりの"平等主義"の精神だとも言えます。


それにしても、ミカのアリウスへの現状の想いは複雑だなと感じます。ここでの”平等”というのは、仲間内で実現するものだからです。もしも仲間内の範囲が世界(キヴォトス)全体であるならば、ミカはゲヘナ排斥に動かなかったでしょう。ミカの中でゲヘナは仲間ではないので、平等の対象ではありません。ミカ(や大部分のトリニティ生徒)にとってはトリニティこそが世界だからです。


この仲間内をどこまでに設定するかは人それぞれでしょうが、トリニティとしては異端となってしまったアリウスも、ミカ的には仲間内判定の存在であるようです。
そもそも考えてみれば、クーデターに成功してミカがトリニティのトップに君臨した暁には、アリウスを現状の「正義実現委員会」ぐらいのポジションにするという構想を持っていました。自分の武力の拠り所としてアリウスを選んでいるのですから、これはかなりアリウスのことを信用していたことに他なりません。実際第2章では、サオリのことを高く買っている発言もしています。


手を組んだアリウスのリーダー的な存在であるサオリを、いずれ自分の右腕に……とまで考えていたとしても不思議はありません。ミカはナギサやセイアを裏切っていましたが、彼女自身もアリウスの思惑を知り、サオリには裏切られたとどこか感じているのかもしれません。
第4章でミカが再び苦難に遭遇したときは「まだ許されないのか〜」などと思ってしまいましたが、アリウスと深い関係がある彼女が、アリウスの話に移ったこの物語で再び舞台に上げられることは、考えてみると必然的だったのかもしれません。


ここまで、ミカの言動を参考に彼女の内面について考えてきました。謀略を裏で巡らせ、基本的に真実を語らずに飄々とした態度を崩そうとしない彼女の発言は、どこまでが本心の言葉かはわかりません。とはいえ、第2章のプールサイドで語っていたシーンを思い返すと、アリウスに関してはどうにも実際思うところがあったように思えてなりません。彼女としては本当に、「トリニティ」の内部においては「みんなで仲良く!」というものを目指していたのではないでしょうか。本来のミカというのは、単純な原理で動いている人のはずですから。
アリウス自治区のことを黙っていたのも、案外あの時点ではアリウスを守ろうとしていたんじゃないかな、なんて考えています。


現時点のミカの言う「大切なものを失った」とは当然セイアのことですから、ここの問題が片付くのが一番です。ミカの失ったと感じるものが少なくなれば、彼女の平等精神から来る「スクワットがのうのうと生きているのは不公平である」という意識もある程度収まることが期待できます。そもそも、ミカを凶行に駆り立てているのも元を辿れば彼女自身の罪の意識でしょうから、セイアが元気になれば(罪が殺人の罪からもっと小さいものになれば)再び矛を収めてくれるはずです。
またこの罪に関しては、ミカの心中の話だけではなく、トリニティの正式な裁判においてもセイアがミカを弁護すれば罪は軽くなるだろう、と言われています。


ということで、やっぱりミカはこれからセイアを救うためにセイアを閉じ込めたベアトリーチェ素手でボコボコにしないといけません。


つまり、今後のミカがどうなるかは、このバケモンとタイマンで対決することになってしまったサオリが単独でミカを説得できるかどうかにかかっていると思います。


サオリ〜〜〜がんばれ〜〜〜!!!


ミカとサオリとコヘレトの言葉

ここで少しサオリの話をしたいと思います。
一応それまで色々と話をする機会があったミカと違い、サオリが先生(プレイヤー)と接触することになるのはこの第4章が初めてです。先生がサオリと共に行動する中で、今まで謎に包まれていたサオリやアリウスのことが少しずつわかってきました。そんな中で改めて無視できない要素として再び立ち上がってくるのが「Vanitas vanitatum omnia vanitas」の出典である「コヘレトの言葉(伝導の書)」です。

cemetrygates1919.hatenablog.com


以前の記事で、コレヘトの言葉を正しく理解しているのはむしろ「それでも」と続きを前向きに紡ごうとするアズサで、サオリの虚無一辺倒は一部を切り取ったに過ぎないのではないか、というようなことを書きました。今回の本編中、やはり意図的にベアトリーチェが、恐らくこのコレヘトの言葉を曲解するように仕向けていたことがベアトリーチェ自身の口から語られました。


ベアトリーチェの「教え」の下で虚無を強調するかのように切り取られてしまった「コヘレトの言葉」。実際確かにこの文の根底には徹底した虚無の教えがあります。コレヘトの言葉の語り手である伝道者は、様々な例を挙げながらこの世の不条理と救いの無さを説いています。しかしここで無視できないのは、伝道者が唯一、やむなく救いとしたことが生活の小さな楽しみである、という点です。そして伝道者はこの世の不条理を徹底的に嘆きながらも、決して積極的な死を説きません。
あくまでもこれは「生の謙虚さを教える金言」なのです(少なくとも、ブルーアーカイブの解釈としては)


「コヘレトの言葉」によると「罪人にも善人にも等しく死は訪れる」(9章範囲)ため、伝道者は死後に望みを託さず、ただひたすらに苦しみの生を見つめています。神の定めた死という絶対的な結末を前にして、我々人間のやれることの矮小さを繰り返し説きつつも、故に人間にできることは目の前の生を懸命に生きることしかない、というのがこの言葉から得るべき「知恵」なのだということです。


