日陰の小道

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アニメ『Lapis Re:LiGHTs』における光の表現について

『Lapis Re:LiGHTs』(以下ラピライ)は現在放送中のTVアニメ作品だが、主人公ユニット『LiGHTs』の名前が示すように、作中において「光」というモチーフが非常に重要なものとして使われている。
アニメにおいて『LiGHTs』というユニット名は、最新話の8話内で主人公であるティアラの発言をきっかけに命名された。眩い街の夜景をバックに「いつかこんな風に街を、人を照らせる光になれたらって」と語る彼女のシーンに非常に心を揺さぶられ、本作における「光」の表現を改めて再注目したいという気持ちにさせられた。本作を手掛ける畑博之監督は撮影出身ということで、映像効果に関してのこだわりを非常に感じるアニメーション作品に仕上がっている。
本記事では、1〜8話までを見返し、印象的なシーンを取り上げてゆく。実に多岐にわたるアニメ表現でわたしが拾えるのはほんの一部であろうことはご容赦いただきたい。


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1話。歌を口ずさむティアラのカット。美しいライティングで非常に印象的なシーンに仕上がっている。レンズフレアによって虹色が生まれているのも、光と色彩が重要なこの作品にふさわしいワンカット。

魔法とともに光のある世界

ラピライの世界には魔法がある。この魔法というものを神秘的に表現するにあたって、非常に多くの「光」の表現が用いられている。魔法と光というのはこの世界において切っても切れない関係のようだ。

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1話より。魔石の発光によって、ティアラの魔法使いへの適正を調べている。魔法の発動の際になにかしらの発光を伴うことも多い。


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1話より。街の明かりが灯るシーン。街灯もまた、この世界では魔法によって照らされている。この光景にティアラは感動し、後のユニット命名にもつながっている。


タイトルにも含まれる主人公ユニット『LiGHTs』以外にも光を冠するユニットが存在する。それが、作中にてかつて伝説的な活躍をした『Ray』である。主人公ティアラの姉・エリザは、このユニットにおいて極めて実力者の魔女として君臨していた。単数形の光線を意味するRayと、複数形の光を意味するLiGHTs。同じモチーフを用いつつも、Rayという名前には孤高のカリスマ性が表現されているようだ。一方のLiGHTsの持つニュアンスは、より広がりを感じる。
もう一つ、同じ世代の『Supernova』というユニットもいる。このセンターであるユエという人物もまた、エリザの影響を強く受けた一人。直接「光」を意味しないものの、星々の中でもより一瞬の強い光を放つ「超新星」の名前を持つ。中央からいくつもの光線が伸びるロゴからは、かのRayにも負けないユニットであろうとする彼女たちの自負が見えるようである。

www.lapisrelights.com


このように、本作品において「光」というモチーフは頻出で、物語にも深く関わってくる。次に、作品内での光が絡んだ演出に関して掘り下げてゆく。

光と影による明暗

モチーフとして用いられるだけではなく、演出面においても「光」によるものは本作品において広く活用されている。明暗の差によって登場人物の心情を表現する、といった手法は映像作品において珍しいものではないが、本作でも極めて効果的な使われ方をしている。
ここではアニメ内でどのような演出が存在したか、その印象的なものをピックアップしてゆく。

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1話。花壇に影が落とされており、街を初めて訪れたティアラ周辺の明るさが際立つ。この後「萎れた花を魔法で蘇らせる」というシーンになり、彼女の優しさが非常に印象的に表現されている。

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1話。窓の外のティアラと、それを見つめるクロエ理事長。理事長室は薄暗く、Rayの肖像画もはっきりとは映らない。Rayに関してこの段階では多くが明らかにされておらず、謎に包まれていた。

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2話。ごみを漁るロゼッタをショッキングな面持ちで見つめる4人。陽の当たる部分と影の部分で、両者の心理的な隔たりを表現している。この明暗による境界の演出は、ラピライにおいてたびたび登場する。

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2話、続いてのシーン。影の中にリネットとアシュレイが配置されている。この二人は特にロゼッタとの心理的な距離を思い出してしまっていることがセリフで示されるが、続くシーンでロゼッタに歩み寄る。ロゼッタもそれに答え、光の方へ踏み出してゆく。

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4話。ユエに親しげに話しかけるも、拒絶されてしまうティアラ。ここでも明暗によって境界が存在する。

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4話、続いてのシーン。光の中を進んでいるが、逆光によって暗めの画面。ユエに強く拒絶されて戸惑う二人の会話シーン。

