『BLUE REFLECTION SUN / 燦(ブルリフS)』にて『BLUE REFLECTION RAY / 澪(ブルリフR)』の主人公、平原陽桜莉が実装されることになりました!
/#ブルリフS × #ブルリフR
— 『BLUE REFLECTION SUN/燦』公式@ブルリフS サービス開始! (@BRSUN_game) 2023年7月12日
イベント開催予告📢
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7/14(金)より
『BLUE REFLECTION RAY/澪』とのタイアップイベント
「教えて!陽桜莉先生」を開催!
"友達がそっちに行くからよろしく"
ある日、由紀子に友人の「みゃーこ」から連絡が入り――
EP/EMを集めて、ER陽桜莉【可憐な妖精さん】をゲット✨ pic.twitter.com/v9naxJ9kpU
陽桜莉の実装に伴ってイベント「教えて! 陽桜莉先生」が開催されることになりましたが、ここでのサブタイトルが皆さんご存知の通り(?)ブルリフR同様に「The Smiths / Morrissey」の楽曲タイトルをオマージュしたものだったため、再びその元ネタ楽曲を紹介する記事を書きます。
・アニメ版の話題
cemetrygates1919.hatenablog.com
- Ep.1 半人前(Half A Person)
- Ep.2 「今に」っていつ来るの?(How Soon Is Now?)
- Ep.3 どうしようもないよね(Nowere Fast)
- Ep.4 聞いて(Ask)
- Ep.5 ラスホルムのならず者(Rusholme Ruffians)
Ep.1 半人前(Half A Person)
The Smithsの『Half A Person』でしょう。コンピレーション・アルバム『The World Won't Listen』などに収録されています。モリッシー詩集のタイトルも同じく『半人前』です。スミスお得意のミディアム・バラードで人気の高い曲だと思います。
日本語で半人前というと単純にスキル的な話題で使われることが多い印象ですが、ここでの意味というのはもっと「人間として満たない」みたいなニュアンスを感じます。何と言っても「And if you have five seconds to spare / Then I'll tell you the story of my life 」と、たった5秒で自分の(16年の)人生を言い表わしてしまえるという厭世感に溢れたキラーフレーズが強烈です。「That's the story of my life(これが私の人生)」と繰り返しながら終わっていくアウトロには、この物語の主人公がいかに自らの人生を空虚なものとして感じているのか、ということがこれでもかというぐらいに表現されています。
この曲で主人公の性別ははっきりしません。主人公が若干言い淀んでいる「Y ... W.C.A. 」すなわちYoung Women’s Christian Association(キリスト教女子青年会)が登場していることをストレートに受け取れば主人公は女性ということになりますが、モリッシーのバックボーンも合わせてこの曲にモリッシーの曖昧な性自認が込められていると解釈されることもあるそうです。『Half A Person』にはそうした”性の間”という意味も見出すことができそうです。
And if you have five seconds to spare
Then I'll tell you the story of my life :
Sixteen, clumsy and shy
That's the story of my life
Sixteen, clumsy and shy
The story of my life
That's the story of my life
That's the story of my life
Half A Person / The Smiths
エピソードタイトルとしてはそのまま陽桜莉が(指導者として?)「半人前」だからと捉えて構わないでしょう。「Sixteen, clumsy and shy」というのは『Half A Person』の主人公の情報ですが、ちょうど年代としては高校一年生の陽桜莉と同年代と言えますね。天真爛漫に見える陽桜莉の繊細さ(シャイさ)と重ねられているのかもしれません。
Ep.2 「今に」っていつ来るの?(How Soon Is Now?)
The Smithsの『How Soon Is Now?』でしょう。コンピレーション・アルバム『Hatful Of Hollow』などに収録されています。モリッシー詩集のタイトルは『今っていつのこと?』です。
トレモロ・エフェクトの効いたギターのイントロが印象に残りますね。この曲はロシアの有名な女性二人組ユニットt.A.T.u.がカヴァーしたことで有名だったのですが……今t.A.T.u.って言っても逆にあんまり伝わらないかもしれないですね。
タイトルの『How Soon Is Now?』というのは、あなた(You)の薄っぺらく聞こえるような慰めに対しての反抗の言葉です。この曲の主人公は望むべき”今”、愛される時の到来を待ち望みながら……しかしそれが満たされない苛立ちや苦悩を抱えています。
When you say it's gonna happen "now"
well, when exactly do you mean?
see I've already waited too long
and all my hope is gone
How Soon Is Now? / The Smiths
シナリオでは由紀子を通して見た陽桜莉が描かれます。常に明るく振る舞う陽桜莉を遠く感じつつも、彼女が抱える繊細さにふと由紀子は気がつきます。そんな「今」こそ動くべき時かもしれない、というのはブルリフRの5話を経た由紀子の物語としては綺麗なアフターという感じがしますね。
完全に余談ですが、この『How Soon Is Now?』と『Hand In Glove』(仲良くつるんで)の2曲をブルリフが採用したことで、「『How Soon Is Now?』と『Hand In Glove』が元ネタで聖蹟桜ヶ丘が登場するアニメとゲームで展開している作品」まで書いてもBLUR REFLECTIONの話かアイドルマスターシャイニーカラーズの話か特定できなくなりました。
How Soon Is Nowってブルーリフレクションレイのブルーレイのことらしい
— 末茶藻中 (@Matcha1919) 2023年7月7日
リリース頼んます!
