aninadoさんの企画に参加します。
■「話数単位で選ぶ、2025年TVアニメ10選」ルール
・2025年1月1日~12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品につき上限1話。
・順位は付けない。
- もめんたりー・リリィ 第4話 「ぬくもり重ねた濃厚コンビーフ味噌ラーメン」
- ハニーレモンソーダ 第9話 「さようなら不器用だった私」
- 空色ユーティリティ 第9話 「スペシャルなバズ」
- 妃教育から逃げたい私 Episode 11
- LAZARUS ラザロ 第1話 「Goodbye Cruel World」
- 鬼人幻燈抄 第19話 「流転」
- 瑠璃の宝石 第11話 「サファイアのゆりかご」
- うたごえはミルフィーユ 第10話 「手と手」
- Turkey! 12投目 「さよならのTurkey!」
- 太陽よりも眩しい星 第12話「太陽よりも眩しい星」
- おわりに
- 惜しくも選外となったアニメ11選
もめんたりー・リリィ 第4話 「ぬくもり重ねた濃厚コンビーフ味噌ラーメン」
脚本:八薙玉造 絵コンテ:鈴木信吾、横峯克昌 演出:伊藤史夫 作画監督:内田孝行、上條円己、坂元愛里、谷圭司、古田誠、室井大地、吉村真鈴
壊れた天候のせいで少女たちは吹雪に襲われる。雪による停電を直そうとして猛吹雪の中で孤立したあやめを助けるため、幼なじみのさざんかが駆ける。
(公式あらすじ)
GoHandsが手がける笑って泣ける渾身の美少女終末モノから、このエピソードを選出。
全てが崩壊した世界では季節すらも狂っていて、突如として大吹雪に見舞われてしまう一行。いったんの避難場所として学校に逃げ込むのだが、本来学校に通っているような年齢の彼女らが誰もいない学校で夜を明かそうとする様子を見ていると、この世界や社会が崩壊してしまったことを改めて思い知らされるようである。
『もめリリ』のキャラクターは「かっぽ〜」や「ギルティ」など個性的な口癖を持っているが、これはどこか崩壊した社会の中で、自身の役割を自ら表現するように働いているようにも思える。この一風変わった口癖というのは、非常にアニメチックで大げさな表現ではある。しかし、わたしたちがインターネットとリアルで口調を変えることがあるように、それは多かれ少なかれ誰しもが、社会の中や、人間関係の中で、自然と行っていることでもあるのだろう。
このエピソードでは大雪による停電を復旧させるため、まとめ役のあやめが吹雪の中単独行動をする。この時のあやめは皆から離れたことで「委員長」的ふるまいを、ある意味では"演じる"必要がなくなるのだ。だからこそ、彼女は寒さの中で孤独である時、心が折れてしまう。帰ってこないあやめを心配し、幼なじみのさざんかが彼女を救出に向かうのだが、ここで救われたあやめはさざんかにだけ、自分の弱さを見せる。
堅物のあやめと、陽気なさざんか。正反対に見える2人だが、かつての様子は互いに逆のようであったという。誰しも、内に秘めた自分の姿だってある。幼なじみにだけ見せる姿があるのは、この2人だからこその繋がりを感じさせ、眩しい。本作の描いてきた人の繋がりを感じさせる描写の中でも、特に好きなシーンである。
戦いのためのアンドヴァリの能力で火を起こすのも、サバイバルものっぽくて面白く、彼女らのたくましい生活の様子を思わせてよい。
2人の過去が回想されたことで「では記憶のないれんげは?」と主人公・れんげの謎を意識させる回でもある。きれいにまとまった序盤の良きエピソードだと思う。


ハニーレモンソーダ 第9話 「さようなら不器用だった私」
脚本:水上清資 絵コンテ・演出:山本寛 作画監督:大野勉、星野真澄、千葉充、河野直人、村上竜之介、田中愛美、谷川政輝、すすきのアニメーション、PHILPRODUCTION 総作画監督:髙橋成之、千葉充
新学期。初めてカラオケに行く羽花の姿を、たまたま通りかかった父・堅実が見つけてしまう。帰宅した羽花に、父は「八美津高校は似合わない。転校しなさい」と言い渡し、しばらく休学することに。クラスメイトからいじめを受けていたと学校側に報告した父に対し、誤解を解こうとあゆみたちクラスメイトが必死になるが無しのつぶて。羽花の携帯が繋がらないことに気付いた界が羽花の部屋のベランダに現れる。
(公式あらすじ)
少女漫画原作のこちらからは、羽花と父との対話がひとつの山場であるこのエピソードを選びたい。
『ハニレモ』もかなり縦横無尽な演出があって見ていて飽きないアニメなのだが、この回はそうしたインパクトのある演出はそれほどないものの、羽花とその父・堅実とのすれ違いが繊細に表現されている。羽花と父が八美津から転校するかどうかで言い合いをするシーン、バストアップや顔のアップのショットの繰り返しなのだけれど、派手さはないものの表情の芝居で緊迫感をうまく出していて、いいなぁと思う。