さて、エデン条約編の第4章を経た今、改めてサオリの「Vanitas vanitatum omnia vanitas」と共にある姿勢を見直さなくてはなりません。サオリはかつて「それでも」と未来を望むアズサを否定しましたが、しかしサオリ自身何もかもを諦めたわけではありませんでした。他の何を犠牲にしてもアツコを守り、アリウスを生かそうというのがサオリの姿勢です。トリニティやゲヘナを潰そうとしていたのも、強大な「大人」を前に、サオリがなんとか苦しみの現実に抗って懸命に手繰り寄せようとした生存戦略でした。
第4章の物語に触れた今となっては、前回の時点とは異なる意見を今わたしは持っています。
このサオリのドライな現実主義的な姿勢は、伝導者の徹底した現実主義のそれと通じるものがあるように感じます。希望を持とうとするアズサよりも、希望がなくとも生を諦めないサオリの姿勢は、コヘレトの言葉を重く受け止めていることになります。ベアトリーチェの捻れた教えを受け入れつつも、サオリの生だけは諦めない姿勢は、結果的に元々のコヘレトの言葉の核心を捉えていたことになります。

伝道の書は古代近東の知恵におけるすべての「抗議者、、、」と一致して、知恵の硬直化を問題にし相対化の思想を評価する。しかし、この書は他の抗議者と異なり、問題が満足できる解決に至らないし、「ハッピーエンド」にもならない。その抗議は遥かに深い。応報の教理ばかりではなく、知恵の助けによって繁栄を確保しようとする人間の努力も、無意味な空しさと烙印を押す。今日知られている抗議文献のすべての例では、結局、緊張がゆるみ、あれこれの答えを危機に対して用意する。しかし伝道の書ではこの緊張が持続する、、、、、、、、、、、、、、、、、、。これがこの書の最も重要な特徴である。


『伝道の書―コヘレトの言葉』(著:J.A.ローデル、訳:片野安久利)より


再びミカの話に戻りますと、なんだかんだでミカはサオリと似ている部分があると思います。それは彼女がヒフミのように無邪気にハッピーエンドを信じているわけではないからです。


ミカはキリエの「憐れみたまえ」の文句を嫌います。神への祈りで現実の何もかもが解決するわけではないとわかっているからです。しかし一方でミカは正しさを意識するあまり大人しく破滅を受け入れます(彼女の本編の姿から考えると大人しさとは無縁に感じてしまいますが、繰り返し語ったように現在のミカを突き動かすのは自身への罪の意識であり、スクワッドへの復讐はその延長線上にあります)
これはサオリが手段を選ばず泥を啜ってでも生き延びようとする姿とは対照的でもあります。
先生というかつての敵対者と手を組むのかどうか、という点でもきれいに逆の選択をしており、第4章においてこの二人は、カラーリングの白と黒のイメージのように、対に配置されているように感じます。
ちなみに、ミカが自分のことを「お姫様」と語っていることと、アツコが「姫」と呼ばれていることにも意図的なものを感じますが……このあたりに関しては、後編で何かつかめるものがあるかもしれませんね。


3という数字の次にある、4校目のアリウスがメインとなった第4章は、いわば「エデン条約編」の第3章までの物語の裏側にある闇の物語です。
第3章までの楽園の話はヒフミの強さによるハッピーエンドに終わりましたが、旧約聖書においてエデンの園と原罪が結びついているように、続く第4章では一旦楽園とされたこの世界で未だ燻っている罪の話が繰り広げられています。補習授業部も出てこない今、第4章の「エデン条約編」は罪人は虚無の現実の中でどう生きていけばいいのか、という話にシフトしてきているのかもしれません。そしてその主人公が、第3章までの罪人であるアリウススクワッドと、ミカです。
だからこそ、改めてここに来てミカとサオリにスポットライトが当たるのは必然的ですし、この似ていて異なる二人の衝突なくしてこの物語は終幕を迎えられないのかもしれません。そしてこの物語が果たして前回のようなハッピーエンドを迎えるのか全く想像がつきませんが、最後まで見届けたいと思います。せめて最後には生のささやかな喜びとして、皆でお茶を飲めたらいいなと思っています。


それにしても、ブルーアーカイブを作っているのは間違えなく悪い大人です。サオリの掘り下げによって彼女の姿を第3章で意図的に切り取り・捻じ曲げていたことがわかりました。更にセイアの謝罪が成立していたかのように印象操作されていたのは、夢と現実の間にいたセイアだけではありません。中編まで読んで書きなぐった、思ったより長くなったこの記事も、後編を読み終えた頃には塵になっていてもおかしくないよな~と思っています。
この悪い大人たちの巧みなストーリーテリングにすっかり乗せられていることに、哀れな私達は後になってからようやく気がつくことしかできません。


おまけ エデン条約編第4章で好きなシーントップ3


第三位 裏切り者に理解を示すムーブをやって突っ込まれるサオリ

こいつも大概自己犠牲ウーマンすぎる!!!



第二位 めちゃくちゃ教訓を得ているナギサ

ナギちゃん;;



第一位 

やっぱりヤバいって!!!


おわり


※当記事の全ての画像は『ブルーアーカイブ』©2020 NAT GAMES Co., Ltd. All Rights Reserved.©2020 Yostar, Inc. All Rights Reserved.から引用しています