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4話。続いて登場するカエデは友好的で、影の中から踏み出してくる。一方、続いてナデシコが登場すると、彼女とぎくしゃくしているカエデは気分を害し、再び影の中、去って行ってしまう。

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4話。個人的に非常にロケーションが巧みだなと感じるシーン。西日によって座っている時は傘の下の全員に光があたり、つかの間の和やかな雰囲気が流れる。ところが、ナデシコとカエデのすれ違いが表面化し、激昂して立ち上がるカエデの顔には影がかかる。突然のことに立ち尽くすナデシコにも影がかかり、淋しげな絵が生まれている。

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4話。朝日の中和解する、カエデ、ナデシコ、ツバキの三姉妹。逆光の暗いトーンから、朝日の方を向き、最後には三名が明るく照らされる。先程の夕暮れのシーンとは違い色も鮮やかで、人物の心境の変化を思わせる。

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5話。オルケストラに挑戦することに踏み出せず落ち込むメアリーベリーと、それを励ますラトゥーラとシャンペ。ここでは暗がりに歩みだすことで、メアリーベリーに寄り添う二人、というシーン。

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7話。ティアラとユエの会話シーンの一連のカット。最初穏やかにエリザとの思い出を回想するユエだったが、ティアラの登場で表情が陰る。ここで陽の方へ向くティアラの顔は明るく照らされ、振り返るユエの顔には影が落ち、対照的。

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7話。同シーン。位置入れ替わりの際に太陽を挟むように移動するのが良い。光を放つ太陽の存在感から、どことなく両者の話題の核であるエリザ(Ray)という強い光の存在を感じるようでもある。ユエの気持ちに寄り添おうとティアラはユエの方を向き、ここでは両者ともに逆光で顔に影が落ちている。最終的に折れて「あんたと話すと調子が狂う」とまんざらでもなく話すユエの横顔には光が差す。いよいよ二人が対話に成功した重要なシーンで、非常にドラマチックに仕上がっている。


この他にもいくつか目を引く明暗のシーンがあった。
様々なカットを見ていて思ったのが、光と影、本作で扱われるこの2つに明確な優劣はないということである。当然それによって明るいトーン/暗いトーンといった画面が生み出されてはいるが、光に歩み出すことが勇気ある前進であると同時に、暗がりに歩み出すことは誰かの心に寄り添う行為であったりする。ただそこには性質の違いがあるだけなのである。
光があれば必然的に影も生まれる。本作のLiGHTsたちを取り巻く「光と影」はどちらもどこか暖かく、世界を包み込んでくれているような心地がする。

夜を照らすオルケストラ

時に眩しいほどの太陽の光。それが作り出す明暗分かれた世界に比べると、日が落ち、どこか静謐な雰囲気のある夜は安らぎをもたらす時間でもある。
一方て、街には眩い明かりが灯り、そこに住む人々の息遣いを感じる。室内にもいくつもの灯りが設置されていて、柔らかなその光は、昼のような境界を作らない。消灯しても、窓からは優しげな月明かりが入ってくる。本来光が消えてしまう夜という時間だが、本作ではその暗さよりも、そんな夜を照らす光の暖かさが強調されているように思える。

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2話。青白い灯の光が穏やかに二人を照らす。再開したティアラとロゼッタが改めて仲を深めた一幕である。

さて、そんな穏やかな夜に一時の喧騒を生み出すもの、それがオルケストラである。人々の生活を支えることにも使われる魔力を集め、蓄積するという大切な役割がある催しだ。歌い踊り、パフォーマンスを披露する魔女たちはアイドルめいた熱狂と共に人々から迎えられる。そのステージは眩く照らされ、そこには太陽を思わせるほどの孤高の輝きがある。

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2話。Supernovaのオルケストラを観覧するティアラとロゼッタ


パフォーマンスをする魔女と、それを見上げる観客の間には、日中以上に明確な明暗の差がある。舞台の大小や豪華さに関わらず存在するそれは、常に光を浴びるステージという場所の特性に依るものだ。そしてこの明暗が示すように、事実オルケストラは実力者たちの行為。しかしティアラたち落ちこぼれチームは退学回避のために、オルケストラにて一定以上の魔力を集める、そんな無謀めいた一発逆転の賭けに出るのだった。