悪い父親ではないのだろうけれど、過保護なあまり羽花を閉じ込めようとするかのような父。この家は羽花にとって、鳥かごのようであるように思える。
そんな羽花の部屋の窓から界が登場するのもドラマチックだ。「俺、空飛べるから!」っていう、界のあっけらかんとしたセリフもいい。界は発するセリフがいちいちインパクトがあって、いいキャラクターだなとしみじみ思う。
翌日、決心した羽花が父を追いかけ、ついにはっきりと向き合うシーンは間違えなく今回のハイライトのシーンだろう。「お父さん、わたしね、中学の時、いじめられてたんだ」羽花の告白に呆然とし、そして涙を流す父。羽花のクラスメイトに向かって父は「娘を頼みます」と頭を下げる。あゆみは泣きながら自己紹介をする。不器用な娘が、不器用な父が、不器用な友達が、みんな必死にぶつかりながら言葉を紡いでいくのが本当にいい。
「三浦界。みずがめ座O型。石森さんの世話係の、クソガキです」「……君のことはまだ認めていない」このやりとりもめちゃくちゃいいんだよな。とにかくこの対話のシーンが良くて、見る度に目頭が熱くなる。2025年の名シーンの一つをもつ、このエピソードを選出。


空色ユーティリティ 第9話 「スペシャルなバズ」
脚本:水月秋 絵コンテ:中島政興 演出:伊藤 然一郎、かとうしゅうさく 作画監督:st.シルバー、佐々木 政勝
いつものゴルフ練習場でアルバイトに勤しむ美波と遥だが、遥はどこか上の空。美波はふと、ここしばらく彩花の姿を見ていないことに気付く。SNSの更新もストップしており、大学や撮影で忙しいのではと思いながらもメッセージを送ってみると、返ってきたのは「タスケテ」の一言!大慌てで彩花のマンションへ向かった二人が玄関の扉を開けると、そこにはやつれた彩花が……!
ゴルフをテーマに、初心者の美波、実力者の遥、配信者の彩花……と三者三様のゴルフへの向き合い方を描いてきたアニメ。このエピソードはその中で一番の年上である、彩花にスポットライトが当たる回だ。
ゴルフファッションを楽しみ、配信活動なんかもしている大学生。とにかくゴルフがうまい遥とはまた違った形で、主人公の美波が憧れるようなお姉さんという印象の存在が、彩花だった。だからこそ、このエピソードのアバンでぐいぐい進んでいく遥に取り残されて、いつしかプロゴルファーとしての道を諦めていた彩花の挫折が静かに描かれたことは、自分としてはちょっとばかり衝撃だった。
自分はゴルフとかスポーツはやらないけれど、対戦ゲームなんかをやってて「頑張っても勝てないし、やってて意味あるのかなぁ?」って感じてしまうことがないわけではない。だからいつしかゴルフを上達することを諦めて、ゴルフウェアとかばかりを気にするようになった彩花の過去の描写は、結構グサリと来た。「遊びでやってるだけだから」ってポーズを取ってしまうことの気持ちも、その裏に潜む後ろ暗い痛さもわかる。ひとつの競技に携わる人の中で、ほとんどの人はトッププレイヤーにはなれないから、何かしらで多くの人がそんな経験があるんじゃないだろうか。
でも、このエピソードはそうしたゴルフの楽しみ方を「逃避」と指摘するのではなく、ファッションを楽しむようなゴルフもまたありでしょうと、そう描いているのだ。「Keep A Green」グリーンを大切に、のメッセージを込めたポロシャツが、多くの人の手に渡って反響をもたらす。ゲームやってるだけの、おそらくゴルフプレイヤーではないんじゃないかって人まで着ているのがいい! このポロシャツはグッズとして販売されていたので、私もゴルフをやらないが買った。それもまたアリってことだ。
「誰かにゴルフのことを伝えるきっかけになれたことがこんなに嬉しいなんて」と彩花は涙を流す。少しずつ底に溜まっていく紅茶の茶葉は、彼女がゴルフと共に過ごした時間の積み重ねを表現しているようで、じんわりと心に沁みる演出である。
「私の人生にゴルフがなくても、困ることはきっとなかった。だけどね、ゴルフに出会ってからの方が、私自分をもっと好きになれたの」趣味モノとして抜群のセリフだ。幸福なゴルフとの付き合い方がそこにある。
「何かを楽しむ」アニメでこういう話があると本当に嬉しいなという、会心のエピソードだと思った。


妃教育から逃げたい私 Episode 11
脚本:金巻ともこ 絵コンテ:松園 公 演出:高山秀樹 作画監督:Seung Myeonggye、Son Seonah、Kim Ikyeon、Cho Hyeonji、Ahn Yeong-yu、Lee Jaeho、Park Eunyeong、Kim Ki Yeop、Kim Seong-il、閔賢叔、安孝貞
結婚式の準備に追われ、逃げ出したい気持ちでいっぱいのレティシアとクラーク。
そんな中、クラークは父であるモーリス王に、
レティシアの笑顔を守るために王位継承権を放棄すると告げる。
それをライルが偶然聞いてしまい、噂はルイからマリアへ、
マリアからリリーへと伝わり、果ては王城を巻き込んだ
大騒動へと発展していき……!?