Ep.3 どうしようもないよね(Nowere Fast)
これが一番ちょっと悩みますが、The Smithsの『Nowhere Fast』でしょうか。2rdアルバムの『Meat Is Murder』に収録されています。モリッシー詩集では『ノーホエア・ファスト』のタイトル。このタイトルである「Nowhere Fast」というのは「停滞している」だとか「どうしようもない」ということを表す言葉だそうです。
この曲は経済格差をベースにした上で、貧困層の主人公が「自分だってまともな感性(Natural emotion)をしていたら死んじまう(jump In the ocean)」と富裕層を痛烈に非難している曲のようです。主人公を苦しめるこの嫌な世の中の状態を「Nowere Fast」(停滞している)と表現しているのですね。繰り返しの日々の中ですり減っていくことの苦しさが表現されているように感じます。
それにしても、貧しい自分のことを「僅かな資金の資産家(I am a man of means [of slender means] )」と表現しているところには、モリッシーのプライドとユーモアを感じさせて上手いなと思います。
I'd like to drop my trousers to the world
I am a man of means (of slender means)
Each household appliance
Is like a new science in my town
And if the day came when I felt a
Natural emotion
I'd get such a shock I'd probably jump
In the ocean
Nowere Fast / The Smiths
シナリオでは、説明が苦手な陽桜莉が由紀子の助けを借りることになります。陽桜莉の様子をモリッシー流に表現すると「語彙力がある(とても僅かな語彙力が)」みたいな感じになるでしょうか。ともあれ、これは一人ではできないことも二人ならできる……というちょっとしたエピソードですが、人と人との繋がりを描いてきたブルリフRを踏まえた話っぽいなと少し感じます。
Ep.4 聞いて(Ask)
The Smithsの『Ask』でしょう。コンピレーション・アルバムの『The World Won't Listen』などに収録されています。モリッシー詩集ではそのまま『アスク』です。スミスの中でも随一のポップでキャッチーな曲じゃないでしょうか。
スミスといえばほとんど何を聞いてもどんよりとしたイギリスの空を感じさせる気がしますが(イメージです)突き抜けるような爽やかなメロディからは初夏の晴れた空を感じさせるような爽快さがあります。もっとぐっとロック感が強まったライブ盤の「Rank」での迫力あるライブ演奏もオススメ。
ルクセンブルグの出っ歯の少女に向けて、能動的なんだか受動的なんだかよくわからないメッセージなのですがですが「Ask me, ask me, ask me」と語りかけている、ラブソングのようなそうでもないような、不思議な温度感の曲です。「Shyness is nice and Shyness can stop you」という捻りの効いた一節や、「Love」と「Bomb」を絡めるなど、ユーモアが全編に散りばめられていていいですね。暗さではなくこのユーモアこそがモリッシーの歌詞の真骨頂なのかもしれないな、なんて思ったりします。
Ask me, ask me, ask me
Ask me, ask me, ask me
Because if it's not Love
Then it's the bomb, the bomb, the bomb,
the bomb, the bomb, the bomb, the bomb
That will bring us together
Ask / The Smiths
曲の『Ask』は当然「尋ねる」の方での「聞いて」ですが、ここでは陽桜莉が他のメンバーに言葉を伝えるシチュエーションを反映してた「聞く(Listen)」的なネーミングな気がします。とはいえ、「頼って欲しい」的なニュアンスとしては「Ask」っぽいエピソードとも言えるかもしれませんね。
Ep.5 ラスホルムのならず者(Rusholme Ruffians)
The Smithsの『Rusholme Ruffians』ですね。2ndアルバムの『Meat Is Murder』に収録されています。モリッシー詩集ではそのまま『ラシュルム・ラフィアンズ』です。ラスホルム(Rusholme)はイギリスの地名ですが、発音的にはこのラシュルムのほうが近いようですね。
軽快なこの曲の舞台は遊園地。ですがこの内容は、「少年が刺され(A boy is stabbed )」「少女がスカートをめくり(Her skirt ascends for a watching eye )」という感じで鬱屈としており、にぎやかな喧騒の中は暴力や性で彩られています。一方で一人帰路につく主人公には寂しげな空気があり、彼の「愛への信仰が揺らぐことはない(But my faith in love is still devout)」という純粋さは先の喧騒とは対比されるものでしょう。静と動、純粋と悪徳の対比がこの曲には存在しています。曲調が一貫して明るいことにも何か恐ろしげなものを感じさせる、非常に面白い曲だなと思います。
Then someone falls in love
And someone's beaten up
Someone's beaten up
And the senses being dulled are mine
And someone falls in love
And someone's beaten up
And the senses being dulled are mine
And though I walk home alone
I might walk home alone ...
...But my faith in love is still devout
Rusholme Ruffians / The Smiths
ラスホルムのならず者(Rusholme Ruffians)とは、子どもたちの世界(遊園地)を悪意をもって乱す存在を表現しているのかなと思いますが、このシナリオでそれにあたる人がいるとすれば……、ブルリフRの由紀子のエピソード『何もみえないわたし』でも活躍した彼女のことなのでしょう。
ということでブルリフSの元ネタ紹介記事でした。またこの話題でブログを書くことになるとは思っていませんでしたが……。
ブルリフSでもこうしてブルリフRの同様のネタをこっそり仕込んでくれるというのは、嬉しいサプライズでした。今後のブルリフSと、あとブルリフRのブルーレイ発売の発表を楽しみにしています。