日陰の小道

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アンビエント・名盤ディスクレビュー 『【ブルーアーカイブ】カヨコASMR~穏やかで温かい距離感~』

はじめに

アンビエント・ミュージック(環境音楽というものが生み出されたのは、イングランドの音楽家ブライアン・イーノの手によってだと言う。彼の生み出した『Ambient 1: Music for Airports』は今なおジャンルの一つの決定盤であり、これのみならずイーノのアンビエントシリーズは、その名の通り今でもなおアンビエント・ミュージックを最も体現しているアルバムたちとして知られている。アンビエント・ミュージックを知る上では、最も最適な教科書と言えるだろう。

さて、そのように発展してきたアンビエント・ミュージックであるが、近年産まれている、ある種アンビエント的な作品として個人的に注目しているのが、俗に言う「ASMR」と呼ばれるボイスドラマ音声作品である。音声とリスナーとの「距離」を感じさせ、周囲の音の中での位置関係を楽しませるこのジャンルは、まさに現代の「環境音楽と言って差し支えないだろう。故に私がこのジャンルに重視しているのは、サウンドメイクの統一感であり、中でも重要なのは耳へのアタックが弱めのヴォーカルである。個人的に、これを達成している作品というのは案外少ないように感じてしまう。特に、ノウハウの蓄積がある同人サークルに比べ、アニメ等で活躍する声優を起用し、そのネームバリューで売らんとする商業作品群においては、その意識が希薄で単なるボイスドラマのようになってしまっていることも珍しくなく、残念な想いをすることがたびたびある。
本記事は、そのような玉石混交のASMRアンビエントというジャンルにおいて、リスナーに有用な情報を提供せんとするためのレビューである。

ディスクレビュー

今回紹介するアルバムは『【ブルーアーカイブ】カヨコASMR~穏やかで温かい距離感~』である。柔らかなウィスパー気味のカヨコのボイスは終始しっとりとした雨のムードにマッチしており素晴らしく、それでいて音を聞かせる部分についても工夫が見られる。
ブルーアーカイブのリリースした作品については恥ずかしながら全てを細かくチェックしているわけではなく、そして全てが音声作品リスナーの目線で手放しで絶賛できるかといえばそうでもない*1のだが、今回のカヨコのアルバムは少なくとも私がチェックした中での最高傑作と言って差し支えないのではないかと思う。
またブルーアーカイブというレーベル内のみならず、企業の作った声優音声作品としても名盤の部類に入ると思っている。

それでは、以下各トラックについての簡単な解説を記す。

トラック解説

『タイトルコール』

お約束のタイトルコール。ウィスパーボイスが嬉しい。

『雨の約束』

雨のトラック。雨音の変化のみで傘に入ることを感じさせるのがいい。ジャケット帯の解説にもある通り、今回は距離感を意識させる作品なのかもしれない。ブルーアーカイブの音声シリーズは個人的に没入感を著しく損ねるため禁忌と思っている「台詞のオウム返し」については極力避けようとしている印象があり、ここについて好印象を持っている。今回もここについては徹底されており、前述の傘など、極力無駄な台詞を省いて自然な会話にしようという志を感じさせる。

ところで、特定ジャンルで頻出のギターサウンドやドラムパターンがあるように、音声作品にも頻出の路線やシチュエーションがあるのだが、ブルーアーカイブのASMRシリーズはなかなかバリエーションが豊富(耳かき、睡眠、作業音声、左右交互など)で、次第にジャンルの「あるある」を網羅しつつある。今回ひとつそれを見いだせるのが「雨」のチョイスだったようだ。

少々脱線するが、雨の音声として個人的に極めて思い入れが強いのが道草屋*2の金字塔的作品『すずしろ-雨の日【耳かき&マッサージ】』である。冗談抜きでRadioheadの『OK Computer』と同じぐらい人生で聞いていると思う。名盤のため、興味がある方は是非聞かれたし。成年向け作品だが、雨音が心地よい前半部分は全年齢向け。

『綺麗さの流儀』

タオル拭き→掃除の内容。かなり近距離のタオル拭きと、部屋を動き回る掃除という距離の緩急が心地よい。カヨコの声も終始DOPEで良い。「ほーん」とか「うーん」の響きには思わずトリップしかける。私は雨音が好きなので、部屋パートでは全くなくなってしまうのは少し寂しい。シャーレの防音は優秀らしい。

掃除パートは掃除機が爆音で鳴ったりするかと少し心配になったが、杞憂であった。邪魔にならない程度に良い意味でノイズがあり、心地よさを感じる。
特別思いあたる作品があっての発言ではないのだが、本当にここで爆音の掃除機プレイを挿入するぐらいアンビエント志向がない作品も、世の中にはあるのだ。例えば、緩急をつけようとしてアタックの強いヴォーカルを採用してしまうのは、簡単にジャンルの崩壊を招くのである。このトラックもぶつかりかけるシーンは少々驚きかけるが、ヴォーカルの方向性によってギリギリ聞き疲れしない音に仕上がっている。

『音楽と耳掃除と』

耳かきトラック。音楽と聞いて、カヨコなので爆音でメタルでも流れるのかと少し心配になったが、そんなことはなくて安堵。こいつ心配ばっかりしてるな。アンビエントはある種「邪魔にならない音楽」でもあるため、どうしても減点法で評価せざるを得ない部分もある……。
「ん~」「ん…」などといったスキャットが耳かきサウンドと合わさってグルーヴを感じさせる。

ブルーアーカイブのファン目線としては便利屋の他メンバーの話が出てくるのも嬉しい。4人との暮らしをカヨコが愛していることを感じさせるのは、微笑ましい。

『怖がられない距離』

先生(聞き手)が寝落ちしてしまう。ここで便利屋メンバーとの通話パートがあり、ブルアカASMRではお約束の演出。ここでも普段の便利屋としての姿が垣間見えてファンには嬉しい。
後半5分ほどの添い寝パートは距離・アンビエントの真骨頂と言える。いつも同じようなことを言っている気がするが、5分と言わず、これだけで1時間ぐらい欲しい。
このジャンルにはよくある寝落ち推奨アルバムのようで、本編はこのままフェード・アウト。

ボーナス・トラック『二度寝用15分アラーム』『二度寝用15分アラーム(アラーム音小)』

これ会話形式じゃない真のアンビエント・トラックなんだけど、ちょっとエッチだな……って気持ちで聞き始めたらカヨコが猫と会話始めたりしてガチ萌えのヤバトラックで凄かったです。一番凄い。

おわりに

1/20,21のブルアカふぇす! に両日行ってたんですけど、土曜日のゲーム外最新情報でこれのリリースが発表されて、帰って即買って聞いて、翌日また行ったときにカヨコのパネル見たら明らかに昨日よりカヨコのこと好きになってる自分がいて怖かったです。


こわいな~……。


あとVR見たらユウカがすぐ近くにいてユウカのことも好きになってヤバかったです。


こわ~……。


これガチ恋生産ゲーム? どうかと思うよ。そういうのは(先生の、顔つき。)


音声出しまくってるからそろそろマジで"布"*3出して欲しいですね。


以降のレーベルからのリリースにも、期待してます。それでは。



ヒマリの方はまだ聞いてないけどこれもカヨコぐらい感動したらレビューするかもしれません。ヒマリもいいヴォーカルっぽいですよね。


*1:ブルーアーカイブのファンとしては不満はない

*2:筆者は道草屋の信者なのだが、一途なのですずしろの作品以外買わないことにしている。長期シリーズならではのリスナーとキャラクターの緩やかな関係の変化も魅力

*3:業界用語で「抱き枕カバー」のこと