2025年、一番笑ったアニメはやっぱりこれかもしれない。今回は最終回手前のこの11話を選んだ。
このアニメ、本当に他にあまり類を見ない作りをしていて、なんというかアニメの作りそのものが面白おかしすぎるのだ。主人公のレティシアがバラエティでよくある「デェン!」のSEと共にこちら側を向いて「やれやれ」みたいなコメントを度々するのが天丼ネタになっているのだが、なかなかこんなアニメは見かけないわけで。そういう作りの面白さがまずある。
このエピソードも当然可笑しい。まずアバンで、レティシアとクラークがただ笑顔で佇むカットに周囲の人があれやこれややかましいことを言い続ける……という長回しのシーンで「あっ、今回もただ者じゃない回だな」と思わせる風格を出してくる。
その後も、クラークの「王位継承権を放棄する」という発言をたまたま居合わせたライルが聞いてしまい、そのままあれよあれよと伝言ゲームのように次々と尾ひれがついて、一大事に発展していくのなんて、まるでコントのようだ。噂を広げた人々があれやこれやと話しながらお屋敷の広間に集まってくるのもそういう劇を見ているようで、アニメじゃなかなか見ないようなコメディなんじゃなかろうか。
ところで、今回は最初に書いた本作のお約束のSE天丼が炸裂しないのだが、最後の最後、いよいよレティシアとクラークの結婚式が開かれらロマンチックなキスをして……と、ここで初めてその伝家の宝刀を抜く!「デェン!」「も〜う逃げられない!」
タイトルも絡めたこの一世一代の大ネタには、流石にうますぎて完敗です。……それでは皆様参りましょう~!(アリバイなカーテシーが流れ出す)


LAZARUS ラザロ 第1話 「Goodbye Cruel World」
脚本・絵コンテ:渡辺信一郎 アクションコンテ:小田剛生、関 弘光 演出:三宅和男、圡屋陽平 総作画監督:林 明美 作画監督:林 明美、近藤圭一、桑原 剛
天才科学者スキナーの開発した奇跡の鎮痛剤「ハプナ」は、実は人類を滅ぼす薬だった。
そして刑務所にいたアクセルのもとにハーシュと名乗る女性が現れ、自由と引き換えにスキナーを見つけて欲しいと告げる。
だがアクセルは隙をついて脱獄、彼を捕まえるために派遣されたダグ、クリス、リーランド、エレイナの4人は、
街中をパルクールで軽々と駆け抜けるアクセルを追い詰めていく…。
人類滅亡までの30日間で、消えたスキナー博士を探す――そんなクールでスリリングで……そして案外牧歌的でチャーミングなところもある、この作品からは第1話を選出。
渡辺監督は自身のアニメに音楽趣味を反映させていることが多い。この「Goodbye Cruel Worl」というのはElvis Costelloの同名アルバムからだろう。エンディングテーマもUKバンドThe Boo Radleysの「LAZARUS」と、UKロック好きの自分としちゃ大変クールなチョイスだ。
そして監督のこうした部分はフィルムにも表れているようで、このアニメとにかくBGMの運用が良い描かれているのだけれど、それがまだめちゃくちゃかっこよく仕上がっているのだ(残念なことに詳しく掘るには様々な知識が足りていない……)刑務所では泥臭さの感じられるジャズっぽい劇伴だったのが、ビル街のシーンではより硬質なエレクトロサウンドの曲がバックで流れていて、ロケーションの違いを感じさせる演出になっていたりする。そうしてアニメーションが静止すれば静かになり、動き出せば情熱的に盛り上がる、楽曲の構成がアニメのシーンと完璧にマッチしているのだ。楽曲主体のMVチックというわけではけしてなく、そこはやはりアニメが主体なのだけれど、そこに寄り添うBGMの働きとして理想的に思える。
話としちゃちょっと謎を散りばめつつご機嫌な会話を挟むだけで、アクセルの人となりだってよくわからないのだけれど、でも街を自在に駆け回り、「(人間は普通飛べないというダグの言葉を受け)普通じゃつまんないぜ」とビルから軽やかに飛び降りるアクセルを見ていたら、確かに「こいつは何かやってくれそうな主人公なんじゃないか?」と、とてつもなくワクワクさせられた。
