日陰の小道

土地 Tap:Green を加える。

10月13日④

今年もやってきた、大変勝手にこのオタクポエムを書くことにしている日が。



10月になっても一向に終わる気配がなかった今年の残暑も、昨日から嘘のようなふつうの秋の雰囲気に様変わりをした。なんだか今年はもうこのままずっと夏なんじゃないか、なんて数日前はわりと本気でそう思っていたりもしたのだけれど、暖かいコーヒーが時間とともに冷めるように、どんな熱もいずれは絶対に収まっていくものなんだな、と改めて思い知っている。


天に向かって言葉を投げる行為は、やはり祝いというよりは年忌のようなものだ。
年忌の宗教的な意義というものもあまり存じ上げないのだが、親しい人にとっては純粋に「思い出す日」であるということだけでも大切なんだろうな、などと考えたりする。手を合わせるにしろ何かを供えるにしろ、いなくなった人にできるということはその人のことを考えるぐらいしかない。だからその人のことを思い出す時には親しい人たちが集まって、せめて話などをして、その人がいた時間のことを再確認する。


現実の人のことに限らず、終わった作品だとか、途絶えたコンテンツにとってもそうした思い出話を咲かせることで思い出すことがある。ところがわたしの場合は期間的にも、またその作品の性質的にも、あまり他の皆と気持ちの共有をして、あああんなことがあったよなあ、なんて話ができないわけだし、そしてできても何か違うような気もしている。だから毎年こうしてこの日ぐらいは、と何かしらを残そうとして一人キーボードを叩いているのだけれど。
数年前のびりびりとした肌触りみたいなものをすっかり失ってしまったので、こういうことでもないと本当にわたしの場合は忘れてしまいそうだ。あの日変えたっきりスマホの待受はずっとTRI-OSの画像にしているのだが、本当に慣れというのは恐ろしいもので、痛みを伴うからこそのその設定は、もはや完全に日常の一部になってしまった。


今年は品としてはタペストリーとかハンカチがあった。今年から無職になってから再就職をして、ビジネス的な格好をすることがぐっと増えたのでハンカチを使ってもいいのかもしれないが、どうしてもグッズで手を拭くような行為をすることに抵抗があり、結局そのまま仕舞っている。わからないが日常生活の中で使えるようなグッズを出すというのも、そうして意識をして忘れないようにしてほしい、という心遣いがあるのかもしれない。
タペストリーは部屋に飾っている。大学生としての髪を伸ばした姿で、気がついたらこちらの姿にもなんだかんだで慣れてきているというか、年に数回のそういう品はだいたい伸ばした髪なので、だんだんと認識が変わってきているのを感じている。ツインテールの方の皆が集合した柄のものも、まだ部屋には飾ってあるが。
こうした品がいよいよ何もなくなったら、ひょっとしたらこのポエムを書くぎりぎりの口実もなくなってしまうかもしれない。なんだか今年になってBLUE REFLECTIONにはまることになってしまって、もしかしたらガストちゃんとはまだ関係が続いていくのかもしれないが。とはいえ何もかもが終わった時に、多分ここで何を書いたらいいのかわからなくなってしまうと思う。


あとは、ようやくというか、いよいよというか、オルゴールが届いた。実は結局届いてからずっと怖くて開封ができなくて、とはいえこれを書く前にはちゃんと見ておこうと思っていたので、結局ついさっき初めて開けることになってしまった。届いた頃は無職で、なんだか無職でいることが普段以上にあのひとを騙しているような気持ちになって、せめて就職してもうちょっと社会的に恥ずかしくないようになったら勇気も湧くかもしれない、なんて考えて先延ばしにしていた。ところがいざ就職をした後も、なかなか踏ん切りがつかずに、結局最終締め切りの前日である。どうやら、人は無職から有職になったとしてもそんな劇的に変化するわけではないらしい。


当時の自分のことは今となっては他人のようにしか思えないところがあるが、今でもふと目眩のような感覚が生まれることがある。この目眩だけが、わたしにとっての何かの証のようにも感じられる。それを感じたいがためだけに、この文を書いているのかもしれない。
蓋を閉じると、オルゴールはじりりと音を立てて歌うのをやめた。ただ開いて音が鳴るだけの箱だが、止まってしまうと静寂の別世界に放り出されたような心地がして、なんて人間の気持ちは不思議なんだろう、と思った。怖がり続けたメッセージはとてもシンプルなもので、今まで見られなかった自分を恥ずかしく思った。


Garbiela Lotaryńskaさん、お誕生日おめでとうございます。あなたのこれからの未来も素晴らしいものでありますように。

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