日陰の小道

心はもう無重力状態

『トレインスポッティング(1996:英)』『T2 トレインスポッティング(2017:英)』感想 ドラッグや犯罪に溺れた退廃的青春からの逃避とそこへの回帰

僕はUnderworldとか好きなこともあり、前々から気になっていた2作だったのだがピカデリー爆音映画祭にて続けて上映されていたのを鑑賞してきた。僕みたいなダメ人間の皆様にはオススメしたい映画。


あらすじ

トレインスポッティング

スコットランドエディンバラで暮らす若者のマーク・レントンは、彼の友人であるベグビー、シック・ボーイ、スパッド、トミーらと酒にセックスに暴力、そしてドラッグに溺れる退廃的な生活を送る。日々の不安をドラッグに逃避することでやり過ごすレントンだったが、様々な問題を起こしなんとか中毒症状からの脱却を試みる。しかし周囲の人間関係は再び彼を危険な道に引きずり込むのであった。

T2 トレインスポッティング

現実同様に前作のラストから20年が経過し、エディンバラを離れたマーク・レントンは再び故郷に戻ってくる。かつての”親友”たちと再開を果たしてゆく中で、再び交差してゆく彼らの人生。仕事を失ったマーク、刑務所から脱走するベグビー、サイモンと名乗り恐喝で金を稼ぐシック・ボーイ、未だドラッグ中毒のスパッド……相変わらず悲惨な人生を送る彼らが、底辺からの這い上がりやかつての復讐を求めて彷徨い奮闘する。

感想

ダメ人間達によるダメ人間のための映画ではないだろうか。無論僕はダメ人間なのでぶっ刺さる。自分語りを軽くさせていただくと僕は現在2作品の彼らどちらとも微妙にズレるぐらいの年代なのだが、故にどちらにもある程度の共感を持って見ることができたのはある意味いい時期に見たのかなあという気もしている。今回は爆音映画祭ということらしくて、僕はここが初鑑賞だったので比較はできないのだけれど、映画をドラマチックに彩る名曲群が迫力あふれる音圧で鳴らされており、その効果で作品世界に非常に没入することができ良き体験だった。

1作目のトレインスポッティングでは20代前半の主人公たち。社会の鼻つまみ者である彼らは辛い日常からひたすらドラッグや暴力に溺れ、そして更に最悪な日々へと堕ちてゆく。
どこまでも享楽的にしか生きることができない彼らの哀愁や逃避への渇望は、現代社会でなんとか生きる僕にも大きな共感をもたらす。ドラッグから復帰しようともがくものの「最後の一回」を繰り返し、スコットランドはクソだと叫ぶ主人公のレントン。いや僕は清廉な人間なので流石にドラッグはやらないが、それにしてもこういうダメさにどこまでも共感してしまうのはなぜだろうか。コメディタッチに破天荒な日々を描きながらも、社会の中で取り残される彼らの描写はリアリティを持って僕の心に刺さってくる。いや本当に、社会というものは辛い、本当に。
レントンという人間、友人トミーをドラッグに引きずり込んだことが原因となり亡くし、堕落した生活の中で誰の子供かもわからなかった赤ん坊を死なせてしまい、そうした苦悩から逃げるためにドラッグに溺れるが病院に担ぎ込まれ、万引きや盗みを繰り返し、ヘロイン中毒による幻覚症状に苦しめられる……と堕落の極みのような日々を送るが、物語後半ではなんとかそんな生活から脱却しようと就職をしスーツを着込んで働きだしたりもする。一発奮起し順調な日々に寄ってゆく彼だったが、そんな彼のもとにベグビーやシック・ボーイが転がり込んできて生活をめちゃくちゃに乱してゆく。なんとか登っていった人生において必死に蓄えた位置エネルギーは重力の如し人間関係に引かれ、いともたやすく崩れ去る。人生のままならなさと重力の恐ろしさよ。
しかしそんな彼らにも転機が訪れる。ひょんなことから大量のヘロインを手にした彼らは、そいつをマフィアと取引し売りさばくことで1万6000ポンドという大金を手にする。仲間との目論見の成功にハイになる彼らだったが、喧嘩ジャンキーのベグビーが小さいことから騒動をまたまた引き起こし、夢から現実に引き戻されたかのようなレントンは苦々しい表情。それでもって友人たちを裏切り一人まんまと大金を手にして逃亡するレントン……というところで映画は幕を閉じる。これまでの故郷の人間関係に思い悩まされて来たレントンが、ついにそこからの脱出を遂げる感情がBorn Slippy (Nuxx)ととともに高揚してゆく映画のハイライトにしてクライマックス。結局のところ逃げることを選んだレントンなのだが、その解放感はあまりにも清々しくもあり、また映画冒頭で馬鹿にしていた「一般的人々の理想の幸福」といった事象を楽しそうに夢想するのが「模範的人間」から結局は逸脱できない哀愁もあったりして。でもそんな平凡人間の奮闘というのが心を打つのだよな。
映画としては山場らしい山場はそれほどなく、断続的かつ目まぐるしく変化してゆく状況に振り回されるが悲惨さと面白おかしさを両立する高テンポ作劇に不思議と引き込まれてしまう。後この作品を構成する要素として書かせないのが流血や汚物が満載のダーティーな部分だがココに関しては正直言ってちょっとキツかった。それでも補ってあまりある不思議な魅力のある映画。