今年もいろんな1話を見てきたけど、ここまで一撃で掴まれた1話は、なかなかなかったんじゃないかな。


鬼人幻燈抄 第19話 「流転」
脚本:小森さじ 絵コンテ・演出:江崎慎平 作画監督:酒井秀基、桂憲一郎、小野あゆ美、関口雅浩、亀田朋幸、和田伸一、しまだひであき、藤川太
ある秋の日、三浦邸の庭では、甚夜と直次が実戦さながらの気迫で木刀を交わしていた。直次から頼まれ、甚夜が稽古をつけていたのだ。甚夜は三浦邸で、娘の野茉莉、直次、彼の妻子たちと過ごす穏やかな時間を噛み締める。しかし、平穏は続かない。あらゆるものは流転する。人の命は儚くうつろい、世の情勢も大きな変化の時を迎えていた。
江戸から平成へと至る時代劇ファンタジーからは、この19話を選出。
『鬼人幻燈抄』というアニメは本当に面白くて、久々にアニメのブルーレイを購入したのだけれど、その中でどの話を選ぶか、ということには頭を悩ませた。正直、この19話よりも単発のお話としてまとまりのよいエピソードもあって、そういうものこそ単話10選にはもしかするとふさわしいのかもしれない。でも、一番印象に残ったのは、この19話なのだ。
サブタイトルの通り、全てが流転する。直次はいつしか妻や子息を持つ。そば屋の親父・定長は老いてあまり店に立たなくなる。時代もまた移り変わり、武士の世は終わりへと向かう。
では、甚夜はどうなのか? 確かに甚夜も変わった部分はあるだろう。野茉莉という養女を迎えることになり、父の顔をするようになった。しかしそれでも鬼である甚夜の時はどこか止まったようでもあり、その姿は変わらない。
ラストで鬼の刺客である土浦を退けるため、鬼の姿となった甚夜だが、娘の野茉莉や直次に見られてしまう。人と鬼の住む世界はやはり異なるのだろうか? その答えは次回の20話で語られるのだが……今回はここでヒキとなる。
物語のキリとしても正直次回の方がよいのでスッキリと見られるのだが、それでも単話でこのエピソードを選んだのは、この19話がキレのあるコンテや演出によって生み出された素晴らしい回だからだ。
今回多用される、キャラクターの目元にグッとカメラが寄るカットが印象的だ。家族を持った直次の目元には、既にシワが浮かんでいる。老いた定長の顔面には、更に深いしわがいくつも刻まれている。そして、甚夜にはそれがないのである。この残酷な対比は鬼である甚夜と、人である人々の時間のズレを否応なしに感じさせる。
定長は飄々としながらもそっと息を引き取り、友人で溢れていたそば屋も、今やがらんとしているのが寂しい。父・定長を亡くし、おふうは悲しみに暮れている。おふうにそっと手を寄せる甚夜。「少しだけ、こうさせてください」と、甚夜の胸に顔を寄せるおふう。そっと手を回す甚夜。極めて静かながらも情緒にあふれる芝居であり、これが豊かなアニメーションでなくてなんなのか! と思わせる、素晴らしいシーンだと思う。
アクションシーンも非常によい。直次に恐ろしい勢いで突進する土浦、怯えて動けない直次、あわや命の危機というところで甚夜が刀を一閃し、甚夜と土浦の2人が交差する。鬼の恐ろしさ、そしてそんな鬼と人との差……そうしたものが無駄なく、余すところなく表現されている。鬼人幻燈抄は全体で見れば22話の戦闘シーンなどはかなり苦しそうな印象が残ってしまって残念だったが、このように最高にカッコいいアクションもあって惚れ惚れする。全くもってアクションが不得手な作品いうわけではないのだ! と主張しておきたい。
最後に、このエピソードで死の直前に定長が甚夜に説いたことは、鬼人幻燈抄という作品を象徴するメッセージではないかと思う。削りようが無く、またこの言葉を受けてさらに自分で話せるような言葉も持ち合わせず、申し訳ないがこれを丸々引用することで、この感想の締めとさせて欲しい。