この世界のオルケストラは、魔法によって現実のライブのような照明効果を生み出している。2話で披露したSupernovaはレーザーをふんだんに使用し、極めてスタイリッシュなステージを作り上げていた。そして更に魔法による演出効果は通常のステージのそれを凌駕し、より自由なそれを実現している。

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7話。自らの手から光のエフェクトを出し演出するシュガーポケッツの3人。

現実のライブでも、ホログラフィックを利用することで、高度な演出を実現していたようだ。
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魔法×アイドルがテーマであるラピスリライツというコンテンツにおいては、あちらの世界のオルケストラ、そして我々の世界におけるライブは非常に重要な要素の一つである。ここでも「光」による演出は大きく関わっており、本作品が光という存在とは切っても切り離せないということがわかる。

眼球、瞳を使っての演出

少女たちの可憐さ、美しさが存分に発揮されている本作だが、アップのカットでの瞳の表現も非常に美麗である。美少女アニメとしても当然目というのは重要な要素の一つであろうが、「光」を描く本作が光を感じ取る感覚器の描写に力を入れているのには必然性もまたある。ここでは、いくつか気になったカットを挙げる。

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OP。人物が入れ替わりながらだんだんと目を開いてゆく最初のカット。
光や色を感じる器官であるところの瞳にだけ色彩があることからも、このアニメにおいて「目」というものが重要な一つであることがわかる。

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5話。大切な電子ボードを水没させて思わず目を潤ませるメアリーベリー。
瞳の輝きの変化の表現は実写ではなかなかできない、アニメならではの技法だろう。かわいそうだが、非常に愛らしい。

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6話。少々変わり種なホラーテイストのエピソード。
魔法の火の玉を明かりに古びた屋敷を探索するシャンペたちだが、ここでは薄暗く彩度の落ちた色合いの画面が印象的。暗い中で光る瞳の処理も美しく、目を引く。

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6話。雷光に照らされるティアラの顔。
ここでも宝石の様に妖しく光る瞳が、恐怖感を掻き立てる。光が当たっている科絵と当たっていないものでは画面の感じ方がかなり異なり、ライティングの力を感じるシーンの一つ。

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5話。ルキフェルから再度(過酷な)すごろく勝負を提案されたときのティアラの瞳、表情の変化。
人物の瞳のハイライトが消えることで、ショック、茫然自失といった感情を表現する、アニメや漫画でよく使われる演出。毎話のノルマかと思われるほど、本作品においては多用される。普段の瞳の美しさがあるため、余計にギャップが際立つ。

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こちらは2話から。瞳の表現の話題からは若干外れるものの、ラヴィのデフォルメされた表情もうまい。

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1話。こちらは爆発に驚いて白目をむいて気絶するティアラ。
ハイライトが消えることと白目をむくことは明確に使い分けられており、意識がなくなると白目になってしまうようだ。6話でエミリアが恐怖のあまり失神した時も、彼女は白目をむいている。

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8話。塔を見つめるティアラの瞳。瞳のアップで反射した物体を描き、その人物の視線を表現するというのも、アニメならではの技法。


この他にも、本作には非常に彩り豊かで魅力的な瞳が頻繁に登場する。こうした目を中心とした絵の美麗さにも是非注目したい。

『LiGHTs』という光

『LiGHTs』は初のオルケストラで、カラフルな光を放ち、街を飛び回り、ステージに虹をかけてみせた。それは、彼女たち自身だけで生み出した色ではなく、時に協力しあい、時に争い、そうして影響を与えあった周囲の人々がいてこそ実現したオルケストラだったからなのであろう。だからこそ彼女たちは、一見バラバラな、しかしありとあらゆる色を持つ光を放っている。一見他と比べてグループとしての強烈な個性が無い彼女たちは、しかし、それ故にすべてを内包するのだ。それはまるで、重なった光の色が真っ白になるように。
この世界のあらゆる形の光、そうしたものをそのまま指し示す『LiGHTs』というユニット名は、随分と大それた名前のようにも思える。しかし彼女たちならば本当に、無邪気に世界中の人々にとっての「光」になってしまうのではないかと、そう期待せずにはいられない。天を照らす無数の星々が輝く空の元で、彼女たちの歌が世界を包んでくれる日を待ち望んでいる。

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8話においてオルケストラを無事成功させたかのような『LiGHTs』だったが、そこには新たな壁が立ちふさがっていた。
これからのLiGHTsはどのように世界を照らし、その軌跡にどのような物語を宿していくのだろうか。
アニメ放送も折返しを過ぎたが、彼女たちの活躍からますます目が離せない。


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