続編『T2 トレインスポッティングでは20年の時を経てすっかりオッサンになってしまった彼ら。皆やはりというか案の定と言うか碌でもない生活を送っているわけなのだが、なんだかんだかつてに比べると社会に順応しており、喜ばしいような悲しいようなといった心持ちになる。前作では正直「主人公レントンの周囲を取り巻くクソみたいな奴ら」という印象が強かったキャラたちも、20年ぶりの続編ということで皆愛すべきキャラクターとして迎えられるであろうこともあってか、各々の心情により深く踏み込んだ作品になっているように思った。
前作においてとにかくクソみたいな青春からの脱却をしたがっていたように見えた彼らだったのだが、今作では同窓会といった感じで皆それぞれ当時のことを懐古しているのが哀愁漂う。どんなに汚れた青春だろうと改めて思い返すと輝いていたように見えるのだなあ……というのは当然当時の彼らには到底わからないことなのだが。
本作で味わい深かったのはなんといってもベグビー。警官を騙して逃げおおせ、やっと掴んだ自由(?)で彼が渇望したのはかつて自分たちを騙したレントンへの復讐。いきなり盗みで金を稼ぎ出すクズっぷりには安心感すらあったが、しかし物語後半では息子の成長を父親として認め別れを告げ抱き合ったりもする彼。「年相応な大人としての振る舞い」がけしてできないわけではなさそうなこのシーンがあってなお青春時代の幻影に囚われ当時に対する愛と憎しみを捨てきれないのが、なんとも物悲しい。
シック・ボーイ改めサイモンも良かった。4人の中では切れ者の彼だが悪巧みをするにしろベグビー同様レントンへの復讐をやるにしろどうにも煮えきらず中途半端にばかりなっている。レントン見つけたら殺すバーサーカーと化しているベグビーと比べると、恨みを語っておきながらなんだかんだレントンと協力したり友人ぽく楽しんでしまう彼のなんと微妙なことか。ただそんな複雑に入り組んだような感情を持ってしまう彼はどこまでも人間らしくて愛おしくもある。
スパッドは前作でも「憎めないやつ」というポジションだったが今作でじはより善良人間としての活躍があったように思う。彼の隠された才能である文才は驚いたが、その青春の日々を回想し綴った文は登場人物にも視聴者にも当時の輝きを感傷的に追憶させる。今回何気なく判明した人の筆跡をコピーする特技も、本作における「チャンスの後の裏切り」にて活躍するという流れが美しい。
前作の汚物の描写はかなり抑えられ、またドラッグ要素も薄まり、舞台も2018年現代に近く、登場人物も若い時に比べると流石に落ち着いて、20年前の熱気は薄れたもののこうしたいろんな要素からこちらの方が見易い映画に仕上がっているような気はする。それでいて目まぐるしく進み目が離せない作劇や、ごきげんなサウンド、内容とは裏腹にどこまでもクールで美しい映像美という良さは当然今作でも遺憾無く発揮。
二転三転した彼らの人生は、やっぱり輝かしいものではないのだけれど、ラストでそれぞれの平穏を手に入れた彼らに静かな希望も少し感じつつ、心地よい視聴感が得られる。あとやっぱりラストシーンが最高に良くて、レコードに針が落とされ流されるIggy PopのLust For Lifeの中で無限に広がり加速してゆく実家の部屋、その演出が伸びやかで本当に心地よいのだ。

両作ともクソッタレな日々の中で堕落した青春時代を軸に物語が展開してゆくのだが、そこからの逃避を描いた1作目に対してそこへの回帰を描いたのが2作目、とそのアプローチは真逆となっている。続編のスタイルも色々あるだろうが、このシリーズに関しては前作の内容を受け引き継いだ上でまったく新しいものを紡ぎ出しているのが見事。互いを比較することでより味わいが深まっていくのはよい2作品だなあと思う。
とにかく現実が嫌でしょうがない社会不適合気味の皆様には是非オススメしたい2作。歪みつつも素晴らしき友情の物語と人生の輝きが、面白おかしく我々の心に突き刺さる。


Born Slippy (Nuxx)

Born Slippy (Nuxx)

軽率に人生においてBorn Slippyっていきたい気持ちで今あふれている。Born Slippyをながせばいつでもどこでも人生のクライマックス気分なんだ。

Ost: Trainspotting

Ost: Trainspotting

Ost: Trainspotting 2

Ost: Trainspotting 2