おふう、それに旦那も。2人は、俺よりも遥かに長い歳月を生きて、多くのものを失っていく。当たり前だが、なくしたもんは帰ってこない。そしてなんでかな、得てしてそういうもんの方が、綺麗に見えるんだ。でもな、それは決して悪いことじゃない。ふと過去を振り返って泣きたくなったら、それを誇れ。その悲しみは、お前達が悲しむに足るだけのものを築き上げてきた証だ。ただ頼む、どうか別れに怯えて、今をないがしろにしないで欲しい。昔を思い出して何もかもが嫌になることだってあるさ。だけどお前達には、それを乗り越えた先で、誰かと笑って。長く生きるからこそ、誰よりも今を大切に生きてほしい。俺は、そうあって欲しいと思う。
(鬼人幻燈抄 第19話より)


瑠璃の宝石 第11話 「サファイアのゆりかご」
脚本:平見瞠 絵コンテ・演出:つしまゆりか 総作画監督:藤井茉由 作画監督:紅谷 希、壽 恵理子、大橋 知華、上海樊特姆動画(狄 艮、严 苑菁、驚 樓) 作画監督補佐:髙田 愛華、柳本 鈴菜、和久田 晃弘
瀬戸や笠丸が進路を決めていることにショックを受けたルリは、「……みんなはどうやって、先のこと考えてるんだろ……」と悩む。別日、伊万里から「自然の声を聴く」ことの大切さを教えられたルリは、サファイアの生まれた場所が気になり、再度サファイア採集に向かう。
鉱物というテーマを軸に、スケールの大きい自然やそれと関わっていく私たち人間の営みを描いてきた本作。このアニメも珠玉のエピソード群で逆に1話を選ぼうとするとなかなか迷ったが、今回は師匠ポジの凪さん不在で瑠璃が奮闘するこのエピソードを選出。
先程も書いたように素晴らしい作品なのだけれど、正直言ってこの『瑠璃の宝石』という作品、あんまりにも眩しすぎて遠い世界のように感じてしまうところも、自分としてはあるというか。夢だとか、やりたいことだとか、研究だとか、そういうことから縁遠く、今の今までぼんやりと生きてきたのが、わたくしなワケで。
ただこのエピソードは学校の選択科目に悩む瑠璃の話が軸になっていて「ああ、瑠璃ってこんなにもまっすぐに自分の興味のあることにつき進んでいるようだけど、こういう悩みもあるんだ」と、少し驚いた。調査のため、発見した宝物のサファイアの鉱石をガリガリガリと音を立てて削って、その断面を瑠璃は顕微鏡で覗く。両手の中に収まってしまうような大きくもない石でも、その中身はミクロの世界では遥かに広大で。そこから瑠璃が何かを見つけようとするのは、さながら自分探しをしているようでもある。
石を調べ、山へと足を運び、様々なアプローチによってサファイアのありかを探す。始めはただキレイで価値があるからと始めた鉱石探しだったが、いつしか瑠璃はその鉱石の成り立ちによる様々な石の”言葉”や、その石がかつての人々の営みの中でどう関わってきたのか、ということまで興味が広がっている。瑠璃はここまでの道のりを「わたしのは研究じゃないよ」「宝探しみたいなもんだよ」なんて軽く言うが、それは瀬戸さんが見れば驚くような「研究」なのだ。そうして瑠璃は「もっと石のキレイさを感じるために」自分の道を少しずつ見出してゆくのだった。
ダイナミックな自然の美しさと、1人の少女の心模様を同じフィールドで描いていく、この作品のそういうところが好きだ。
自分自身にはこうした世界は縁遠いような気がしていたけど、何かを知りたいっていうのはこんなにシンプルでいいんだと、アニメに少し教えられた気もした。


うたごえはミルフィーユ 第10話 「手と手」
脚本:山中拓也 絵コンテ:藤原良二 演出:陳蜂喩、中嶋清人 作画監督:上野沙弥佳、宮野健、菅原美智代、乘富梓、堤絵梨果、金璐浩、山﨑輝彦、菊池政芳、藤田真弓 総作画監督:菊永千里、海保仁美、畠山元
レイレイのParabola加入に戸惑うアカペラ部。掛け持ちを許さないミズキによって、レイレイの部活動はいずれ終わりを迎えることに。そんな中、6人の最後のステージであるクリスマスライブが決まる。しかしアイリは未だ迷いの中にいて――
アカペラをテーマにした『うたミル』は少々短めの全10話で、今回はこの最終回を選出。
アカペラというものが声だけでやるものだからだろうか? この『うたミル』というアニメは言葉を大切にしているアニメだなと思う。それは「セリフ回しを大切にしている」という意味でもそうだし、言葉通り物語としても「言葉にすることを大切にしている」と思う。
アイリとレイレイ、2人の先輩のすれ違いを受けて、ここでは1年生たちがなんとかしようと奔走している。中でもアイリとウタが屋上で言葉を交わすシーンは、このエピソードのハイライトのひとつだと思う。変化を恐れるアイリと、変わった自分が好きというウタ。かつてはあんなにネガティブだったウタが紡ぐ言葉が、本当にじいんと来る。「一緒に変わりたいです、部長と」「おばあちゃんになっても会いたいです」「会うたび部活の思い出とか言い合ったりして」「何かで優勝したとか、そういうのじゃなかったけど。大切だったね、青春だったね、って。そういうのも素敵だと思うんです」
また、アイリとすれ違うレイレイはついその幼馴染の関係に甘えようとするが、部員のクマちゃんから「伝わらないです、言葉にしないと!」と叱咤激励され、屋上へと駆ける。ただ子どもでいられる時間はもう短いけれど、でもまだ子どもで、そして大人になっていく少女たちの今を繊細に切り取ったこのシーンは、何度見ても胸が締め付けられる。
手と手を繋ぐ、歌声のハーモニーを響かせる、そんな非言語コミュニケーションを描いてきた本作だが、しかし今回のように言葉もまた大切で、そうでないと伝わらないこともある。メロディと言葉、これらは不可分なものであって、歌というものの両輪なのだと思う。
別のシーン、作詞に悩むアイリに対して、結は「音楽の中なら(伝えたいことを)言っていいんですよ」と言う。確かに、これもまた歌の持つ力かもしれない。「アイラブユーを恥ずかしげなく言えるのは、ミュージシャンの特権ですから」これも好きなセリフだな。
アイリの言葉が紡がれた歌であるという物語によって、オープニングテーマであり劇中歌の「思い出話」のひとつひとつの言葉が、意味を持って立ち上がってくる。「夢がついに覚めてしまう / その記憶まだ忘れないで / 青く描いたこの日々を」今この時を抱きしめたこの言葉には、思わず涙が出てきてしまった。
楽しくやる部活動とは違い、トップアーティストとしての成功を貪欲に狙うPalabolaリーダーのミズキも、思わず涙を流す。「アカペラ流行らせてさ、日本中に増やしたいのって、こういうのでしょ?」の言葉を聞いて、わたしも「ああ、確かにその通りだ」とびっくりした。ここって重なるんだ。
価値観の違うふたつも、この瞬間「重なる」部分があったのである。けして混ざらない歌声も、想いも、重なればハーモニーを生む。それってまさにミルフィーユだなぁ。
この一つの歌を巡る素敵なエピソードだった。この物語は、きっと今後もわたしの記憶に残っていくと思う。


Turkey! 12投目 「さよならのTurkey!」
脚本:蛭田直美 絵コンテ:工藤進、加藤亨祐、川上達朗 演出:工藤進、川上達朗 作画監督:武川愛里、重松晋一、杜山涼香、坂上怜司、菅原正視、龍光、明光、廖家楽人、葛歓 総作画監督:武川愛里
あなたは信じてくれるかな?不思議で、愛しくて、切なくて、大切な大切な…… 楽しいだけじゃ語れない、あの夏の終わりに起きた、私達の物語。
(公式あらすじ)
2025年アニメに暴れたアニメは? と問われたならば、わたしは多分このアニメを挙げるだろう。ボウリングアニメの顔をしながら、1話で戦国時代にスリップする変なアニメ。
でも名作だと思うんだよなぁ。"迷"作、じゃなくてね。多分このアニメ、迷ってないし。
クライマックスの12話、他国の領主・景時と命をかけたボウリング対決をすることになった麻衣たちだったが、残り2人となったところで景時側は人間をボーリングのピンに見立てて「倒れなかった人を殺す」と演出し、麻衣たちを追い詰める。振り返りで年末に再視聴した時この下りを見たときは、内容を知ってても「いやぁ、変なアニメ始まっちゃったな……」なんて唖然とした気持ちになったものだが……。いやいや、でもネタだけで語れないのがこの回なんだ。
ピンを倒せなかった利奈をかばって麻衣は景時に「投げさせて。二投目」と言い放つ。「ボウリングには二投目がある」は何度も作中で繰り返されたワードだが、この理屈をここで押し通そうとすることは、命をかけた一投勝負の戦国の理論と、二投目まであるスポーツのボウリングの理論が、熾烈な綱引きをしているシーンなのである。いつしかアニメの緊迫した空気に、私も飲まれてしまう。
そしてここから、麻衣がずっと抱えていた苦悩に焦点を当てたドラマが展開されるのが素晴らしい。父母を失った麻衣が恐れていたのは、ピンをすべて倒した時に一番喜んでくれる両親がもういないことを思い知ることなのだ、と、戦国の姫・寿桃は麻衣に語る。しかしここで寿桃は、戦国と現代の遠さと、死別の距離を重ね「いなくなんかならない、麻衣の両親も、ずっと手を繋いでいる」と説くのだ。そうして麻衣は、"手を繋ぎつづける"ように、迷いなく、ボウリングを投げる。離れたピン、離れた命のどちらかを選択するんじゃない。もっと近くにある両方を取って「みんなで一緒に帰る」ために。
この一連のシーンはこのアニメの提示してきた「ボウリング」「スネークアイ」「現代と戦国」などの様々な要素が結びついた最高のドラマがあり、胸が熱くなる。そこを劇的に演出する緊迫のボウリングのアニメーションも素晴らしい。これを見たら、このアニメがどれだけトンチキなことをやっていても、確かにボウリングのアニメだと認めざるを得なくなってしまう!
こうして生死をかけたボウリング勝負を生き延び、無事に現代に戻った麻衣たち。麻衣が愛用のボウリングボールを落とした時「いいの! それ、もう本当はわたしには軽すぎたから!」と別れを告げるのも抜群のセリフだ。ひと夏の思い出を胸に、少し広がった視野で「二者択一」が実はそうでもなかったことにも気がついて――少女たちは未来へと進む。
この後、実は寿桃が麻衣の育ての親であるハルちゃんだったという衝撃の事実も判明して「えーっ! こんなところまでビックリさせてこなくていいよ!」と思っちゃうのはご愛嬌。
一見ヘンテコな要素がシナリオを構成するパズルのピースとしてハマっていき、物語が結実するこの最終回がたまらない。毎週見るテレビアニメの面白さってこういうことかもなぁと思わせてくれた、アニメの最終エピソードだ。


太陽よりも眩しい星 第12話「太陽よりも眩しい星」
脚本:中西やすひろ 絵コンテ:いまむら 演出:小林彩 作画監督:山下芳紀理、瀬譲二長、春知行合一動漫有限公司、モードリーム、光の園・アニメーション 総作画監督:村長由紀、張篠北
受付係中、神城が後夜祭で好きな人に告白をすると聞き、朔英は思わず「神城が好き」と告白をしてしまう。その場から逃げ出した朔英を神城は戸惑いながらも追う。フラれたと思いこんだ朔英は涙を流しながら、体育館倉庫に隠れていた。すると扉が開き、そこにいたのは神城で......。
少女漫画原作の本作からは、タイトル回収の最終回を選出する。
時々少女漫画アニメは演出に尋常じゃないキレのアニメが出て来て面白いのだが、『たまほし』はまさにそんな感じのアニメで、見応えがあった。
タイトルでありサブタイトルでもある『太陽よりも眩しい星』だが、これは主人公の岩ちゃんサイドから見たら、神城のことのようにずっと語られている。このアニメは基本的にここまで岩ちゃん目線だけで来ているから、岩ちゃんの心境みたいなものは掘り下げ続けられていたわけだ。
一方、そんな岩ちゃんの好きな人である神城にも、どうも好きな人がいるらしいのだけれど、あまりはっきり語られない。普通に見ていたら「まぁ両思いなのかな」なんて思うわけだけど、あまりに明言されないし、恋する乙女の岩ちゃんは不安で仕方がないので「ああ、私以外の好きな人がいるんだ……」とかそんなことを思っちゃってる。そうなるとわたしたち視聴者もだんだん不安になってきて「神城が好きなのが岩ちゃんじゃなかったら……どうする?」みたいな気持ちになっていた。
で、ついに神城サイドから本心が語られるのが最終回。実際神城は岩ちゃんのことが好きで好きでたまらなくて、ずーっと岩ちゃんを目で追っていて……ということが次々に判明する。たまらずわたくしも「神城〜〜〜〜!」ってなってしまった。普通に考えたらそりゃ岩ちゃんが好きだろって感じなんだけどね。ここまでずっと、翠さんと香川さんとわたくしで、岩ちゃんの恋路を見守っていたワケだから。
この12話溜めて溜めてここで一気にダムが決壊するように神城の掘り下げがされたら、たまらないよ。ニクい構成だった。『太陽よりも眩しい星』神城から見た岩ちゃんも、そうだったんだな。綺麗なタイトルだ。
ドリーミーに彩られた少女漫画ロマンスをガツンとぶつけられて、あんまりうまく言葉がでてこなくて歯がゆいのだけど……あまりにも強すぎたので、たまらず選出。文句なし。


おわりに
ということで2025年の10選だった。
正直今年はアニメに対しての集中力がところどころやや欠けていた感覚もあり……そんな中でもこうしてばっと挙げられるぐらいに本当に面白かったアニメにいくつも出会えているのは幸福なことだ。
10選も結構勢いで書いてるところがあるんだけれども、まぁ長くなりすぎてもダルいので、よいでしょう。勢いで生まれるものもあると信じて。
個人サイトの更新が軸足になっているのだけれど、今年は何本かアニメについての話を書いたりした。
あとウチの地元のめちゃくちゃ近所に来たざつ旅ね。ある意味では最大級に思い出深いので、単話で選ぼうかちょっと迷った(流石に盤外すぎるので今回は選ばなかった……! でもいい話だよ)
惜しくも選外となったアニメ11選
20本選んで半分ぐらい見たタイミングで「そういえば『カラオケ行こ!』めちゃくちゃ良かったけど入れ忘れてたな……」と思ったので、今回は11選。
誰ソ彼ホテル 第9話「少女の素顔」
何かが割れるような「パッ」と鳴る謎の音。割れかけていたのは偶像としての顔で、その下から本当の泣き顔が現れる――。客が素顔を隠すという前提から、周囲に応え続けようとしたアイドルの、少し悲しく、そして美しい姿を描いた良エピソード。
アポカリプスホテル 第2話 「伝統に革新と遊び心を」
異星人との交流。一番SFチックな回という気もするが、これを見た時に「あ! すごい面白いアニメ来たかも……」と思ったのを覚えている。最後はヤチヨさんが異星人流のOKサインをやるのが「通じた」感がありとても好き。
日々は過ぎれど飯うまし 第7話「ずっと忘れないと思う」
「みんなとの昔の思い出がなくてちょっと寂しい」こ気持ちに丁寧に寄り添うようなアニメが好きだ。まこっちはすでに一度別れを経験しているのでどこか達観しているのかもしれないな。
Summer Pockets 第10話「一生分の夏休み」
「紬の夏休み」は号泣ソングなので、笑っているオタクは全員わたくしが倒す。
前橋ウィッチーズ 第11話「……どちら様ですか?」
なんだかんだでこのあたりが一番このアニメらしい回だった気がする。1人だけ写る集合写真と、ドーナツの穴。ペラペラで一瞬の写真には連続した思い出が眠っている。欠落によってそこにある何かに気づく物語。
阿波連さんははかれない season2 第12話「やっぱり近すぎじゃね?」
阿波連さんいよいよ大団円。最後の最後で最初の阿波連さん視点での出会いが描かれるのがズルい。
気絶勇者と暗殺姫 第12話 「気絶勇者と暗殺姫」
暗殺前提の関係のはずが、いつしか当たり前の日常になっているのが嬉しい。いいパーティだよな……。
クレバテス-魔獣の王と赤子と屍の勇者- 第12幕「王の凱旋」
なんだかんだ言いながら絆されてるクレバテスが微笑ましい。赤子の王子が初めて歩くエピソードが「王の凱旋」なのは良すぎる。人間讃歌だ。
ふたりソロキャンプ 第15話「すれちがいキャンプ」
ゲンと滝川による、今回は男の不器用な友情のエピソード。ゲンを見つけるも声をかけずない滝川が良い。これもまた「ふたりソロキャンプ」だ。
渡くんの☓☓が崩壊寸前 第24話「新しい生活」
アナザー渡くんとしての「引いてしまった」徳井のかつての失恋と今。これもまたひとつの人生だ……と思わせる、重みのある良エピソード。
カラオケ行こ! 第4話 「紅」
今年最も印象に残ったカバー挿入歌。「フツーの道」がヤクザとの出会いによってちょっと狂っていくのがドキドキする。今年一番色っぽいアニメだったかも……。
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